
桜井和寿は「みんなに喜んでもらいたい」と、新しいアルバムを作る前からメンバーにその想いを伝え、メンバーもその思いを持ってレコーディングしていたのだとか。前作『HOME』は優しい感触を持った作品だったけれど、その反動で例えば重厚なメッセージを持ったアルバムや実験的な作品へと向かうこともできただろうし、それこそこれまでのMr.Childrenならば、そういう方向に向かうんじゃないかと予想できたかもしれない。けれども、彼らはみんなを喜ばせたかった。自分たちの音楽をいつも愛してくれるみんなに、Mr.Childrenとして感謝の気持ちを届けたかった。だから彼らは昨年行った全国ツアーの合間にも、全国ツアーが終わった直後からもレコーディングを行っていた。そこで生まれた音楽がみんなの待っているシングルや新しいアルバムへとつながっていったのだった。
アルバムの1曲目を飾る「終末のコンフィデンスソング」は、Mr.Childrenのアルバムには珍しく(!?)、それこそドライブミュージックのように気軽な気持ちで聴ける曲。この曲を1曲目にしたというだけでも、「あれ?ちょっと今までのアルバムとは何か違うんじゃない!?」と思ってしまうはずだ。また、「エソラ」や「声」や「ロックンロール」など、今回のアルバムには音楽にまつわる言葉が歌詞にいくつも登場している。例えば、メロディーライン、リズム、ロック、音楽、唄などなど。彼らの日常生活の中に、他の言葉と何も変わりなくある音楽にまつわる言葉たち。
みんなの生活の中にも、きっとそんな言葉たちはたくさんころがっているんだろう。昨年の夏フェスで演奏していた「少年」、シングル「旅立ちの唄」のカップリング曲だった「羊、吠える」、またシングル「GIFT」に収録されていた「風と星とメビウスの輪」のアルバムバージョン(これがシングル収録曲のバージョンと同じ曲とは思えないくらい変化していて聴きごたえあり!!)と、すでに耳にしていた曲がアルバムの中で新鮮に聴こえてくるのは、きっとその曲たちに“伝えたい”“届けたい”という力があるからだと思う。実際に桜井が水上バスに体験乗船(!?)してから歌詞を書いた「水上バス」、ライブでやったらきっと盛り上がること間違いなし!!の「ロックンロール」。

『SUPERMARKET FANTASY』というアルバムを、パワフルにカラフルに輝かせてくれる曲たちからは、彼らの“喜んでほしい”という思いが充分に伝わり、それを受け止めてくれる一人ひとりが“共有できる歌”になった。お店に足を運んで、自分の買いたいものをカゴに入れ、それらを自分の家に持ち帰る。スーパーマーケットにはたくさんの品物が並んでいて、それらはどれも消費されてしまうものだけれど、手にする品物はその人にとって必要なものだ。
『SUPERMARKET FANTASY』というアルバムタイトルは、ジャケットのアートディレクションをしたデザイナー・森本千絵さんが今回のジャケットを提案したときに付けていたタイトルなんだとか。メンバー以外の人物がアルバムのタイトルを付けるのは、彼らにとっては、初めて。シングルとしてすでに聴いていた曲、ドラマや映画で耳にしていた曲。Mr.Childrenはそれが一時的な流行であったり、もしかしたら消費される品物のような歌であることを知っていても、ちゃんとみんながそれらを手にしていてくれて、生活の中に自分たちの音楽にして、必ず何かを残してくれているんだと信じている。『SUPERMARKET FANTASY』というタイトルは、確かにメンバーが名付けたものではないけれど、彼らの想いをしっかりと刻んでいるタイトルだ。
09年2月からは全国ツアー『Mr.Children Tour 2009 〜終末のコンフィデンスソングス〜』がスタートする。Mr.Childrenのメンバー、小林武史(Key)、ナオト・インティライミ(Cho)という最少人数で奏でられる彼らの音楽が、みんなの生活のなかで鳴り響く――。
(文:松浦靖恵)