俳優の杉咲花が映画『市子』(12月8日公開)で演じるのは、3年間一緒に暮らしていた恋人からプロポーズされた翌日、突然失踪してしまう川辺市子。映画は、市子の恋人・長谷川が、彼女を探す過程で、名前を変え、年齢を偽り、社会から逃れるように生きてきた市子の抗えない境遇に翻ろうされた壮絶な半生が明らかになっていく。 監督を務めた戸田彬弘が主宰する劇団チーズtheater旗揚げ公演作品『川辺市子のために』を映画化。来月4日から開催される第28回釜山国際映画祭のコンペティション部門のひとつ、ジソク部門に正式出品されることが決定し、そこでワールドプレミア上映される予定になっている。 3年間一緒に暮らしてきた恋人・長谷川(若葉竜也)からのプロポーズに、涙をこぼし喜ぶ市子(杉咲)。しかし、誰の目にも幸せに見えた彼女は、その翌日に忽然と姿を消す。途方に暮れる長谷川が失踪届を出すと、現れた刑事・後藤(宇野祥平)から思いもよらぬ事実を聞かされる。「川辺市子さん。この女性、存在せえへんのですよ」――。 ひとり残された市子の恋人・長谷川は、刑事の後藤とともに、これまで市子に関わってきた人物たちを探し当て、訪ねていく。市子と同じ団地で育った幼なじみ・さつき(大浦千佳)、市子に好意を寄せていた高校時代の同級生・北(森永悠希)、新聞配達をしながら同じ下宿で生活していたかつての同僚・キキ(中田青渚)。 「同い年だと思っていたのに違ったみたいで。年齢、嘘付いてたと思うんですよね」と語るさつきは、鮮烈に焼き付いた幼少の記憶を手繰り寄せる。市子を新聞配達に誘ったキキは、彼女に声をかけた時のことを思い出し「市子ちゃん、ホームレスみたいに夜中に毎日ウロウロしてたんです」と打ち明ける。 「川辺、突然いなくなってしまって…」高校時代、市子に片思いをしていた北の自宅に押しかけると、彼は何か隠している様子も…。数々の証言を組み合わせることで浮かび上がってくるのは、彼女の底知れない人物象と誰も想像し得なかった切なくも衝撃的な真実だった。 市子はなぜそのような人生を歩まなければならなかったのか。長谷川との幸せな暮らしを捨てででも、彼女が手に入れたかったものとは――。「ものすごくシンパシーを抱いて、脚本を読み終えてすぐ『絶対にやりたい』と思いました。」と出演を決めたという杉咲。これまでも演技力に定評があった彼女だが、本作ではその期待を遥かに超える圧巻の演技を見せてくれそうだ。
2023/09/22
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