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サイプレス上野、ラップブームをけん引する“モンスター”が現状に危機感

 現在のラップブームの火付け役である『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)の“モンスター”として、圧倒的な存在感を放っていたサイプレス上野。そんな彼がヘッドライナーを務めるユニット・サイプレス上野とロベルト吉野が、待望のメジャー1stミニアルバム『大海賊』を発売。90年代に端を発した日本語ラップブームの渦の中で揉まれ、現在のブームをけん引する彼に、当時と今では異なる、ブームの“質の違い”について率直な想いを聞いた。

苦節17年にして遂にメジャーデビュー「何年選手だと思ってんだ!」

――満を持してのメジャーデビュー、おめでとうございます! てゆーか、今までメジャーデビューしていなかったのが意外と言いますか。
サイプレス上野周りからもよく言われますね(笑)。俺ら2000年に結成して、もう17年ですからねぇ。

――公式資料にも「何年選手だと思ってんだ、コラァ!?」という、フレーズが記されています。グレートサスケさんの“迷言”を持ってくるあたり、さすがセンス良いなって(笑)。
サイプレス上野よくぞ気づいてくれました! こんなマイナーなフレーズ使って「俺ら、どこに向けてアピールしてるんだ?」って思いますけどね(笑)。

――ダハハハハ! 確かにプロレスラーの名言・珍言のなかでも、かなりコアな部類ですからね(笑)。いや、でも“我々に”届けばいいんです! で、今回のデビューミニアルバムを聴かせて頂いて、改めてサイプレス上野とロベルト吉野の懐の広さ、引き出しの多さを感じました。男臭いんだけど爽やかな風も吹かせて、下世話な部分もあり、それでいてマッチョでもある……“お披露目”という意味でもバッチリな作品ですよね。
サイプレス上野ありがとうございます。ただ、メジャーデビューとはいっても、コンセプトとかは深く考えてはいなくて。そもそも(ロベルト)吉野と2人で何かを考えるというのは不可能なので(笑)。

――色々な意味で紙一重な吉野さんとは無理ですか(笑)。
サイプレス上野思い起こせばこの17年間、ほぼ無かったなぁ(遠い目)。

基本的に『ダンジョン』を観ている人たち向けに曲作ってない(笑)

――基本的には上野さんのコントロール下で吉野さんが動くと。さしずめ上野さんが将軍・KY・若松で、吉野さんがS・Sマシンという関係性ですね。
サイプレス上野そうです、そうです! 拡声器でがなる代わりにマイクでがなってね(笑)。とりあえず、今回に関しては、“今、作りたいモノ”を入れ込もうという感覚でしたね。「サマーエンドロール」にしても去年の段階で出来ていたし、「WALK THIS WAY」の“アセ・ツラ・キツイスメル”も俺らのライブで定番のフレーズなんですよ。よくよく考えると“アセ・ツラ・キツイスメル”ってくだらねぇな〜って思いますけど(笑)。

――でも、“アセ・ツラ・キツイスメル”というフレーズは、サイプレス上野とロベルト吉野をまさに体言してると思いますよ。
サイプレス上野そうですね。悲しいかな、見事なまでにフィットしちゃうんですよねぇ。

――それでいて「GET READY」などはマッチョでストレートなカッコよさを表現している。多様性溢れる楽曲を聴くと、上野さんが出演されていた『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)でしか知らない人にとっては非常に新鮮に写りますよね。
サイプレス上野でしょうね。そもそも『ダンジョン』観ている人たち向けに曲作ってないというか。1曲もそういうアプローチの曲が無い(笑)。

――そこが、サイプレス上野とロベルト吉野の凄さですよね。何をやってもお2人だし、そのスタンスを強引に勝ち取って“免罪符”を得たというか。
サイプレス上野「Bボーイにはこういう曲作ればウケるだろうな」っていう、正解が見えているようなのはあまり好きじゃないんですよね。かといって、サブカル的なジャンル分けされそうになると、それを拒むという(笑)。ヒネくれてるんでしょうねぇ。

