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一般車と何が違うの? マツダ教習車ナビ
イマドキの教習車は「かっこいい」&「走りやすい」が基本
販売市場が縮小し、教習車から撤退するメーカーも見られる中、「初めて乗る車だからこそ、走る歓びを伝えたい」と、同社は今なお教習車の製造&販売に力を注いでいる。2014年は、モデルチェンジした新型のアクセラ教習車を投入したこともあって、シェア49%となる1400台以上を販売。現在は全国500以上の学校でマツダ車が使用されているという。
自動車学校にとって、車の購入は最大の肝であり大きな投資になる。そのため、入念に吟味を重ねた上で購入車を決定する学校が多いはずだが、その中でマツダが支持されている理由のひとつに、デザイン性の高さがある。同社は2010年秋、デザインテーマを世界最速の動物・チーターを象徴とする「魂動(こどう)」に統一し、以降発表した車はどれも世界的に高評価。2013年にフルモデルチェンジしたアクセラ(一般車)は、『2014 ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー』および『2014 ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー』のトップ3に選出されている。
千葉県の船橋中央自動車学校では昨夏、「これからの時代は、教習所もサービス業として生徒の期待に応えるべき」と、40年ぶりに他メーカーからマツダの教習車に変更。すると、生徒の大半を占める若者から「かっこいい」、「スポーティな教習車で嬉しい」と大人気だったという。昔は教官が教えやすい車、生徒が運転しやすい車を最優先していたというが、時代とともに選定基準も変化。小杉信二次長は、「デザイン性と走行性に優れ、機能性も十分に高いアクセラは我々のニーズにぴったりマッチしました」と満足気に語る。
教習車と一般車の違いを探っていこう!
Zoomポイント
フルラインアップで、一般車と同じように好きなカラーをチョイスできる。ちなみに、一番人気は5割近くを占める「ソウルレッド」。
【2】仮免ホルダー
仮免ホルダーは、地面から40cm上に設置するという基準がある。ヘッドライトなどの照射エリアにかぶらないように、かつベースとなる車両のデザインを損なわないように開発を重ね、フロント面は横置き、リア面は縦置きのレイアウトに。
普通のサイドミラーと同じ大きさにしてしまうと、運転席から見た時に邪魔になってしまうため、最適なサイズと配置を追求。クリアな後方視界で、安心安全な教習運転をサポート。ちなみに、一般車のサイドミラーの中には、指導員用のミラーを付けるための台座が隠されているんだとか。
雨の侵入を抑え、雨の日でも快適に教習ができるバイザー。標準よりかなり幅が広いものが付いているが、そうするとどうしても風の騒音が問題に。そこで、一般車と同じレベルの基準値が求められる空力風道試験を入れながら、どこまで違和感なく音を防げるかを追求。
車両感覚の把握をサポートするポール。候補カラーはグリーン、白、透明、オレンジと4色あったが、最終的に昼間も夜間も見えやすかった緑を採用した。
教習所では教官や生徒さんがブレーキを踏む機会が多いため、電球切れやバルブの寿命に配慮して、ブレーキランプにLEDを採用。同じく、ハイマウントストップランプにもLEDを使用しているそう。
一般のアクセラは、同社独自の環境技術「スカイアクティブテクノロジー」のエンジンを積み、MT&AT共に6速トランスミッションを搭載している。しかし、教習車は運転に馴れていない教習生にそこまで操作をさせたくないという思いから、マニュアル車5速、オートマ車4速のMZR1.6を採用。エンジンルームはハイブリッドエンジンが積める広さで、オイルやバッテリー液量の確認など始業点検にも役立つ。
教習車専用のボディーパネル
一部専用のボティーパネルを使用している。リアのフロアパネルは、第4のエンジンとなるLPガスのボンベを積むためで、LPガスタンクを持っている教習学校などのために、ガソリンとLPガス両方を設定できるようになっている。
一般車のアクセラと同じ仕様で、快適な乗り心地が味わえるドライビングポジションを実現。また、教習車は正しい運転を学ぶためにブレーキが踏まれる機会が多いが、タイヤが動きながら止まるアンチロック・ブレーキ・システムを搭載することで、安全に停止できる工夫をしている。
【9】運転席フットランプ
運転席の足元を照らすランプ。夜間教習時など、生徒が正しくブレーキやクラッチを踏んでいるか否かが確認しやすい。
快適なドライビングポジションを教官席にも採用、足を置くフットレストとブレーキペダルを最適な位置にレイアウトしている。体のひねりをなくしつつ、教官の長時間乗車を想定して左足を延ばせるように、通常よりも左足のフットレストを20mm外側に出しているのがポイントで、1日約11時間も車に乗っているという教官をアシスト。とっさの時にも左足でしっかり踏ん張れるため、右足で素早いブレーキ操作が可能で、長時間乗っていても疲れにくいと好評なんだそう。
さまざまな体型の教習生や教官に対応。上下に動く操作しやすいリフターで、自分に合ったポジションを簡単に見つけることが可能。
【12】リアシートセンターアームレスト
4人乗者などの複数教習の際に、プライベート空間を確保することができる。わざと教本を置いて空間を分ける場面があったという声に応えて導入したんだとか。
スピードメーターやウインカー、ハイビームなど、教官が知りたい情報と操作したいスイッチ類を集約。埋め込み式でデザインに一体感があるだけでなく、快適な操作性も備えている。スピードメーターの液晶画面は、教習生の集中力を欠かさないためにも、教官にだけしか見えない作りに。また、後部座席からも画面が見えにくいよう小さくなっていて、複数教習の際、後ろに座った生徒さんからスピードの指摘をされる心配もなし。
見やすい縦2連式。防眩ミラーを採用することで、夜間でも後方確認が適切に行える。
一般車のアクセラには付いている、フロントタイヤ前のスプラッシュシールドという空力パーツが、教習車には付いていない。段差乗り上げ教習の際に擦ってしまうことが多いため、耐久性なども考えて排除している。もちろん、空力関係で問題ないことは確認済み。
坂道発進の補助機能の非採用
最近は、上り坂での停車再発進をサポートする機能が付いている車が多いが、正確な坂道発進を覚えてもらうため、あえて補助機能を搭載していない。
一般車と同様、ハンドルを軽くしてくれる電動パワステ機能が付いている。運転に不慣れだと駐車や車庫入れの時、車の停止中にハンドルを操作する「据え切り」をしてしまいがち。するとモーター熱が上がってしまうため、普通は連続据え切りをした場合は、車が独断でパワステのアシストを解除しシステムを守る構造になっている。マツダでは、力いっぱい据え切りをした時に電流を下げることで、モーター熱が上がらないよう工夫し、連続据え切りをした時でもスムーズな運転が可能に。
!教習車で開発したシステムを一般車にも採用!
この連続据え切り操舵対応は、教習車作りの現場で生まれた技術だが、後にその制御が運転馴れした人がやるような速い操舵と両立できることが判明。結果、教習車発のアイデアが今では“共通の技術”として、一般車にも採用されているんだそう。
教習車の乗り心地は? 教官気分を味わってみた
教習車を開発する時は、教習学校などに足を運びヒアリングしながら行うことが基本姿勢だというマツダ。“現場の声”を大切にしているからこそ、教習生はもちろん教官にも、走る楽しさを発信できているのではないだろうか? 同社では引き続き、教習車作りに注力していく方針。今後、どれだけ快適でかっこいい車が誕生するのか、開発陣の匠の技に注目したい。