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西島秀俊×ビートたけしインタビュー『自分の感覚でしかわからない×もう怖いものはない』

取材の合間に、頭を寄せ合って数学の問題を解くふたりの姿が、とても微笑ましかった。2002年公開の北野武監督映画『Dolls[ドールズ]』での出会いから、しばしの時を経て、『劇場版MOZU』で再会を果たした西島秀俊とビートたけし。会えない時間は、逆にふたりの距離を縮めたようだ。つかの間の邂逅を愛おしむように、ふたりが言葉を交わし合った贅沢な30分間。話は『MOZU』の世界から、紀元前、江戸に昭和に、ふたりが出会った21世紀はじめにかけてまで!? 映画愛にあふれた自由な対談をたっぷりと一挙掲載!

自分がやるのはどうかなあ…

――ずいぶん前から、西島さんは羽住英一郎監督と「『MOZU』シリーズ最大の謎であるダルマ役には、ビートたけしさんしかいない」と話していたそうですね。なぜたけしさんが適役と思われたのですか?
西島この『MOZU』という作品は、とにかくいろいろな男たちが、それぞれの信念をもって、血みどろの殺し合いをしていきます。そのなかでも、ダルマはいちばん上に立つ、混沌とした世界の象徴みたいな存在であり、しかも日本中の夢のなかに出てくる謎の男。そういう男を演じる説得力、役を作って演じるのではなく、そのひとが現れただけで“あ、このひとは全然別の次元の存在だ”というのが伝わる存在というのは、北野さんしかいないと話していました。でもそれは、ドラマを撮影しているときに、北九州市の焼肉屋で出たような話(笑)。出演していただけるとは、もちろん思っていなかったし、今回実現していちばん驚いているのは、監督と僕だと思います(笑)。

――これまでにも、怪物的な強烈な役どころで、観る者の心を揺さぶってきたたけしさんですが、ダルマという役のどんなところに魅力を感じたのですか?
たけしいま西島くんの話を聞いていて“北島三郎はどうかな?”って、ふと思ったけどね(笑)。説明を受けても、まるっきりわからない存在だったんだけど、ダルマのイメージが、ひょっとこじゃないけど、ちょっと親しみのある感じで。達磨大師とか、禅宗の坊主のイメージで考えていくと、それなりにその気になるなあと。自分がやるのは果たしてどうかなあとも思ったけど、オファーがあったってことは、ありがたいことだなと思って。
――『MOZU』シリーズは、ご存知でしたか?
たけし観たことなかったんですよ。TBSでやってたって本当? って(笑)。
西島やっていましたよ(笑)!
たけし(TBSで)仕事をしているから観ているはずなんだけどなあ(笑)。でも、ドラマは難解だよね。読み解くみたいなところとか、いまのひとたちが喜びそうな複雑な構成になっているから。人間関係がストレートに出てこないんだよね。(ダルマは)エピソードとして断片的に出てくるから、これは大変だなあって思った。

――ダルマを、悪役として捉えましたか?
たけし本人は、悪とは思っていなかったんじゃないかなあ。国を維持するために作られた組織の、中心的な人物に祭り上げられているという。国体を維持するための必要悪という感じの、象徴的な存在だと思ったんだけどね。
西島僕が演じる(主人公の)倉木からすると、雲の上の存在というか、そもそも出会うはずもないし、本当にダルマっていう人物が実在しているのかもわからない。実在したとして、そのひとが何を考え、何を自分のルールにして生きているのかってことも、全くわからない。伊勢谷(友介)くんの役(高柳)がダルマの右腕になっているけど、彼はダルマのしたいことを遂行させるためだけにいて、実際は彼も(ダルマが)何を考えているのかわからないと思う。一方、倉木は失った家族のためだけに戦っていて、戦いが終わったらたぶん、このひとは死ぬ。(シーズン1『百舌の叫ぶ夜』の)第1話の冒頭で家族が死んだときにもう、倉木の心は死んでいて、(後は)ただ機械のように戦っているだけ。(ダルマと倉木は)天地の、いちばん上といちばん下にいるキャラクターというイメージです。

板ばさみになったような気持ち

――そんなふたりが対峙する、炎に包まれたクライマックスシーンの撮影はいかがでしたか?
西島羽住組は、俳優に対してだけではなくて、カメラワークはもちろん、炎の大きさまですべてに監督が演出をつけて、全部が完璧に合わないとOKが出ません。だから、俳優の演技がよくてもカメラワークがズレていたらもう一回。実際に(大量のドラム缶で)炎を焚くという大変な状況のなか、たけしさんが特殊メイクをして夜中まで撮っていても、平然と「もう一回、お願いします」って言っていました(苦笑)。僕は羽住監督も好きだし、たけしさんは恩人みたいな方なので、板ばさみになったような気持ちでドキドキしていました。毎回、本番前に炎を燃やして、すべてに納得がいくまで突き詰める。非常に過酷な撮影でした。でも、これが羽住組だなって思いました。
たけし周りを全部ブルーバックで囲んでいたから、炎もCGで作れるんじゃない? なんて思ったんだけど(笑)。その辺がこだわりだよね。炎ってどう動くか予想できないので。例えば街や夜景は(実際に)在るものだから、コンピュータで再現できるけど、炎は映像にする人たちの感覚(によって見え方が違うもの)だから。実際に焚いた方が納得できるんだよね。まあやらされる方はたまらないけど(笑)。水を撒いて、排気ガスに囲まれて、あのカツラをつけて、メイキャップして、燃えさかる炎のなかにいる。ロウソクみたいなもんだからね。オレ、焦げているんじゃないかって思ってた(笑)。
――炎以上に、監督の熱気もすごい現場だったんですね。
西島今回、吹き替えはほとんどなく、本人がアクションをやっていますし。さすがにたけしさんには、吹き替えの方を用意されるのかなって思っていたんですけど、いなかったですよね?
たけしアクションもそんなにないし、寝ていることが多かったからね。病室にいるシーンで、全然映っていないんだけど「寝ててください」って言われて。オレがいなきゃいけないのかなあっていう(笑)。離れた場所で芝居をしているときは、いびきかいて寝ちゃったりして。そのあと、やっとカメラが近づいてきたぞ! と思ったら、また遠ざかっていって(笑)。(羽住)監督はおもしろいね。オレとは違う粘り方をする。納得できない映像だと、とことん粘るんだな。オレは役者の演技がよっぽどひどくなければ「オレには編集がある!」ってOKにしちゃうんだけど(笑)、基本的には納得できる映像を撮らなきゃ、映画ってできないんだろうし。だから、勉強になったね。本編を見返してもわかるけど、まぁ役者さんは酷い目に遭ってるよね。よくケガ人が出なかったっていうくらい。オレ、フィリピンロケなんてやなこった! って(笑)。よくやってきたよね。
西島そうですね(笑)。みんな、興奮して熱に浮かされたようになって、ちょっと瞳孔が開いていました。でも、やっぱり楽しいんですよね。日本ではできないアクションがやれるので。でも本当に危ないこともありました。
たけし映画の冒頭の倉木が車の屋根に上って、男たちを次々に制していくアクションシーンは、すごくカッコいいなあって。でもよく観ると、車を固定していなくて、危ねぇなあって。まあCGだから、そんなに危険じゃなかったと思うけど。
西島あれ、CGじゃないんですよ。
たけしえっ! そうなの……。あーやだやだ(笑)。

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