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エンタメシーンを席巻する福田組 俳優のうまみを引き出す福田雄一とは

端役ながらドラマや映画など数多くの作品に出演し、そのインパクトのある演技がしっかりと爪あとを残している、芸人も顔負けの存在感を放つ個性派俳優のムロツヨシ、佐藤二朗。いまやこのふたりをエンタメシーンで見かけぬ日はないほどの活躍ぶりだが、そんなふたりの存在をお茶の間に引き出したのが、演出家、映画監督、劇団座長である、福田雄一氏。ほかにも多くの福田組の常連俳優たちがドラマなどで活躍中だが、テレビ、映画、舞台とシーンを問わず、愛すべきコメディ作品を生み出し続ける福田氏が“コメディの奇才”といわれるゆえんとは?

くだらないをシリアスに、壮大な世界をバカバカしく

 福田コメディのおもしろさとして、まず挙げられるのは、ノリの良いセリフと絶妙な間のテンポだ。加えて、代表作ドラマ『勇者ヨシヒコ』(テレビ東京系)シリーズなどに顕著な、くだらないセリフをシリアスに、壮大な世界こそバカバカしく、と相反する世界観を笑いに変えてしまうスケール感。そんな福田作品のチャームは、福田氏渾身の脚本の強度から生まれている。ドラマや映画を手がける前から『ココリコミラクルタイプ』や『笑っていいとも!』『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)など、人気バラエティ番組の放送作家として活躍してきた福田氏。自身が演出・監督を務める作品の脚本は、もちろん自らの手で執筆する。

 さらに氏のキャリアをひもとけば、1990年に旗揚げした、劇団ブラボーカンパニーの座長として、全作品の構成および演出を担当。オリジナルのコント作品はもとより、ヒッチコックやモンティ・パイソンといった海外の優れた戯曲を自ら脚色するなかで、セリフに対するセンスをブラッシュアップしてきた、舞台演出家としての顔も持つ。数々のバラエティ番組や舞台で磨いた腕を活かした、珠玉のセリフの数々が、福田脚本にはちりばめられているのだ。リハーサルや撮影現場で実演する、福田監督の芝居のうまさに、舌を巻く俳優の声をよく耳にするが、脚本を練り上げる段階から、誰よりも作品世界を熟知しているからこそ、なし得る技である。

二枚目俳優たちから引き出すはっちゃけた演技

 とはいえ、ひとたび撮影現場に入れば、考え抜かれた脚本には執着せず、現場で俳優から発信されるアイディアに柔軟に対応する懐の深さもまた、福田演出の妙味である。福田監督の大きな笑い声が原因で、撮り直しになることもあるほど、福田組では笑いが絶えないのだとか。何でもおもしろがれる、監督の度量の大きさが、肩の力を抜く心地よい笑いを生み出している。それは、長年バラエティ番組制作に携わってきた経歴や、マギーと結成したコントユニット・U-1グランプリの活動などを通じて、常に脚本を超えるおもしろさに挑戦する、笑いに対するストイックな姿勢の賜物と言えるのかも知れない。

 そんな福田監督の笑いへのこだわりを肌で感じるからこそ、彼の無茶ぶりに、俳優たちは嬉々として応じるのだろう。『33分探偵』(フジテレビ系)の堂本剛や映画『大洗にも星は降るなり』の山田孝之、『勇者ヨシヒコ』シリーズの宅間伸、『アオイホノオ』(テレビ東京系)の柳楽優弥など、それまで二の線をひた走ってきた二枚目俳優たちから、はっちゃけた演技を引き出す。そして一度福田組に参加すれば、堂本や山田をはじめ、何度もタッグを組む俳優の多いことからも、監督への厚い信頼を感じる。

 そんな福田氏の最大のすごさとは、俳優のうまみを吟味する、目利きとしての鋭さである。すっかり福田組の常連となった、個性派俳優のムロツヨシや佐藤二朗の、芸人も顔負けの存在感を引き出したのも、福田雄一である。シリアスからコメディまで、幅広く活躍する実力派女優・水川あさみの才能をいち早く見極め、彼女に『33分探偵』で初めてコメディエンヌの役どころを振り当てた功績も然り。喜劇が少ないと言われる日本で、『勇者ヨシヒコ』シリーズの木南晴夏、『アオイホノオ』の山本美月、映画『HK/変態仮面』の清水富美加ら、一流のコメディエンヌを発掘してきた福田氏の才能には、頭も体もよく切れる、若きコメディエンヌたち同様、まだまだ伸びしろがあると見た。今後“コメディの奇才”どんな世界を生み出すのか、興味が尽きない。

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