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アイドル界に乱立する“ポスト橋本環奈”に辟易?
【特集】橋本環奈らを輩出するアイドル量産地・福岡、良質な人材が生まれるワケ
【インタビュー】橋本環奈、Rev.from DVLのメンバーは「味方でいてくれる存在」
“1000年に1人”は“1年に何人”も出てこない
ひとつには「奇跡の1枚」当時、中央ではほぼ無名だった彼女が、ネットでいきなり“発掘”された衝撃が大きかった。まさか福岡のローカルグループにこんな美少女が!? という。その衝撃が“1000年に1人”の枕言葉に乗って自然発生で拡散した。この「奇跡の1枚」の少し前に東京でのアイドルイベントにRev.from DVLをブッキングしたあるイベンターは「そのときはファンが特に多くもなく、集客にあまり結びつかなかった」と話す。写真1枚と言葉ひとつで、いかに急速に火がついたかを物語る。
さらに、テレビなどメディアに橋本環奈本人が出ると、彼女が“使える”ことがわかった。外見は清楚な美少女だが、話すと声は意外に低くてハスキー。あっけらかんとしたキャラクターで、よくしゃべる。「好きな食べ物は梅干し。あっ、イチゴにしておいてください」など、美少女ぶりとのギャップでおかしく感じる。ブログにRev.メンバーの似顔絵を上げると、どう見ても似てないヘタさでファンの失笑を買い「一生懸命描いたのに」と嘆いたり。
そうしたギャップが持ち味なのに加え、人気が出てからもまったく態度が変わらない。カメラが回ってないところでも偉ぶった様子は見せず、人懐っこく自分から話し掛けて来る、“1000年に1人”とは裏腹の親近感もブレイクの要因。美少女だけなら他にもいるが、ストーリー性やキャラクターが絶妙に結びついてのものだった。
“第二の○○”は、ネット発での有効なキャッチフレーズ
これはネットニュースのスタンスが影響している。今や世の話題はネットが発信源になることが多く、配信側はクリックして読んでもらうために、ヘッドラインで興味を引くことが重要。「注目の美少女アイドル」だけでは弱く、「第二の橋本環奈」と打ち出した方が遥かに有効だ。時にフライング気味だとしても……。“ポスト橋本環奈”として名前が上がっている面々は、それぞれ可能性を秘めたアイドルだけに、実際は橋本環奈と並べて語るのが必ずしも的確とは言えない。
武田舞彩はエイベックスのアイドル専門レーベル「iDOL Street」に所属するGEMのメンバーで16歳。SUPER☆GiRLS、Cheeky Paradeに続き、昨年元日にメジャーデビューしたが、予備軍のストリート生としては2011年から活動していて、東京のアイドルファンには橋本環奈より先に知られていた。以前は元フジテレビの中野美奈子アナ似と言われていたが、目がパッチリしてキラキラした美少女感は、確かに橋本環奈と通じるところもある。福井県出身で、より素朴さを感じる。GEMは歌やダンスのスキルが高いメンバーを集めて“デキるアイドル”の異名を持つ。その中で武田はセンターでパフォーマンス力は高い。5位を獲得した最新シングル「Star Shine Story」のミュージックビデオでは、ドラマパートの主人公を1人2役で演じていたりも。それでいて周囲には「まぬけ」と言われるキャラだそうだ。話すと「仕事に行くときに忘れ物に気づいて取りに帰ったら、最初は持って出た衣裳の靴を置いてきてしまった」といったエピソードが次々に出てくる。橋本環奈はヴィジュアルとキャラクターにギャップがあるが、武田舞彩はおっとりしたキャラクターは見た目そのままで、それがステージでのハツラツとしたパフォーマンスと良いギャップになっている。
マーシュ彩はアイドルグループWhite Laceのメンバーで、アメリカ人の父親を持つハーフの14歳。昨年夏に講談社主催のアイドル発掘オーディション「ミスiD」でファイナリストとなって注目された。キラキラ感のある美少女という大括りでは、やはり橋本環奈に通じる。一般には無名状態からネットで話題が広がったのも似ているが、ヴィジュアル先行で本人がどんなキャラクターなのかはまだ浸透していない。そのぶん、未知なる興味を引かれる。
それに対して吉田凛音は、橋本環奈と本質は違うタイプだ。北海道の芸能スクール所属の14歳。小学生の頃から地元のアイドルグループのメンバーになり、卒業してソロで活動。昨年2月には『関ジャニの仕分け∞』(テレビ朝日系)のカラオケ対決に“歌うまキッズ”として出演。ファイナルステージでMay J.に敗れたものの、抜群の歌唱力で注目された。11月には西寺郷太(ノーナ・リーヴス)のプロデュースでメジャーデビューしている。ソロということもあり、美少女感より早熟の歌が本来の売り。ただ、福岡出身の橋本に対して北海道出身ということで、キャッチフレーズとして“北の橋本環奈”がハマった。
“第二の橋本環奈”とは、実質的に“期待の新人アイドル”をネット仕様で変換したぐらいの意味でしかない。知られる取っ掛かりにはなっても、橋本環奈に続いてブレイクするには“第二の橋本環奈”でいては逆に難しい。美少女なのはわかったうえで、橋本環奈がそうであったように、独自の物語と個性を発揮してくれることに期待したい。
(文:斉藤貴志)