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(更新: ORICON NEWS

石ちゃん、彦摩呂で打ち止め? 専任食レポタレント減少のワケ

  • 食レポ界を牽引する石塚英彦 (C)ORICON NewS inc.

    食レポ界を牽引する石塚英彦 (C)ORICON NewS inc.

 一般的に食レポと言えば「まいう〜」の石塚英彦、もはやネタ化している「○○の宝石箱や〜」でおなじみの彦麻呂などの顔が浮かぶ。しかし最近では、彼らのような自分流の表現や決め台詞を持った、いわゆる“食レポタレント”が新たに誕生することはなく、アナウンサーや芸人、タレントが、これまでの定石に則って食レポをする姿ばかり目にするようになってきた。なぜ食レポ界を牽引するようなタレントが表れなくなってしまったのだろうか。

「美味しい」だけではNG? 食レポーターたちの言葉の技術

 美味しさを伝える食レポでは、ただ単に“美味しい”と言うのはNG。ほかの言葉で表現しなければならない難しさがある。例えば阿藤快は「美味しい」とは言わず表情などで表現。この“美味しそうな見せ方”の基礎は、石塚や彦麻呂、ギャル曽根などにも引き継がれた。『突撃!隣の晩ごはん』(85〜11年)のヨネスケは、多くの家庭ごはんを軽快なトークと共にレポート。口に合わないものや、本当に不味いものを食べた時は、「なかなかですねえ」という表現で誤魔化す方法を考案。ほか斉木しげるは“美味しい”を表現するため「おかわり!」という言葉に置き換え、広がりを持たせた。

食レポの手法が定番化、専任の需要も減少

 近年、食レポに“特化”したタレントは少なくなっている。現在、食レポに定評があるのは、見るからに美味しそうに食べる日本テレビの水卜麻美アナウンサーや、大食いとの兼任であるギャル曽根、豊富な知識で濃い情報を提供するアンジャッシュ・渡部建、毒舌で嘘やおためごかしをしなさそうなマツコ・デラックスなど。それぞれ食レポはメインではないが、水卜アナは、今のダイエットブームと反した、太ることも厭わない姿勢で、マツコは「マツコなら嘘で美味しいとは言わないだろう」とのイメージで、美味しさの信憑性を勝ち取っている。

 「専任が減少したのは、彦麻呂さんが『宝石箱や〜』でブレイクしたのち、食レポを披露しながら美味しそうに見えるコツを公開したことで、初めて食レポをする人でも、それなりの完成度を見せられることが大きいかもしれない」と分析するのは、メディア研究家の衣輪晋一氏。「食レポは“味”への言及だけではなく、音や見た目や香り、食感を言葉にするのが定番です。そこに、喉越しなどの感想、また決め台詞の一つでも入れられれば完璧でしょう」(衣輪氏)

 例えば、鉄板でじゅうじゅうと焼けるステーキなどでよく使用される食べる前の音を出し、ボリューム感や『昔ながらの〜』というような雑感、そしてハンバーグなどの場合、切ってみせた断面から肉汁があふれる様子を見せる。さらに、よく聞く『芳醇な〜』などといった香りを表現し、食べた後に味の感想のほか、“サクサク”などの食感や、風味に触れることを押さえておけば、誰でも“それらしく”見えるというのだ。「番組にとってもわざわざ“食レポ専任”である必要がなくなり、需要が減ったと考えられます」(同氏)

応用ばかりで新たな表現は生まれず…しかし、膠着しているからこそのチャンスも?

 また今の食レポは、過去に名を馳せたグルメレポーターらの技術を応用したものが多い。例えば『満点 青空レストラン』(日本テレビ系)の宮川大輔が放つ効果音付きの奇声「うまい!!!!!」は、石塚の「まいう〜」があったからこそ生まれた表現といえそうだ。食通の渡部は、グルメ家の中尾彬の系統。『おじゃMAP!!』(フジテレビ系)で香取慎吾が見せる、黙って画面から姿を消し、戻ってきた時にはおかわりを持っている手法は、前述した斉木しげるの「おかわり」とよく似ている。

 「このように、すでに完成された感のある食レポ界。逆に言えば、誰もが新たな挑戦をしないからこそ、のし上がるチャンスもあるということです。事実、人気YouTuberのHikakinさんは、顔芸などのさまざまなレポート技術で若年層から絶大な支持を受けています。“膠着”した場所に彗星の如く現れると、かなりのインパクトを持って迎えられる。こういった場所からスターが生まれるかもしれません」(同氏)

 美味しさを伝えるだけでなく、信用できる食レポが求められる昨今。新たな表現方法の誕生は以前よりハードルが高くなっているのかもしれない。しかし、新たな“美味しさの表現”が生まれなくなるのは寂しいものがある。膠着している食レポ界、あっと驚くような食レポを生み出すスターが現れることを期待したい。

(文:中野ナガ)

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