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ニーズ高い“医療バラエティ”が減少してしまったワケ

  • 『たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学』司会のビートたけし (C)ORICON NewS inc.

    『たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学』司会のビートたけし (C)ORICON NewS inc.

 10月17日に放送された『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)において、お笑いコンビのノンスタイル・井上裕介の心臓が「先天性二尖弁」であることが発覚。いつもはポジティブなイケメン勘違いキャラの井上だけに、視聴者へのインパクトも大きかった。こうした芸能人が健康診断を受けて不健康度をネタにするという、いわゆる“医療バラエティ”番組の数が最近は減少傾向にある。視聴者の病気への知識や早期発見への意識を高めるという意味でも、医療バラエティ番組には“よい効果”があると思われるのだが、なぜ減少傾向にあるのか?

近年はなかなか見ないバラエティ番組での“面白健康チェック”

 この“医療バラエティ”の代表格とも言えるのが、『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』(テレビ朝日系)だ。“メディカル・ホラー・エンタテインメント”と称する同番組は、山田邦子の乳がんが発見されるなどの話題性もあり、視聴者の危機感や恐怖心を煽る番組構成で、2004年の放送開始以来、安定した視聴率を残していた。

 また他局においても、同時期に『ジャンクSPORTS』(フジテレビ系)の番組内で「血液サラサラ選手権」(「血液ドロドロ選手権」もある)という、血液を医療器具に流して誰が一番早く通過するかを競う企画が人気となると、“血液サラサラ(ドロドロ)”は健康のバロメーターとして、世間でもちょっとした流行語になる。『ぐるぐるナインティナイン』(日本テレビ系)や『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)でも、公開人間ドックで不健康王を決めたり、メタボ男性のリアルな健康状態をチェックするなど、バラエティ番組内の一企画として“健康志向”が取り入れられ、芸人が肛門から内視鏡カメラを入れて悶絶する…なんて場面もすっかり“定番化”したのである。

番組タイトルも変更、ねつ造発覚で規制強化

 「医療バラエティブーム、健康番組ブームに暗い影を落とすことになったのが、2007年の『発掘!あるある大事典U』(フジテレビ系)問題です。同番組は、たけしさんの番組のように“このまま放っておくと大変なことになる”的な煽りではなく、“○○を食べると美容によい、健康によい”というポジティブな面に振った内容で人気が出ました。視聴率も好調で、放送翌日には、番組で取り上げた食品がスーパーで売り切れる事態も起きるほどでした。しかし2007年に、“納豆ダイエット”の根拠のデータがねつ造されたものだと発覚すると、翌週に番組は終了。その翌週には、同時間帯で5分間の謝罪特別放送が流されるまでに問題化されました」(バラエティ番組制作会社スタッフ)

 そうした意味では、医療バラエティは、さらにきちんとしたデータの裏付けや綿密な取材、事実誤認のチェックなど、『あるある〜』のような健康系番組に比べても、はるかに手間も労力もかかる番組だ。また、医療研究は日々進歩しているので、去年までの常識が今年の“非常識”となることもあり、信ぴょう性が薄かったり、ヘタをすれば誤報となってしまう可能性もあるジャンルなのだ。今年、各週刊誌が論争を繰り広げた「ガンは切るか切らないか」にしても、医者によって意見が正反対になることからもわかるように、番組としてはなかなか断定しにくい分野になってきたのは事実なのである。

「さらに言えば、危機感を煽りすぎるとBPO(放送倫理・番組向上機構)から注意を受けることもありますし、そうなれば番組自体の寿命が危うくなります。たけしさんの『本当は怖い家庭の医学』にしても、2010年には『たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学』にタイトル変更されてます。過度に恐怖心を煽らないように配慮したのかも知れません」(前出・スタッフ)

様々な功罪を経て、視聴者への影響力を考慮した良質なバラエティへ

 要するに医療系の番組は、視聴者の関心も高いだけに影響力も大きく、労力もリスクもともなうということだ。今では、先の『みんなの家庭の医学』と『主治医が見つかる診療所』くらいしかレギュラー番組はなく、あとは教養バラエティ番組内の一企画として扱うことで過剰なイメージを避ける…というフォーマットが定番化しているようだ。一方、10月28日からは、恵俊彰司会の健康情報番組『その原因、Xにあり』(フジテレビ系)がスタートするという。腰痛や肩こり、ぽっこりお腹といった身近な悩みをテーマにするらしいが、やはり健康問題はいまだに視聴者の関心の的であるということだろう。

 今ではほとんどの情報がネットで調べられる時代になったとはいえ、その膨大な情報量からの取捨選択は容易ではない。ましてや医療・健康関係ともなれば、危険で怪しいものがいくらでもある。ここはやはり、様々な功罪を経てきたとはいえ、テレビならではの良質なエンタテインメント・医療バラエティの出番ではないだろうか。今後も視聴者との適切な距離感を保つ工夫をしつつ、有益な情報を与え続けてもらいたい。

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