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ゆるキャラGP獲得!“本家”顔負けの戦術駆使した「家康くん」の魅力とは?

 先月、『ゆるキャラグランプリ2015』が静岡県浜松市で開催され、事前のインターネット投票と会場への来場者の投票数の合計、695万3461票を獲得して地元・浜松のゆるキャラ「出世大名家康くん」が見事グランプリに輝いた。下ネタ連発のくまモンや、出演番組の制約が厳しいと噂されるふなっしーなど、ゆるそうでまったくゆるくない“ゆるキャラ”が人気を集めているが、家康くんも、その名のとおり徳川家康の生まれ変わりというだけに、天下を取るためじっくりと時間をかけて策を弄してきたようだ。

黒一色のシンプルな顔立ちで見る人を翻弄する家康くん

 「家康くん」は2011年、浜松市の市制100周年を記念して、徳川家康の生まれ変わりとして誕生。翌年2012年には、早くも浜松市の“福”市長の座をそれまでの故・赤塚不二夫大先生のキャラ「ウナギイヌ」から奪還し、周囲にその実力のほどを見せつけた。ルックスからして、頭のちょんまげはウナギだし、羽織の紋はミカン、袴はピアノの鍵盤と、すべて地元浜松の特産品や観光名物で固めており、かなり押しが強い。

 そして見る者を戸惑わせるのがその顔だ。たいがいのゆるキャラは、パッチリした目にピンク色のほっぺという特徴があるのだが、家康くんの顔はパーツが黒一色のシンプルなデザインで、パッと見どれがどれだかわからない。目だと思ったら口ヒゲだったり、鼻かと思えば口だったり、口と思っていたらアゴヒゲだったりするのである。しかも、歴代のグランプリや今年の上位キャラクターのすべてが動物をモチーフにしてる中、たったひとり人物キャラとして乗り込んできたのもすごい。そんな家康くんが、今回のグランプリを獲得するまでにはいろいろなドラマもあった。

無念の準優勝で出家 積極的な話題作り

 この世に生まれて2年目、カブトをかぶると話せるという理由から、2013年の“出陣式”で突然喋り出し、その年の「ゆるキャラグランプリ」で「天下を取れなかったらまげを落とす」と、天下統一宣言を肉声で行なった。浜松市役所の積極的なバックアップもあり、投票数は非公表になる直前までトップを独走、しかしネットでは「組織票だ!」との批判を浴びた。その影響もあったのか、栃木県・佐野市の「さのまる」の猛烈な追い抜きにあい、無念の2位という結果になったのである。
 その後、家康くんは、公約どおりに都内のホテルでマスコミを集めて断髪式を行なった。ミカンもピアノもお咎めがないのに、なぜチョンマゲのウナギイヌだけが切られるのかと浜松のうなぎ業者関係からの声も上がったが、マゲを落した家康くんはまた喋れなくなり、ツルツル頭に頭巾をかぶって“出家“大名として修行の道を歩むことになる。こうしたビジュアルの変化にも対応する積極的な話題作りからは徹底した姿勢が見られ、“人心をつかむ術も心得ている”と、家康くんの評価を高めることにもなった。

天下を取るためには手段を選ばない 用意周到な戦術で時代を築く!?

 2014年、前年の屈辱を晴らすため虎視眈々と策謀をめぐらせていたはずの家康くんだが、『ゆるキャラグランプリ』の投票法が変わり、グランプリ開催地に訪れた来場者による投票も加わることになった。それを受けた家康くんは、なんと出場を辞退。浜松市長は「状況をよく確認し、優勝を狙える確信が持てた時点で参加する」とコメント。いわゆる「鳴くまで待とう、ホトトギス」というわけだ。そして今年、『ゆるキャラグランプリ』の開催地が浜松市に決定すると、満を持しての出場を発表。ネットの投票期間中には、連日にわたって地域のイベントや駅でPR活動を行ない、毎週日曜日には浜松城を闊歩するなど、積極的にアピール攻撃を開始した。さらに2013年の“組織票批判”の反省から、「家康くん市民応援団」を結成し、“開かれた情報を”ということで「家康くんハウス」も設立。ボランティアの人たちの協力も受け、グランプリ獲得に向けて怒涛の活動を繰り広げていったのである。
 その甲斐あって、ネット投票では7000票の差をつけてトップに立っていた愛媛県の「みきゃん」を、3日間の現地投票で巻き返し、「家康くん」が逆転勝利を収めた。ネットなどでは、その“攻防劇”をめぐって様々な声も上がったようだが、こうした“天下を取るためには手段を選ばない”というたくましさが、他のゆるキャラにはない家康くんの最大の魅力なのである。世界にも類のないと言われる“徳川300年”だけに、ゆるキャラのくせにゆるキャラっぽくない家康くんの天下は当分続くのかもしれない。

(文:五目舎)

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