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綾野剛、口説き文句は「そろそろ人間やめませんか?」、“怪物”の愛を語り尽くし!

 俳優の綾野剛が、『フランケンシュタインの恋』(日本テレビ系 23日スタート)で、約1年半ぶりに連続ドラマで主演。独特の存在感を放つ彼が演じるのは、なんと“怪物”役だ。「そろそろ人間やめませんか?」というプロデューサーの一言から始まったという今作。「今までやった役の中で一番苦労している」と語る綾野だが、その理由とは? 愛の物語への並々ならぬ意欲はもちろん、俳優デビューからの歩みまで語った。

“妖怪人間”と“フランケンシュタイン”の違いとは?

  • 怪物役を務める主演の綾野剛 (C)日本テレビ

    怪物役を務める主演の綾野剛 (C)日本テレビ

――綾野さんは、120年間山奥でひとり暮らしてきた“怪物”を演じているわけですが、最初にお話を聞いたときはどのように受け止めましたか?
綾野剛 僕は、役者も怪物も誰かの造形物にすぎないと思っています。綾野剛も、いろんな方々のイメージで形成されたもの。だから違和感はまったくなかったです。むしろ、オファーの仕方に面白みを感じました。

――どんなオファーだったんでしょう?
綾野剛 1年くらい前にオファーをいただきまして。河野プロデューサーの、「散々いろんな役をやってますから。そろそろ人間やめませんか?」というのが口説き文句でした。その段階で決まっていたのは、“人間ではない”というコンセプトと、ラブストーリーであるということ。僕自身、意外とまっとうなラブストーリーはやっていないんです。ストレートなラブストーリーは望まれていないのか(笑)。

――いえいえ、そんなことはないと思いますが(笑)。
綾野剛 今作も、人間じゃない時点で王道でないかもしれないですが、ストレートなラブストーリーというベクトルは明確にありました。それで、一番はじめに『シザーハンズ』(90年代のヒット映画。両手がハサミの改造人間と少女の交流を描くSFファンタジー)がイメージとして挙がった。そこから、古典的ともえいるフランケンシュタインを題材にして、『シザーハンズ』の切なすぎる要素を足していく…というところに行き着いたんです。たとえば日本テレビさんの『妖怪人間ベム』は“人間になりたい”という願望の話ですが、フランケンシュタインは、“人間であると認めて欲しい人権の話”。一方『シザーハンズ』は、“抱きしめたいのに抱きしめられない”というストレートな愛の物語。その要素を強くしようということで、『シザーハンズ』からイメージしたものをフランケンシュタイン博士が作った怪物に投影しています。

――人間が触れたら死んでしまうという、“変態”した後の怪物の手も見どころです。
綾野剛 オールCGにもできますが、ひたすら実物にこだわりました。ものすごくグロくもできるし、『シザーハンズ』のように鋭いものにすることもできた。でも、怪物の心の中の美しいものが、この手に造詣としてあるべきだと判断したんです。だから、見方によってはすごく美しく、それが人の命を絶つ能力を持っていることに悲しさがあるんです。

正直、今までやった役の中で一番苦労しています

  • 120年間、山奥でひとり暮らしてきた怪物(C)日本テレビ

    120年間、山奥でひとり暮らしてきた怪物(C)日本テレビ

――この作品で、特に重要な部分はなんでしょう?
綾野剛 一番大きなテーマは、100%怪物じゃないということ。もし彼が100%怪物ならば、こんなに苦しんでいない。たった1割人間の心を残してしまったことが、この人の罪だし、業なんです。それをきちんと描いていかないといけないなと。そんな怪物が人間に出会って恋をして、同時に人間の感情を手に入れていくのか。切なすぎるラブストーリーです。

――台本を読んで印象に残ったことは?
綾野剛 参ったな、と思いました。実は、プロット段階ではいろいろと見えていたんです。でも台本を読んだら、100倍芝居が難しくなっていた。情報はすごくあるんですが、読み方によって変わってしまう。お芝居だけでなく、照明や撮り方、みんなが同じベクトルに向かわないといけないので、撮影前にどういう方向をみんなが見ていくか、一緒に目標を作りました。正直、今までやった役の中で一番苦労しています。

――撮影当初はかなり大変だったのでは?
綾野剛 僕の場合、いつもは初日である程度役柄が見えてくるんですが、今回ははじめの3日間はまったく掴めませんでした。正解が多すぎて、逆に不自由なんです。怪物がピュアに受けることは、リアクションが大きすぎても小さすぎても正解だし、おびえても喜んでも正解。どれをチョイスすればいいのかと。

隙を生むために、ある意味“本気を出さない”

“怪物”が自転車に乗るシーン (C)日本テレビ

“怪物”が自転車に乗るシーン (C)日本テレビ

――台本を読むと、怪物には可愛らしさも感じました。役作りについては?
綾野剛 意識したのは、隙を生むということです。芝居で埋めすぎてしまうと、余白がなくて緊張感のあるドラマになってしまう。そうなると、観てる方も大変だと思うんです。先日ドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(フジテレビ系)を観たんですが、傑作でした。すごく緊張感があるんだけど、キャラクターひとりひとりに隙がある。以前僕が演じた『S -最後の警官-』(TBS系)の蘇我はどこにも隙がない男で、演じるのも大変でしたし、全員そういうキャラだと観るのも疲れますよね? だからいい意味で、僕の役は隙を作らないといけないなと。

――具体的にはどのように?
綾野剛 誤解を恐れずに言えば、ある意味、“本気を出さない”ことを意識しています。彼を生きるうえで感情を全部埋めない。視聴者の方に我々の作った余白に入り込んでもらうことで、最後の共演者になっていただき、それでこのドラマは初めて完成する。全部の答えを用意するのは、僕はやめようと思いました。その余白部分で、チャーミングな部分もあれば、恋や嫉妬、愛憎が生まれるかもしれない。

――1話で怪物が自転車に乗るシーンはまさにチャーミング。
綾野剛 彼の子供のような好奇心が、チャーミングの発動になってます。自転車で坂道を降りていくと世界が広がって、120年間時代に取り残された人間が、一瞬でいろんな感情を手に入れていく。結果的に、チャーミングに見えても、面白く見えてもいい。それを決めないのが、余白を作るということだと思います。

――怪物を山から連れ出してくれた津軽さん(二階堂ふみ)とゼミ仲間の稲庭くん(柳楽優弥)がハグしていて。それを怪物が見ているシーンは切ないですね。
綾野剛 はじめて心で説明できない感情が生まれた瞬間です。一番、人を狂わせる感情ですよね。愛は愛でしか処方できないけど、彼はそれを知らない。彼にはまだ、自分に世界を見せてくれた津軽さんに対して、好きという感情はわいてないと思います。ただ、そんな人が違う男性と触れ合っているのを見たときに、理屈で説明できない恋が発動してしまった。そういうところを丁寧にやっています。

――どんなことを思いながら演じましたか?
綾野剛 本当にまっさらな状態で臨みました。怪物として、津軽さんの笑顔を思い浮かべたり、チョンチョンと触ってみたいと想像したり。でもその先には、彼が想像したのとぜんぜん違う顔があるから、「あれ?」って。恋が始まったとたんに寿命が始まる。

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