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【連載番外編】SMAPベスト盤を読み解く PART.5 ベスト発売から見えたもの 唯一ライブで歌っていない曲に想い託し
稲垣がベストアルバムについて言及、各メンバーらしい“伝え方”
12月21日のラジオ『おはようSMAP』(TOKYO FM)で、SMAPのメンバーとしては初めて、稲垣吾郎がベストアルバム『SMAP 25 YEARS』の内容に言及した。ファンのリクエストで決定した50曲は、ランキングの上位をアルバム曲とカップリング曲が占め、11月上旬に収録曲が発表されると、SMAPのシングルを持たない層からは、「2001年の『Smap Vest』以降のシングル曲を収録したシンプルなベストも欲しかった」などの声も聞こえた。デビューから25年、SMAPのアクションには、常に“賛否両論”が付きまとう。でも、「STAY」は紛れもない名曲だし、それが1位に選ばれたアルバムをメンバー自身が、“一緒に作った”ように感じたと言ってくれたことは、稲垣らしい“本音”の伝え方だと思った。
一見、当たり障りがないようでいて、ちゃんとメンバーの“真意”を伝える。これが中居正広や木村拓哉の発言だったら、勝手に深読みされてしまうだろうし、草なぎ剛や香取慎吾は、自分がグループの活動に対して、(それがどんなに些細なことでも)“口火を切る”立場にないことを自覚している。でも、稲垣の場合は、「僕のソロ曲は入りませんでした」などと自虐ネタをちょっとだけ挟みつつ、飄々としたスタンスで、さらりと思いを伝えていた。そういえば、夏の解散発表後、映画の完成披露で最初にマスコミの前に姿を現したのも稲垣だった。つくづくSMAPのチームワークはすごい、と思う。2016年の初めに、“今年は踏ん張る”と宣言した中居、“自分にできるやり方で、SMAPを守る”という信念のもと、要所要所でファンへの感謝を伝える木村、雑誌の取材でファンへの思いを口にする草なぎ、「世界に一つだけの花」がトリプルミリオンを達成後の『SmaSTATION!!』(テレビ朝日系)で、(もちろん単なる偶然かもしれないが)花柄のスーツで登場した香取。メンバーそれぞれのやり方で、ファンとコミュニケーションを取っているように見える。
ファン投票で決まった曲たちは稀代の表現者への恋文、パッケージも含めた作品に
歌詞カードも冊子になっている。今回のベストが特にメッセージ性の強い曲が多く選ばれていることも手伝って、SMAPという稀代の表現者の元に贈られた恋文を集めた現代詩集のようだ。稲垣がラジオで「入っていいのかなぁ」とつぶやいていた「チョモランマの唄」は、2008年のライブ『super.modern.artistic. performance tour』で披露されたもので、これまで一度も音源化されたことがなかった。リクエストランキングの8位に入った曲が、どういう形で収録されるのか。新たなレコーディングがあるのではないかと期待していた人(私も含め)もいたようだが、(おそらく)ライブ用にレコーディングされたワンコーラスのみの収録だった。でも、“幸せに生きることは簡単”と軽やかに、大真面目にふざけながら歌う彼らの声を聴くだけで、自然に笑顔になれた。こういうシャレの効いた曲で、表面的には軽快さを装いつつ、でもズシンと心に響くメッセージを手渡すことができるのは、やはりSMAPならではだ。
発売日に展示された衣装、そこから見えるSMAPのオリジナリティ
SMAPにはSMAPにしか奏でられないコードがあって、それがつまりグループとしてのオリジナリティに通じる。5人は、例えるなら5弦の楽器(ある時期までは6弦だった)。17日付の朝日新聞で、ビクターでSMAPを担当するSルームのプロデューサー・見上浩司氏が、「彼らほど作り手の創作意欲を掻き立てる存在は珍しい」とコメントしていたが、“世界で一つだけの楽器”の価値を強く実感していたのは、メンバーやファン以上に、音楽の作り手の方だったのかもしれない。
収録曲で唯一ライブで歌われていない――残るは「華麗なる逆襲」
“本当の敵は誰”なんて穏やかじゃないワードが並ぶ「華麗なる逆襲」だが、そこにも、忌み嫌うより愛する方を選んでみたり、まだ勝負してないとうそぶいてみたり、デビューの頃から変わらない“SMAPスピリット”が貫かれている。だから、このアルバムを聴けば信じられる。“毎度いらっしゃいませ”と、不敵に笑いながら、彼らがいつかこの曲をステージで歌う日が来ることを。
(文/菊地陽子)