チケットの日付は3月21日。それは本来このライブが開催されるはずの日であったが、3月11日に起こった東日本大震災により延期を余儀なくされ、さいたまスーパーアリーナは福島の方々の避難所になっていたことも記憶に新しい。
3月21日はまた、福山のデビュー記念日でもあった。
「本当はデビュー日にここでみなさんにお礼を伝えるつもりでした。22年目に突入しました。ありがとうございます!」
チケットに刻まれた日付、それから8ヶ月遅れで実現したさいたまスーパーアリーナでのツアーファイナルは、改めて当時を思い起こさせたのと同時に、ライブに込められた様々な想いを深く感じさせられるものとなった。
ステージは360度どこからも見通しのよいシンプルな作り。震災以降、当初今ツアーの目玉にしていた大きなセットを取り払い、バックステージにも席を設けたのだという。福山本人が、そこが“東日本応援シート”であることを告げると、温かい拍手が沸き起こった。このシートの収益金は全額が被災地に寄付される。
ライブはインスト曲「vs.〜知覚と快楽の螺旋〜」から。福山はギュンギュンと歪んだ音を唸(うな)らせてバンドセッションを楽しみ、グルーヴィーで爽快にスタートした。
「それがすべてさ」や「明日の☆SHOW」など、歌モノではたびたび歌詞が大スクリーンに表示され、歌詞のメッセージが強調されるのと同時に“一緒に歌って!”とのメッセージがあるのだなと感じられた。もちろん2万人の観客は歌を口ずさみ、両手を頭上で揺らしながら、福山が伝えたい想いをしっかりと受け止めていた。
「いつも以上に力強いパフォーマンスでお届けしたいと思います!」。2万人の視線が集まるパワースポットのど真ん中のセンターステージでは、歌はもちろんシャレと機転の利いたMCでも会場がひとつとなった。楽しいだけではなく、福山がナビゲーターとして出演するNHKスペシャル番組『ホットスポット 最後の楽園』から、今年を象徴するようなエピソードも語られた。
それは、仙台の沿岸部にある蒲生干潟に飛来する天然記念物の渡り鳥の話。毎年鳥たちが繁殖をする場所の草木が今回の震災による津波で無くなってしまったが、この夏、数こそ多くはなかったがサギたちが舞い降りたのだという。
「自然の営みには人間が手を出すことのできない神秘的なものであると改めて思いました。ならば“地球の大自然とどう共存していくのか?”“やることは何なのか?”考え続けることが大事なのだと思います。」
そう言って披露した「アンモナイトの夢」は、福山のギターを主旋律とするインスト曲。アコーディオンと生ギターが印象的な演奏の中、映し出された映像は、アンモナイトが見てきた地球上のさまざまな命の物語。壮大で神秘的なひとときだった。続く「群青」で、青い地球をバックに歌う福山。この歌は、今まで聴いてきた以上に大きなラブソングとして心に刻まれた。
刻まれたといえば今回のツアーで福山は、様々な自己記録を更新したらしい。まずは自己最多の19都市56公演、総動員数60万人超、総移動距離約2万5000km(地球の真上から真下までの距離らしい)、トータル演奏時間120時間超。これは丸5日、1299曲分…と報告し、1300曲目の「fighting pose」へ突入。ここから体感温度も心の熱も急上昇していった。
福山雅治という男は、セクシーにも熱い男にも、爽やかにも、少年にでもどこにでも行けるベクトルを持っている。殊に2人のギタリストと笑顔を交わしながら演奏するギターキッズの顔は最高。「このステージに歌声を届けて!」と煽った「少年」は、最初から大合唱となった。本編ラストの「心color〜a song for the wonderful year〜」も、もちろん大合唱。心が温まり、自然と笑顔がこぼれる。福山も思わずスキップ。メインステージからセンターステージまで走ってきて、360度に“心から”歌声を届けていた。
アンコールでは、愉快なバンドメンバーが廻ってきた全国の地名を乗せた「第九」サンバVer.で福山にサプライズプレゼント。「聞いてなかった!」と驚く福山。メンバーが去ると「もう1発やりますよ!」と、1人でギターを抱え、「道標」を弾き語りで聴かせてくれた。
全24曲を歌い終えたあと、震災後に設置された募金箱には、今日までで約2200万円が集まったことが報告された。
「震災後に、エンターテインメントにできることを考えてきました。そして今を生きる人間として、自分の仕事、与えられたことを全うすることこそが大切なんじゃないかと思いながらこのツアーを再開し、続けてきました。その中で“音楽にできること”の答えを、みなさんに教えていただいた気がします。本当にありがとうございました。その答えを持って、これからも音楽を続けていこうと想いを新たにしました。」
音楽に対する情熱、復興への想い、ファンへの感謝の気持ち、すべてが真摯に伝わるライブだった。私たちはこの日感じた想いを明日からの日常に持ち帰り、「今までやってきたことを今まで以上にやっていく」ことが大切なのだと思う。
(文:三沢千晶)
- FUKUYAMA MASAHARU WE’RE BROS. TOUR 2011 THE LIVE BANG!!
11月20日(日)@さいたまスーパーアリーナ セットリスト
01.vs.〜知覚と快楽の螺旋〜
02.THE EDGE OF CHAOS〜愛の一撃〜
03.想-new love new world-
04.それがすべてさ
05.HELLO
06.明日の☆SHOW
07.milk tea
08.MELODY
09.虹
10.Heart
11.はつ恋
12.アンモナイトの夢
13.群青
14.fighting pose
15.逃げられない
16.Revolution//Evolution
17.HEAVEN
18.RED×BLUE
19.化身
20.少年
21.心 color 〜a song for the wonderful year〜
EN1.家族になろうよ
EN2.追憶の雨の中
W EN.道標