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三谷幸喜監督『“僕しか作れないもの”を取っ払って…思いきったことができた』
舞台は新宿でもいいんじゃない?という物語
「なんか照れくさいんですよね。どんな話を作ったところで、結局、ラブロマンスや恋愛ものは、僕の体験がもとになってしまうので。みなさんもそういうふうに観るでしょうし。『あいつは、あんなふうに口説いているのか』『あんなふうに女の人と接しているのか』とか思われるのがすごく恥ずかしいから、なるべく避けてきたというのはあります」
「情けない部分とか弱い部分。そこも含めて、血の通った男性像になったかなと思います。予告編だけ観ると、ふざけきっているように見えるかもしれない。『三谷、どうした? もうあいつは(向こうに行ったっきり)戻ってこないんじゃないか』と思われるかもしれない。ただ(映画自体は)意外と、登場する人物はリアルだし現実的。宇宙人ということで多少、地球人と違う部分はあるにせよ、かなり等身大の身近な物語になっていると思うんです。窓外が宇宙でなければ、(舞台は)新宿でもいいんじゃないかっていうくらいのお話は目指しました」
「あのドラマも、今回の男たちも、みんなちょっとさみしい人たち。僕のなかの宇宙のイメージって『さみしさ』なんですよね。だから、勝手にハマるんじゃないかと思って作ったんです。華やかさとか派手さとか、スペクタクルな宇宙モノはたくさんあるし、それは僕にはできることではないので、そうじゃない自分ができる宇宙の話といったら、こういうことに落ち着くんだと思うんです」
普段なら絶対やらないことにアタックしてみた
「僕は『ワン・フロム・ザ・ハート』が大好きなんですけど、そのフレーズはプロデューサーの前では禁句になっていて。あの映画は、興行的には決して成功とは言えないので。毎回、ああいう感じでいきたいと言うと、みんな青ざめるんです(笑)。いつも映画をやるときに、僕なりに『僕が作る映画ってどういうものなんだろう』『僕しか作れないもの、僕が作らないといけないものはどんなものだろう』というところから考えるんですけど、今回はわりとそういうところを取っ払ってしまって、普段、自分が舞台でやっている世界観をそのまま持ってきた、というところがあるんです」
そう、これはいろいろな意味で「大人の映画」。ある宇宙人は「受精から出産まで30分」という摂理を生きており、だからこその大騒動も起こる。そうした様々なルールの交錯も、お愉しみの可能性を拡張している。
「生きものはそれぞれルールが違うわけで。人間だけのルールで考えちゃいけない(笑)。たとえば『清須会議』のときは、僕以上に歴史に詳しいスタッフもたくさんいらっしゃった。その人たちの知恵を借りながら作っていったんですけど、今回に関しては、僕よりも『この世界を知ってる人』は誰もいないわけで。そのサジ加減は全部、僕次第だった。プレッシャーも怖さもありましたが、そのぶんおもしろかったですね」
こんなことを言っては申し訳ないけど…
「僕は脚本家だし、脚本家が作った映画というスタンスは崩れないし、崩さないつもりではいるんですけど、それ以前に自分はいち映画ファンだという割り切りが、どこかでできたんだと思うんです。自分が楽しんできたいろいろな映画を再構築していく。これだけいろいろな人が関わっている映画で、こんなことを言っては申し訳ないけど、ある種、趣味みたいなところがありますから(笑)。時代劇もやってみて、SFもやってみて、ミュージカルもやってみたいし、無声映画もやってみたいし、戦争映画もやってみたい。自分がいままで観てきたジャンルのものを、自分なりに崩して再生産する。そういうことが楽しくてやっているのだと思います」
「それは、アーティストとしての自分の向き合い方ではなくて、もっと全然別なところにあります。今回も、美術、衣装、小道具、アニメーターの方々にせよ、みなさんすごく楽しんで作ってくださって。なぜかというと、こういう映画があんまりないから。たとえば、ハンバーガーショップをまるまる一軒作っちゃうみたいなことはなかなかない。それは僕の映画だからできるんだ、とおっしゃってくださった。衣装も現実的ではない、でも、あんまり突拍子もないわけじゃない。そういうところで作っているのは僕ぐらいだとおっしゃってくださるんです。そういう話を聞くと、またこの人たちのために、またこういうことをやりたいなと思うんですよね。ひょっとしたら、そういうところに、自分の居る場所があるのかなと思ったりします」
(文:相田冬二/撮り下ろし写真:鈴木一なり)
作品情報
今日も、様々な星から宇宙人たちが「ギャラクシー街道」にやって来る。みんな、それぞれに悩みを抱えた、人間味あふれる異星人だ。
街道の中央にひっそりと佇む、小さなハンバーガーショップ、サンドサンドバーガー・コスモ店を舞台に、そこで働く人々と、客たちが織りなす、宇宙人模様。登場するのは、スペース警備隊、スペースヒーロー、スペース客引き、スペース娼婦、スペースドクター、スペース役人、スペースシンガーに、スペースパートタイムのおばさん……全員、宇宙人――。
脚本と監督:三谷幸喜
キャスト:香取慎吾 綾瀬はるか
小栗旬 優香 西川貴教 遠藤憲一 段田安則
石丸幹二 秋元才加 阿南健治 梶原善 田村梨果 浅野和之 山本耕史
大竹しのぶ 西田敏行
公式サイト:http://galaxy-kaido.com/(外部サイト)
三谷幸喜監督インスタグラム:https://instagram.com/mitanikoki/(外部サイト)
2015年10月24日 全国東宝系にてロードショー
(C)2015フジテレビ 東宝