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朗読劇が再評価の兆し 五感を刺激するアトラクションへと変化

 CGや撮影技術の発達により、今やどんな物語、どんなシチュエーションでも“映像化”が可能になった。だがその一方で、明確に視覚化された“映像”には頼らない、声や音だけで楽しむ朗読劇やラジオドラマ、ドラマCDなど、一種“アナログ”なエンタテインメントの魅力も再認識されている。そんな中、古くから人々に親しまれてきた“朗読劇”は劇的に進化し、まったく新しい姿に変貌を遂げているという。体験する人の五感と想像力を限界まで刺激する、その“進化”とは果たして、どんなものなのだろうか?

ラジオドラマやドラマCDも盛況 “声だけで想像し、物語を楽しむ”日本の文化

 昨年ニッポン放送が、かつてのラジオドラマ『夜のドラマハウス』を32年ぶりに復活させ、『らじどらッ!〜夜のドラマハウス〜』として放送中。またリスナーから募集したプロットをもとにラジオドラマを作成するAKB48出演の『AKB48の“私たちの物語”』(NHK-FM)も好評を博しているほか、今の声優人気を受けたドラマCDのブームも密かに進行中だ。

 耳に入ってきた“音”だけで脳が創り出すイメージは、その人の好みや記憶、価値観でカスタマイズされることもあって想像した本人は惹き込まれやすく、自らが生み出した世界観ゆえに、その分記憶にも残りやすい。何でも映像に出来てしまう今だからこそ、“映像という外部情報が与えられない状態”を脳は新鮮に感じ、なおかつ映像に特化した現代へのアンチテーゼ的な意味合いとしても大変に魅力的。このほか、昨今のアニメ人気に並行した声優へのリスペクトや憧れも“朗読劇”を広く流布することに一役買っている。

生演奏から“匂い”まで、新たな“朗読劇”の誕生

 朗読劇のイメージと言えば、スタンドマイクの前に座る役者にスポットライトが当たり、暗闇の中でその声だけが響いている…そんなイメージを持っていないだろうか? だが最近では、スクリーンに映し出される絵本の原価に合わせて、生の音楽と生の朗読で作り上げる“音楽朗読劇”など、工夫を凝らしたエンタテインメントへと徐々に変化。ホールやホテル、イベント会場、コンサートホール、ライブハウス、幼稚園で公演され、大人から子どもまで、幅位広い層から好評を得ている。

 “新感覚・音楽朗読劇”を謳うプロジェクト“SOUND THEATRE(以下・サウンドシアター)”は、朗読劇のさらなる可能性に挑戦し、皆がイメージする朗読劇の枠を超えた新たなエンタテインメント空間を構築しているという。
「(サウンドシアターでは)日本の語り手が持つ世界にも類を見ないクオリティ(声だけで情景を伝える日本の声優らの技術)を存分に活かし、朗読劇という枠を超越した五感を刺激する新たな総合エンタテインメントを構築してきました」と話すのは、サウンドシアターを主催する『株式会社 アハバ クリエイティヴ パーティー』の代表・青木照和氏。2009年に公演された藤沢文翁原作/演出による『HYPNAGOGIA』を前身とするサウンドシアターは2011年より現在の形として始動。コンスタントに20回の公演を重ねてきた。

新たな“アトラクション”へ 無限の可能性を秘めた朗読劇

 サウンドシアターは、朗読劇に生演奏の音楽が付け加わるほか、それを取り巻く舞台セットなどの美術、照明、演者の衣装、さらには“香り”なども駆使し、観客の想像力を最大限に引き出す。「サウンドシアターは“ライブ”でもあります。語りを聴く、というひとつの側面だけではなく、音楽ライブ、映画のような世界観、そしてアニメーションのような二次元感を上手く組み合わせ、そして想像していただくことにより、あたかも“アトラクション”に来たような感覚になれるのです」(青木氏)

 その際のこだわりとしては「キャストに動きが無いことを逆手に取る」ことだという。青木氏によれば、“映像”は“映像”として脳に飛び込んでくるため、良くも悪くも作り手側のイメージで世界観が固定されてしまう。キャストが声以外の芝居をすることもやはり“印象の植え付け”になるので、そういったイメージ固定の恐れのある“視覚情報”は可能な限り排除。そして「映像はあくまでも観客の想像の中に」することで、作品に“無限の可能性”を付与するのだという。

 また青木氏は“ライブ”という言葉も“概念的”に使用。全てが“生”=“ライブ”で行われるため、ステージ上のキャストはもちろん、ミュージシャン、スタッフ、そして観客も次の瞬間、何が起こるか分からない。その場にいる全ての人の“想像力”が物語に“フォーカス”した時、「サウンドシアターは(プロジェクトとして)結実するのです」と青木氏は熱を込めて語っている。

 なんでも映像に出来てしまうこんな時代だからこそ、“想像→創造”という無限の可能性を秘めた朗読劇の楽しみが、密かに、だが確実に、その枝葉を今後あらゆるジャンルへと広げていきそうだ。

『SOUND THEATRE』 今後の公演予定

『SOUND THEATRE×さよならソルシエ』
【日時】2016年12月3日・4日
【会場】市川市文化会館
『CLAMP×SOUND THEATRE xxxHOLiC』
【日時】2017年1月28日・29日
【会場】豊洲PIT


(文/衣輪晋一)

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