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日本アカデミー賞 「持ち回り」の誤解を生む、映画賞の“性格”

  • 『第38回 日本アカデミー賞』の司会を務める西田敏行、真木よう子

    『第38回 日本アカデミー賞』の司会を務める西田敏行、真木よう子

日本映画の発展、振興にその年に寄与した作品、キャスト、スタッフを表彰する『日本アカデミー賞』。昨年の北野武監督による「大手映画会社の持ち回り」発言、それに対する日本アカデミー賞協会・岡田裕介会長の「厳正な投票による」という反論もメディアを騒がせていた。そんななか、映画ジャーナリストの大高宏雄氏は「“持ち回り”という誤解」と見解を示し、同映画賞の“性格”を綴る。一方、投票を行う会員が年間で観ている作品数について、映画賞の原則を交えながら言及する。
  • 北野武監督

    北野武監督

  • 『第38回 日本アカデミー賞』優秀賞発表記者会見に出席した同協会会長を務める岡田裕介氏(C)ORICON NewS inc.

    『第38回 日本アカデミー賞』優秀賞発表記者会見に出席した同協会会長を務める岡田裕介氏(C)ORICON NewS inc.

◆「3社の持ち回り」とは言えない
 今年で38回目を迎える『日本アカデミー賞』の授賞式が、2月27日開催される。映画界の肝入りでスタートした国内最大の映画賞である。映画関係者で構成される日本アカデミー賞協会の会員が選出する。その数、約3900人。

 会員は、年会費2万円を払い、映画が無料で見られる会員証をもつことができる。会員は、このフリーパスを利用。映画を観て投票するというわけだ。ただ一部の劇場は、この会員証が使えないところもある。

 この映画賞に、いろいろ言う人がいる。その代表が北野武監督だ。昨年、東京国際映画祭の会場で、こう発言した。最優秀賞が「大手映画会社3社の持ち回りで決まっている」。今年、同映画賞の会長である東映の岡田裕介氏がその発言に反論した。「これほど厳正な投票によって行われているものはない」。

 「持ち回り」を意味する最優秀作品賞受賞作品を配給する会社を調べてみた。2000年以降では、松竹6回、東宝5回、東映1回(以上、大手3社)、他社2回。これを指して「3社の持ち回り」と言えるかどうか。言えないと思う。

 ただ私は、こう考える。「持ち回り」という“誤解”の源は、邦画3社が主導しているこの映画賞の“性格”そのものにあるのではないかと。大手主導だから、大手の作品が入る。不特定多数の人の投票だから、「厳正」なのだが、比較的そう見られやすいということだ。

 それと、投票の人数も影響しているだろう。会員の3分の2程度の3000人近い人が投票するというが、これだけの人数の投票になると、よく知られた、つまり大手映画会社の作品が並ぶ最大公約数的な結果が出てしまうのが普通なのだ。これは、こと映画賞にかぎったことではない。

◆幅広い層に訴求できる日本アカデミー賞の意義
 では、その“誤解”をどうするか。投票する会員の人たちの自覚が大事だと思う。映画賞に参加するには、多くの映画を観る必要がある。これができていない人は、投票を差し控えるべきだと私は思う。

 無料で見るだけではなく、お金を払って(これは当たり前のこと)、会員証が使えない劇場で上映されている独立系の作品も、ある程度フォローすることが望ましい。他の映画賞は、選考委員が年間で100本、200本以上観るなかから投票を行うのが原則だ。日本アカデミー賞は、そのあたりがよくわからない。

 とはいえ、テレビ中継もあり、劇場で大々的に宣伝も行われている国内の映画賞は、日本アカデミー賞だけである。映画を観ない、あまり知らない人たちに向けた映画賞という側面は非常に大切だ。それは、幅広い層に向けた映画の認知に大きな効果があるからだ。

 映画賞で、バランスある選考は非常に難しいものだが、日本アカデミー賞は、独立系作品にも目配せができている雰囲気をかもし出してほしい。そうなると、支持者が増え、受賞者の喜びもひとしおということになる。
(文:映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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