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窪田正孝インタビュー『20代の今しかできないラブストーリーに挑戦したい』

映画、ドラマと話題作への出演が続く窪田正孝。藤ヶ谷太輔とのキスシーンも話題のW主演映画『MARS(マース)〜ただ、君を愛してる〜』で演じた衝撃的なキャラクターについて、これまでに演じてきたクセのある役柄に思いを馳せながら語ってくれた。誰もが認める演技派の窪田が30代でやりたいこととは!? 20代のうちに「今しかできないラブストーリーやラブコメをやりたい」という本音も明かしてくれた。

生半可な気持ちでは演じられない、共感するのが難しいキャラクター

――ドラマから続いた完結編となる今作で演じた桐島牧生は、今作においてどんな存在だったと思いますか?
窪田正孝藤ヶ谷太輔くん演じる“樫野零”と、飯豊まりえちゃん演じる“麻生キラ”がものすごく強く映るからこそ、ドラマ版での牧生は、どうしても視聴者側になってしまう部分がありました。でも、牧生を演じていくなかで、牧生にも気持ちを重ねてほしいという気持ちが芽生えてきたんですよね。

――牧生のキャラクターに共感するのはかなり難しいですよね。
窪田正孝そうなんです。でも、彼はまだ未成熟だからこそ、零の狂気だけを求めているところがあって……。零を思い通りにするという目的を果たすためにはどんなものでも犠牲にする行動力は、本当にすごいです。

桐島牧生(窪田正孝)と樫野零(藤ヶ谷太輔)

桐島牧生(窪田正孝)と樫野零(藤ヶ谷太輔)

――たしかに、かなり狂気に満ちていますよね。
窪田正孝零の双子の弟を死に至らしめてしまうほどですからね。そんな彼の本能は、ここまで行くと見事だなと思うんです。原作者の惣領冬実さんも、牧生への思い入れがかなりあったとお聞きしているので、最初に役をいただいたときに、生半可な気持ちでは演じられないなと思っていたんです。それに彼は、零を求めるがあまり盲目になってしまい、自分で自分の首を絞めている部分があります。零に近づけば近づくほど、自分の心を殺している部分があって。ある種、これも愛の形なのかなとも思いました。……かなり歪んでいますけどね(苦笑)。

――屈折しているけれど、まっすぐな部分には圧倒されました。
窪田正孝人って、第三者から見ると、あの行動はおかしいと思うことがたくさんあると思うんですよね。牧生に対しても、全否定するのではなく、この映画の枠から視野を広げることで、少しでも自身を重ねてもらえたらという想いはあります。

――愛される存在ではないけど、窪田さんにとっては愛してほしい存在なんですね。
窪田正孝そうですね。牧生ももっと周りの意見を聞けばいいのにと思うんです。彼は本当に孤独で、出会いに恵まれてこなかったんだなと。彼に対して“ダメだ”って教えてくれる人がいなかったから、あんなふうになってしまったんですよね。もちろん、そんな描写もないからこそ、そこに真実味が出ていると思うのですが……。

ひとつ、ふたつ先をやることを大事にしている

――演じていて苦しい部分はありましたか?
窪田正孝う〜ん……。僕自身、ひとりでいることが好きなので、ひとつのことを突き詰めていく精神力は見習うところがあって。彼は色で言うと黒一色なので、演じる苦しみはなかったですね。零に対しての想いのせいで、黒が薄くなるときもありましたけど。むしろ、零も早く暴力的になってくれたらいいなとか、キラを使えば彼はものすごく怒ってくれるし、殺そうとしてくれるんじゃないかなってずっと思っていました。

――牧生に想いを重ねていたんですね。
窪田正孝牧生は、味方になってくれる人がなかなかいないですからね。演じるうえで、牧生の味方にならなくちゃって想いもありましたし。それに、彼の心情を理解できなければ、うわべだけの作品になってしまうと思ったので、ちゃんと気持ちを重ねるように心がけました。

――いつも役に対してはそういった心構えで臨むことが多いですか?
窪田正孝そうですね。あまり形を決めてしまうと、先入観が先走ってしまうので、ふわっとした気持ちで現場に入るようにしています。役作りをしっかりとしていくと、自分の気持ちがどこか染みてしまうんですよね。それだと監督の意見をそのまま聞くことができないので、柔軟性は大事にしています。

――その場に馴染もうという柔軟性が大事なんですね。
窪田正孝監督が思い描くものに乗っかって、提示したものに色を付けたり、もうひとつ、ふたつ先をやることができればいいなと。

――いつもひとクセもふたクセもある役柄を演じていますが、あえてそういった役を選んでいるんですか?
窪田正孝いやいや、全然です! 選んでいないですよ!! それでもこういった役が続くのは、きっと僕がそういうふうに見えるんでしょうね(笑)。今回も、零か牧生かと言ったら、間違いなくこっち(牧生)なんだろう、という(苦笑)。

プライベートのイメージは…陰湿に見えているのが正解?

