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【編集長の目っ!】“新しさをまとった過去”…極上のユーミンメロディにシビレる

ユーミン渾身の一枚は、
メロディ達がキラキラ輝いている。


 ユーミンこと松任谷由実の約3年ぶりのオリジナルアルバム『そしてもう一度夢を見るだろう』が、4月8日(水)に発売される。1stアルバム『ひこうき雲』(73年)から通算なんと35枚目のオリジナルアルバムだ。

松任谷由実 

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 個人的にもユーミンは大好きで、特に大学時代、80年代はユーミンの音楽がいつもそばにあった。いや、いた。あの頃はユーミンの発売日にはアルバムを「買わないといけない」という気持ちになった。たぶんそう思っていた人は多いはずだ。聴いてないことがなんだか恥ずかしい、そんなファッションのひとつにもなっていたし、きっとユーミンメロディの中毒になっていたんだと思う。

 アルバムを出せば常に100万、200万枚という時代が続いた。確かに90年代後半からは、数字的には一時期の勢いがなくなってきてはいるが、ユーザーの音楽への接し方や、趣味嗜好の変化などなど……刻一刻と劇的な変化を続けるマーケットの状況の中で、逆にクオリティの高い作品を作り続け、そして30年以上発表し続けているその“生産力”に改めて敬意を表したい。もちろん素晴らしいライブを提供し続けてくれていることに対しても。

 そんなユーミンが今回の作品について「本人としては、粛々と作り続けてきただけなんですけどね。クリエイトすること自体、苦しみの連続。ニューアルバムを出すまでに、結局3年かかってしまったし。と同時に私自身は今回の新作を機に“一山越えたかも”という実感があって」と語っている。

 新作を聴いた第一印象は、80年代の肌触り。どこか懐かしい匂いがする。「自分の見方、考え方によって“新しい過去”を手に入れることができるんだ。そんな実感があったんです。経験を積んできたことによって“これはもう、1回やっちゃったことだから”と済んだことにしていたものが、今回「ピカデリー・サーカス」のような曲を書けたことを通じて、呼び寄せた。過去って必ずしも“古い”だけじゃない。自分次第で、新しくなるんだと」。視線の先に“過去”という時間を捉え、様々な“過去”の空間に時間旅行をして、そして新しい何かを感じ帰ってくる、そんな“旅”が今回の作品のテーマになっている。

 “80年代の肌触り”にしてくれているのは、ミックスがアル・シュミットであることも大きいのかもしれない。ジョージ・ベンソンスティーリー・ダンTOTOレイ・チャールズらの数々の名盤を手がけた伝説のエンジニアが、進化したユーミンサウンドを作り上げている。

 アーティスト本人の中での流行や考え方、その時のユーザーの趣味嗜好、そして時代の気分に合っているのかどうか、色々な状況が重なった中でヒットは生まれると思う。そんな中でも荒井由実時代からを含めると30年以上、トップを走り続けているアーティストはそうはいない。「過去って必ずしも“古い”だけじゃない。自分次第で、新しくなるんだ」という言葉には、ロックスピリットを感じるし、そんなユーミンが出した“今”の答えが今回のアルバムだ。ポップスの女王的存在と見られているが、その考え方やサウンドに関しては、思い切りロックなユーミンだ。

 今回のプロモーションはひと言でいうと“ハンパない”。本人の露出もTV、雑誌他含めて相当量だが、ひとつひとつの出方、見せ方に徹底的にこだわっていて、本人そしてスタッフの、このアルバムへの並々ならぬ想いを感じる。

 キャリアを重ねていくということは、次代を担う才能のための種をまいていることだと思う。現在のシーンを担っているアーティストの中にも、ユーミンに大きな影響を受けているアーティストは少なくない。そんなアーティスト達が集まり、ユーミンのロックカバーを完成させた。『shout at YUMING ROCKS』は椎名林檎スピッツいきものがかり他のアーティストが“ロック縛り”でユーミンの曲を“叫んでいる”。『そしてもう一度夢見るだろう』と同じ4月8日に発売される、こちらも注目だ。


 松任谷由実椎名林檎スピッツ

ユーミンが丸の内に登場、OL変身願望明かす(09年03月24日)

⇒ 『編集長の目っ!!』過去記事一覧ページ 

関連写真

  • 松任谷由実 
  • 松任谷由実の約3年ぶりのオリジナルアルバム『そしてもう一度夢を見るだろう』 
  • ユーミンをロックカバーしたアルバム『shout at YUMING ROCKS』 

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