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テレビで致命的だった“滑舌の悪さ”が逆に需要拡大 そのワケとは?
“リスペクト”を忘れていないからこそ、プロレスラーも怒らない
「さすがに前田さんが“滑舌悪い枠”に入ってくるとは思いませんでした(笑)。“滑舌クイズ”みたいなおふざけ企画までやるんですから……。前田さんは、プロレスファンからは“前田兄さん”と呼ばれるほどのカリスマで、同時にめちゃくちゃ怖い“キレキャラ”としても有名だったので、よく出演を承諾したなと……。ただ以前から、プロレスラーのマイクアピールでは何を言ってるのか聞き取れず、観客が“?”となりながらも、何となく“いいぞー!”的な感じで相槌を打つのはお約束の光景。もちろんテレビ中継では、ちゃんとテロップが出て“通訳”してくれますけど(笑)」(エンタメ誌編集者)
強面代表格のプロレスラーに滑舌が悪いと言う『水曜日のダウンタウン』の企画自体もすごいが、このネタを最初に手掛けた有吉弘行やくりぃむしちゅーの有田哲平などは、1980年代の新日本プロレス黄金時代を見て育った世代であり、相当なプロレスファンであることは有名。プロレスラーへの“リスペクト”を忘れていないからこそ、ネタにされるプロレスラー側も本気では怒らないし、テレビ出演のメリットも享受できるのである。
コンプレックスを笑いに…“滑舌の悪さ”も新たにそのジャンル内に
「諸見里さんは、滑舌が悪いことこそが一番のウリです(笑)。ドラマやCMに出演するようになっても、あの滑舌の悪いままの演技が認められてるんですから、大したものです。滑舌の悪さがクローズアップされてから、彼は確実に仕事を増やしていますし、コカドさんやロッシーさんなど、ほかの芸人さんたちも一緒に引き上げられてる感がありますね。アナウンサーや司会者ではあり得ないでしょうが、そのうちあえて滑舌を悪くする芸人さんが出てくるかもしれませんよ(笑)」(前出の編集者)
先述の“プロレスラー滑舌悪い四天王”にしても、滑舌が悪いことをネタにテレビに出れば、“体が大きくて怖そうな人”だったプロレスラーのイメージを、より親しみやすいものにすることができるし、プロレス自体の社会的認知を広げる効果もある。逆に言えば、プロレスという本業で一芸に秀でているからこそ許されるわけであって、滑舌の悪さがネタにされても、本人たちもスタジオも視聴者も楽しめるとも言えるだろう。
これまでもお笑いやバラエティ番組では、“デブ”ネタや“ハゲ”ネタなどの一般的にはマイナスイメージだったり、コンプレックスだったりするネタを笑いに昇華してきた。そしてここにきて“滑舌の悪さ”まで登場したわけである。やはりバラエティ番組には、あらゆることを飲み込んで反転・昇華させる懐の深さがあるということなのかもしれない。