――零のような役も演じてみたいですか?
窪田正孝やりたいですけど、零を演じるのには器の大きさが必要になってくると思うんですよ。そういったことでは、太輔くんだからこそ演じられた役だと思うんです。いろいろな学園ものを観て思うんですけど、どんな作品にもしっかりと群像劇が描かれていて。それを背負うプレッシャーもあるはずのに、太輔くんはそこに戸惑うことなく、零というキャラクターを自分のキャパを広げて演じることができる方なので。僕は、たぶん無理ですね……(笑)。

――でも、そういう役を演じる窪田さんを観たいというファンもたくさんいると思うんですよ。20代後半を迎えて、30代に向けて考えていることはありますか?
窪田正孝機会をいただけるなら、30代までにラブストーリーとかラブコメとか、この歳じゃないとできないことをやってみたいとは思います。それで30歳を迎えたときに、若い主役やヒロインの子が相談しに来るバーのバーテンみたいなことやりたいんですよねぇ。「俺はあの時ああだったよな〜」みたいなこと言って……。

――え、バーテンを? プライベートで!?
窪田正孝いやいや役柄です、役柄! バーテンさんになりたいのではなく(笑)。僕、どっちかというとそういうのは苦手分野なんですけどね。
――陰のあるキャラクターやクセのある役柄を演じることが多いですが、それに対して戸惑いはありませんか?
窪田正孝役を与えられたときに、しっかりまっとうできるかな、とは毎回思いますね。そこに責任ものしかかってくるし……でもやるしかないと。本当に日々、勉強させていただいています。

――あまりにも役のイメージが強いからか、プライベートではどんな人なんだろうって思う観客も多いと思うんです。
窪田正孝あ、陰湿な感じですか? 大正解です!(笑)。

――いやいや(笑)。いつも取材では、明るく元気にお話していただけますよね。
窪田正孝プライベートではひとりでいる時間がものすごく多いので、現場とか取材では反動でしゃべれるんですよね。それでまたプライベートに戻ると誰ともしゃべらず、翌日は現場でスタッフさんと話をしています(笑)。プライベートでもずっとしゃべっていたら疲れちゃう気がして。ふだんはインドアです(笑)。

常に自分を壊していく作業をしていかないといけない

――家ではどんなことをされているんですか?
窪田正孝睡眠ですね!(笑)。あとは、真夜中のドライブとか。ドライブって言っても、車からは一歩も出ないで、出るとしてもせいぜいガソリンスタンドくらい。

――車を降りようとは思わない?
窪田正孝全然思わないです! 知ってる道しか行きたくないんですよね。知らない街に行くとドキドキしちゃうんですよ、周りが見えなくて(笑)。余裕がなくなっちゃうんですよね。

――演技では挑戦が多いですからね。日常では余裕や安定を求めているのかもしれないですね。
窪田正孝そうかもしれないですね。演技では、常に自分を壊していく作業をしていかないとって思っています。シビアな世界だから、いつ飽きられるかわからないですから。
――そのような焦燥感を常に持っているんですか?
窪田正孝持っています。よく“我が道を行っている”と言っていただけるのですが、それがいつまで通用するかもわからない。つまらないと思われたらおしまいですからね。

――その気持ちを解消するためにしていることはどんなことですか?
窪田正孝一度やった役は捨て去ること。ひとりの人間が演じられる枠には限度があって、人それぞれのキャパってあると思うんです。それに、芝居を続けていくと、“ああいう芝居だな”っていうイメージができてくるけど、それがいちばんイヤなんです。だから、それまでの演技を壊してゼロから作り上げるんです。例えば、“1クール前のドラマの芝居が良かったから、ああいう感じでやってほしい”と言われることがあるんですが、それはもう僕のなかでは過去になってしまっているんですよね。もちろん、監督が求めていることには柔軟に応えますが、新しいものをどんどん見つけていきたいし、そうしないと、僕自身の先はないと思うんです。

――先はない?
窪田正孝はい。もっともっと今まで以上に新しいことに挑戦していきたいです。
(文:吉田可奈/撮り下ろし写真:逢坂 聡)

『MARS(マース)〜ただ、君を愛してる〜』

 海で奇跡的に出逢った零(藤ヶ谷太輔)とキラ(飯豊まりえ)。過去に心の傷を抱えながら孤独に生きてきた2人は惹かれあい、恋に落ちる。そこへ、零の死んだ弟・聖と親友だった牧生(窪田正孝)が現れる。零とキラのよき理解者であるように見えた牧生は、零が持つ秘めた一面に強い憧れを抱いていた。牧生は、零とキラの忌まわしい過去を突き止め、2人を引き裂こうとするが……。

監督:耶雲哉治
出演:藤ヶ谷太輔、窪田正孝、飯豊まりえ、山崎紘菜、稲葉友ほか
2016年6月25日(土)全国ロードショー
(C)劇場版「MARS〜ただ、君を愛してる〜」製作委員会
【公式サイト】(外部サイト)

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