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一発ギャグは諸刃の剣? あばれる君の“特異性”がピン芸人の新たな指標に

 妙に力の入った佇まい、インパクトあるルックス、一発屋っぽいギャグでブレイクしたというわけでもなく、テレビに出はじめて4、5年経った今でも、バラエティ番組に登場し続けている…そんな不思議な存在が、あばれる君だ。その芸風は、「熱血ひとり芝居」といわれるコントが中心だが、よく考えてみれば、“あばれる君ならコレ!”と言える強烈な一発ギャグがあるわけでもない。それでも、なぜかバラエティ番組で重宝され続けている芸人・あばれる君の魅力、“特異性”について探ってみよう。

インパクトが強ければ強いほど風化しやすい一発ギャグに苦心する芸人たち

  • ピン芸人・あばれる君が持つ特異性とは?(C)ORICON NewS inc.

    ピン芸人・あばれる君が持つ特異性とは?(C)ORICON NewS inc.

 最近のお笑いシーンでは欠かせないキーワードとなった“一発屋芸人”。一発ギャグと言っても、ピンやコンビ、トリオに関わらず、ブレイクするにはリズムネタや見た目のインパクトなど、強烈な印象を残すものでなければならない。それだけに、今は「一発当てただけでもたいしたもの」として、一発屋芸人をリスペクトする風潮すらあり、たとえテレビでは観なくなっても営業で十分稼いでいる芸人も多い。視聴者にしても、一発屋芸人はもはや“お笑いの1ジャンル”として認識されており、ポジションとしても十分に確立されているのである。

 とは言え、これまでブレイクしてきた一発屋芸人、たとえばダンディ坂野、レイザーラモンHG、小島よしお、スギちゃんといったピン芸人は、そのネタが強烈だっただけに賞味期限が短かったのも事実だ。一発ギャグのインパクトが強ければ強いほど、風化が早いというのも彼ら芸人にとっては悩ましいところであろう。

コンビ時代に培った技術で“推しギャグ”が無くとも輝くピン芸人たち

 一方、あばれる君のように一発ギャグや推しギャグの力を借りずとも、テレビでずっと活躍し続けているピン芸人もいる。その代表格が、バカリズム、劇団ひとり、陣内智則といった面々だ。彼らもあばれる君同様、“この芸人ならコレ!”といったフレーズこそないが、バカリズムは自身の才能のひとつである“絵”を生かした大喜利、劇団ひとりは憑依芸、陣内は映像を巧みに利用したコントで人気を集めてきた。しかも彼らの共通点として、もともとコンビ活動をしていたということもあり(バカリズム=同、劇団ひとり=スープレックス、陣内=リミテッド)、コンビ時代からすでにその才能は認められていたのである。

 だが、あばれる君はデビュー当初から生粋のピン芸人。やたら渾身の力を込めているようだが、見事な空回りを見せるコント、そしてなぜかそのコントのBGMが鬼束ちひろの「月光」というシュールっぷりだ。その力の入ったひとりコントは、あばれる君自身が「尊敬する」と語る劇団ひとりのコントに通じる部分もあるが、劇団ひとりのコントはときに狂気すら感じさせる知的なものであるのに比べ、あばれる君のほうは、どこか汗と涙にまみれた高校球児的な泥臭さを感じさせる。そしてその演技はいつ見ても“あばれる君”そのままなのである。

発言求められオタオタ…あばれる君にしかない武器は“ウソのない汗”?

 今のお笑い番組やバラエティ番組で求められるのは、ネタを振られてもしっかり笑いを取れるトーク力や切り返し力、その場の空気を読む対応力といったものが中心で、MCやひな壇での実力が認められてテレビに出続ける芸人はひと握りだ。そうした意味では、あばれる君にその能力があるか疑問符が付くのだが、なぜか急にコメントを求められてオタオタする姿や、たちまち噴き出してくるテレビ上でもわかる“額の汗”に、視聴者は共感と親近感、そして笑いを感じてしまうのである。ましてや、あばれる君が“必死さ”を醸し出すべく演技で汗を出しているわけではなく(そうだとすれば凄いが)、彼の一生懸命さ、何かを残そうとする真剣さゆえの汗であり、それは多少気の利いたトーク力よりも説得力を持ち、見る者に訴えるのだ。つまり、あばれる君の汗には、いっさいのウソがないのである。

 2015年放送の『行列ができる法律相談所』(日本テレビ系)では、まんまとハニートラップに引っかかり、売れない時代を支えてきた美人妻に「死ねばいいのに」と罵倒されていたあばれる君。一歩間違えば“ゲス不倫”非難を浴びる可能性も無きにしも非ずだったが、そのキャラクターからか、今でも“愛妻家”イメージが強く、好感度も高い。

 一発ギャグでブレイクした一発屋芸人やそのほか多くの芸人たちは、今ではネタやギャグだけでテレビに出続けることがなかなか難しくなっている。そんな中、ますます需要が高まっている感すらあるピン芸人・あばれる君のポジションは、やはり特異と言っていいだろう。“これ!”といった鉄板の持ちネタがあるわけでもなく、流暢なトーク力や切り返す反射神経に優れているわけでもない。まさしく、その一生懸命さと見た目のインパクト、額に噴き出す汗だけなのである。それでも、あばれる君のそのまっすぐさ、必死さ、出し惜しみのない“熱血バカっぷり”は、今後も視聴者に愛され続けていくはずだ。

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