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実はスタジオ収録よりコスパが良い? バラエティ番組“海外ロケ”盛況のワケ

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    『イッテQ!』の過酷な海外ロケでブレイクしたイモトアヤコ

 近年のバラエティ番組を紐解くと、“絶対王者”『謎解き冒険バラエティ 世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)、“ナスD”による体当たりロケが好評の『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』(テレビ朝日系)、DVDも大ヒット中の『クレイジージャーニー』(TBS系)などがけん引しているように見受けられる。この3番組の共通項といえば、海外ロケをメイン企画に据えている点。ひと昔前まで、どのチャンネルを観ても“ひな壇バラエティ”だらけだった状況から変化が生じたワケとは?

元『電波少年』スタッフを始め、“ロケ番組の達人”たちが各番組を制作

 もはや説明もいらないほどの人気番組『〜イッテQ!』は、内村光良司会のもと、イモトアヤコや出川哲朗、宮川大輔に手越祐也といった個性豊かな面々が、世界各地に行って、珍獣を探したり、お祭りに参加したりする体当たり系のロケ番組だ。

 『陸海空〜』は、小峠英二MCの紀行バラエティ。同番組を世間に浸透させたのは、なんと言っても“ナスD”こと友寄隆英ディレクター。訪れた南米アマゾンで、シピボ族の間で美容に良いと言われている果物・ウィトを全身に。現地の人からは「絶対に取れない染料」「普通は入れ墨とかに使うんだけど」と心配の声が上がり、しばらくして全身真っ黒の“ナスビ色”で友寄ディレクターが登場する。これには現地の人はもちろん、視聴者の大爆笑も誘った。

 『クレイジー〜』は松本人志がMCを務める紀行バラエティ。世界をめぐる狂気の旅人(クレイジージャーニー)をスタジオに招き、その体験を語ってもらうとともにスタッフと同行ロケも行う。深夜枠ならではの“ヤバイ”地域のロケや、旅人による“ヤバイ”体験が見られるのが最大の特徴で、危険地帯ジャーナリストの丸山ゴンザレス氏を始め、多くの名物キャラも誕生している。

 「上記3本の番組の魅力で共通しているのは、旅人のキャラクターが立っていること。またその場で起きていることやその国の文化を茶化したりしないこと。逆に旅人の方を面白がったり、いじったりしている点です」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「『イッテQ!』の手越(祐也)さんのいじり方のテイストとして、伝説のロケ番組『電波少年』シリーズ(日テレ系)を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、それもそのはず。『イッテQ!』の総合演出を務める古立義之氏は、元『電波少年』のスタッフです。ちなみに『クレイジー〜』の番組演出・横井雄一郎氏も、影響を受けたテレビ番組として『電波少年』の名を挙げており、『リンカーン』(TBS系)などのロケバラエティ経験者でもあります。『陸海空〜』の“ナスD”こと友寄Dも、あの『いきなり!黄金伝説。』を立ち上げた同局の名物プロデューサー。それぞれロケ番組の達人が作っており、さらにはその面白さもよく知っている方たちなのです」(衣輪氏)

海外ロケはその国の“文化に触れる”名目上、規制も緩い?

 だが、各局プロデューサーが口を揃えて「制作費が安くなっている」と話す昨今、海外ロケ番組は予算的に負担にならないのだろうか? 移動費や宿泊費、現地コーディネートなどを考慮するとかなりの出費になるはず。だが、前出の衣輪氏によれば「寧ろコストパフォーマンスは良い」らしい。その理由は、ストーリー性を重んじる作りになるので、現地取材をすれば、かなりの回数の番組コンテンツが稼げること。さらには、現地のキワドイ風習やゲテモノ料理なども、その国の“文化”として紹介できるため、規制が厳しいとされる現状のTV界において、かなりの自由度があり、かなりキワキワの表現にまで踏み込めることが大きいという。

 「例えば『クレイジー〜』では危険地帯ジャーナリストの丸山ゴンザレスさんがブルガリアのマフィアが牛耳っている街を訪れた時、子供を養うためやむを得ず、妻に売春をさせる夫が紹介されました。非常に衝撃的な現実で、ほかにも日本であればコンプライアンスなどの問題で映せないような内容はあったのですが、これはれっきとした“リアル”であり、その国にとっては日常の一コマ。ここ最近、TBSのプロデューサーにインタビューをしてよく聞くことに『ドラマもバラエティも、テレビが発信する以上、ある意味で“報道”だと思っている』という言葉があるのですが、実際に起こっていることを茶化さず、文化として伝えられているのは、報道という意識があるからかもしれません。実は視聴者もそういったことはしっかりと見ているため、“ウソ”のない“刺激”は今こそ気持ちよく迎えられる。『最近の予定調和の番組と違って面白い!』と感じてもらえる相乗効果もあるので、予算に見合っていると言えます」(同)

培ってきたノウハウを反映 各局で異なるロケ番組の状況

 さらには「各局がこれまで培ってきた制作スタンスも、これらを語る上で欠かせない」と衣輪氏。例えば日テレは『電波少年』を筆頭に、昔からロケものに最も強い印象があり、『イッテQ!』の視聴率の通り、やや抜きん出た状況にある。テレ朝も『川口浩探検隊』シリーズなど“秘境もの”の経験値が高く、遺伝子的にも『陸海空〜』の人気は納得だ。スキマ産業的な独特の路線で存在感を示すテレ東も同じように語れるだろう。一方でフジテレビはスタジオで良質なコントを作り込んできた印象。海外ロケ系コンテンツではやや出遅れている感があるが、逆に局の遺伝子を引き継いだコント型ドラマ・バラエティ『痛快TVスカッとジャパン』などは好調だ。

 現状でバラエティの中心になりつつある旅ロケ系番組。だが文化を扱っている以上、知らず知らずのうちに他の文化を誤って表現してしまう怖れもある。1980年、映画『ミラクル・ワールド ブッシュマン』が公開され大ヒットを記録したが、実は“ブッシュマン”という言葉は差別的な意味合いが強く、大問題となり『コイサンマン』に改名されるという騒動が起こった。悪意はなくとも誰かを傷つけることはある。異国の文化を表現する時には、決して上から目線になることなく、しっかりと取材を行うことが肝心となる。また、単に「面白いから」といって演者の体験を“ねつ造”するようなことは、今の時代では通用しない。真摯な番組作りがテレビマンに求められている。

(文:中野ナガ)

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