お札を頭に巻いて「八つ墓村じゃ〜!!」とか叫びながらライブやって

――そこに“無意識の戦略”を凄く感じるんですよね。それはデビュー当時から変わらないイメージで。2000年にデビューしましたけど、お2人はいわゆる95年あたりから生まれた日本語ラップブームをフォロワーとしてはもちろん、プレイヤーとしても現場で体感されましたよね? 当時は、スチャダラパーさんらを筆頭とするサブカル系と、ZeebraさんやKAMINARI-KAZOKUらを筆頭としたマッチョ系に二極化していたんですけど、サ上とロ吉だけは自然な形で双方を行き来していた感覚があって。
サイプレス上野 そこは意識的なものだったかも知れないですね。何でかって言うと、俺ら両方好きだったから(笑)。確かに当時ってファンもそうだし、ステージに立つラッパーも、“どっち派なの?”って決めないといけない風潮が強かったんですよね。でも、絶対に俺らと同じように“どっちも好き派”の人も多かったんですよ。

――そうですよね。でも、当時は二者択一を迫られる風潮で(笑)。
サイプレス上野地元のツレとかは皆同じ感覚だったんですけど、ラップ始めた高校のとき位に他校の生徒と絡んだんですけど、そいつらバリバリのKAMINARIフォロワーで(笑)。「認めねぇ!」とか言ってくるんですよ。そんときに「何でコイツらこんなに堅いんだ?」って思いましたね。とはいえ、俺らも迷彩柄のジャケットは着てたんですけど(笑)。

――どっちも好きだから(笑)。
サイプレス上野でも、高校3年のときに「あぁ、もうこのスタイルはやめよう!」って。もっと自然な格好をしてえしなぁって。Bボーイではあるけども、スチャのライブとかも中学校くらいから観に行ってたし、なんで無理してティンバー(ランド)のブーツ履いてるんだ?って(笑)。

――もっと自然に帰ろうよと。
サイプレス上野そうそう。で、そこからは神社にあるようなお札を頭に巻いて「八つ墓村じゃ〜!!」とか言いながらライブやって(笑)。

――アハハハハ! 吹っ切れたかのように、自分を解き放ったと(笑)。
サイプレス上野そうしたら、何故か当時組んでいたグループがそこそこ有名になっちゃって、ジブさんがやってたコンテストでも2位になったりとか。ただ前衛的過ぎたのか、一緒にライブやってた他校のヤツらからも「どうしちゃったの?」って心配されて(笑)。

やっぱり懐に入れたナイフ(スキル)は常に研いでますからね

――周りを置き去りにしたスタンスはデビュー前からだったんですね(笑)。ただ、その“何でもアリ”なスタンスは、マッチョ系からもサブカル系からもやっかみはあったんでしょうね。
サイプレス上野ありましたね〜。よく「卑怯だよオマエ!」とか言われて(笑)。ただ、地元の横浜のシーンにだけは筋は通そうと思って、重鎮の方々に会ったとき怒られる覚悟だったんですけど、「面白いじゃんお前ら!」って言われて。

――そこで“何でもアリ”の免罪符を手に入れたと。ただ、その免罪符も実力が伴わなければ手に入れることは不可能ですよね。上野さんは数々のフリースタイルバトルで名をあげて、吉野さんもDJバトル大会で名を馳せて。
サイプレス上野ああ見えて、あの男(吉野)もなかなかやるんですよ(笑)。

――そこがやっぱり痛快ですよね。ふざけるのも大好きだけど、シリアスモードに入ったらしっかり結果を出す。だから“ゴリゴリ”な連中も文句を言えないという。
サイプレス上野『PRIDE』に出場して、なぜか勝っちゃったインディ団体のプロレスラー的な(笑)。そういう喜びはありましたね。そこはやっぱり俺も吉野も信条としてあるんでしょうね。吉野はプロレスに興味ないですけど、やっぱり懐に入れたナイフ(スキル)は常に研いでますからね。

――いざとなったら何時でも抜くよと(笑)。
サイプレス上野だから、吉野とのリハーサルは昭和の親日本プロレスの道場練習ですよ。上野毛スタイルの(笑)。

――アハハハハ! ガッチガチの極めっこだ(笑)。でも、2人の信条としては、それは露骨に人様に見せるもんじゃないと。だから、自分たちのステージに上がったら真逆の“魅せる”スタイルで。
サイプレス上野そうそう。別にひけらかすものじゃないんで。ただ、大会があるときは「ちょっくら行くかぁ〜」って重い腰をあげてね(笑)

サイプレス上野とロベルト吉野「メリゴ feat. SKY-HI」MUSIC VIDEO

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