福山雅治の久しぶりのオリジナルアルバムがリリースされる。その期間実に5年半ぶり、ということでタイトルも『5年モノ』。この間に発売されたシングルとCMなどで使われた未発表曲を完全網羅。どこかで耳にしたことがある、一度は口ずさんだことがあるメロディーがこれでもかと登場するお得盤だ。5年の歳月を費やした極上のフルコースをお試しあれ!
一口に5年と言っても、その時間の経過は大きい。小学1年生だった人がもうすぐ中学に進もうかという時期になってきているわけだし、冬季五輪、W杯という世界的なスポーツイベントもこの間に2回ずつ行われた。第一、5年前にはいまいちなじめなかった“21世紀”という響きにもすっかり慣れてしまった僕らがいる。ひょっとしたら、5年前には福山雅治の音楽と出会っていなかったという人だっているかもしれない。
この『5年モノ』はそういう人にこそ聴いて欲しいアルバムだ。2003年のトリプルAサイドシングル「虹/ひまわり/それがすべてさ」、2004年の「泣いたりしないで/RED×BLUE」、2005年の通算20枚目のシングル「東京」、そして、今年リリースした4曲入りのバリューシングル「milk
tea/美しき花」までの全収録ナンバーがこの1枚に集結しているのだから(「東京」のカップリング曲「わたしは風になる」はライブ音源での収録)。
さらにこのアルバムには、昨年の15周年記念ツアーのテーマソングとして、会場でしか耳にすることのできなかった「FREEDOM」、明治『XYLISH
歌ガム』のCMソングとしてオンエアされた「BEAUTIFUL
DAY」、『SUZUKI
S×4』のCMでオンエア中の「THE
EDGE
OF
CHAOS
〜愛の一撃〜」という“未CD化音源”が追加されることで、この5年間の福山の全行程を俯瞰できる仕組みになっている。さらにさらに、初回限定盤には新曲がもう1曲プラスオン(ボーナスディスクとして付く)されるので、そちらについては、ぜひ自分の耳で確認して欲しい。

シングルコレクションという特性が強いため、1曲1曲について改めて触れていくことはしないが、このアルバムを聴いて強く感じるのは、福山雅治というミュージシャンは、いい意味でも悪い意味でも“不器用”だな、ということ。前述したように、ここに収められている曲のほとんどがCMやテレビ番組に使われていることもあって耳なじみはあるのだが、通常ならこういうタイアップ曲の場合、数年、いや数ヶ月で鮮度は落ちるものである。にもかかわらず、アルバム全体が古いものから新しいものへとグラデーションがかかったようになることはなく──すなわち、どれもが新鮮に楽しめてしまえることに驚かされるのだ。それは一にも二にも、福山が“流行りのサウンド”とは無縁のところで音を作っているからである。
「今の主流はこの音だから、こういう曲調にしてみよう」なんて打算はこの人には無縁。フォークソングというバックボーンをしっかりと持っている彼ならではの、「バッキャロー、俺は俺の作りたい曲を作るだけよ」という、職人さんのような声が聞こえてくる仕事を見せつけられた思いがする。これだけの美メロを書ける人なのだから、もうちょっと時代に合わせればもっともっとすごい数字を残せると思えるのに、それをしない不器用さがじれったいようでもあり、嬉しいようでもあり。
きっとこれからもこの人は変わらないんだろうなということを再認識させられる、そんなアルバムだ。そういえば、『5年モノ』というのもどこか職人的な響きを感じるタイトルだよな。
(文:田井裕規)