今年最も聴かれたアーティスト・あいみょんを体感した濃密な2時間

「オリコン年間ストリーミングランキング 2019」で「アーティスト別セールス部門」初の1位を獲得したあいみょん

 令和初の『第52回 オリコン年間ランキング 2019』が発表された。今回から新たに発表開始となった「オリコン年間ストリーミングランキング 2019」では、あいみょんが「アーティスト別セールス部門」で初の1位を獲得した。昨夏のアンセム・ソング「マリーゴールド」からの快進撃は多くの人が知るところだが、今年に入ってからもその歩を緩めることなく、「ハルノヒ」「真夏の夜の匂いがする」「空の青さを知る人よ」と次々にヒット作を世に放ち、気づけば今年、最も聴かれたアーティスト1位になっていた。そういう意味でも、『ストリーミングからブレイクした初のアーティスト』の呼び声にふさわしい受賞であったと言えるだろう。

「オリコン年間ストリーミングランキング 2019」年間アーティスト別再生数 TOP10

「オリコン年間ストリーミングランキング 2019」年間アーティスト別再生数 TOP10

■あいみょんストリーミング人気曲が物語る幅広い世代への浸透度

  • (C)永峰拓也

    (C)永峰拓也

 「アーティスト別セールス部門」1位となったあいみょんの対象楽曲は23作。そのなかで最も再生数が多かったのは、前出の「マリーゴールド」(年間再生回数:9547.8万回)、次いで「今夜このまま」(年間再生回数:5367.9万回)だが、初期の代表作「貴方解剖純愛歌〜死ね〜」や「君はロックを聴かない」、今年2月に発売した2ndアルバム『瞬間的シックスセンス』の収録曲の数々、そして最新作「空の青さを知る人よ」まで、これまでのキャリアを彩る様々な楽曲がラインナップされている。ストリーミングサービスの普及によって、これまで知り得ることのなかった人々の音楽の聴き方、つまり何が人気曲なのかも数字となって、白日の下にさらされることになった。そういった目でここに並んだ楽曲を見ると、あいみょんの人気曲は、シングル曲に偏っていないことがわかる。おそらく、幅広い世代に様々な楽曲が受け入れられ、そして深く浸透しているのだろう。
  • (C)永峰拓也

    (C)永峰拓也

  • (C)永峰拓也

    (C)永峰拓也

 果たして、あいみょんの全国ツアー「AIMYON TOUR 2019 -SIXTH SENSE STORY-」では、その推察通りの、いやそれ以上の光景が眼前に広がっていた。12月17日、21本目となる横浜アリーナ公演1日目。会場を埋め尽くした観客は、親子連れから10代、20代の男女グループ、一人参加と思しき男性や女性など、幅広い年代層、参加スタイルの人々で埋め尽くされていた。
  • (C)永峰拓也

    (C)永峰拓也

 やがて、今日の主人公がステージに登場した。すでに何曲も歌った後のように、さり気なく歌い始める。大がかりなセットは組まれておらず、ステージにはバンドだけ。そんなシンプルな構成で数曲続いた後の「ふたりの世界」で、ステージの両脇の十字型のLEDモニターに、あいみょんの姿が映し出される。固唾を呑んで見守っていた緊張感がほどけ、会場の温度が上がっていく。このモニターは、楽曲に合わせて縦になったり、横になったり形を変えながら、時にアーティスティックに、時に可愛らしい等身大の表情を捉える。ライティングの鮮やかな色遣いも、楽曲の世界観を増幅させるアクセントとして抜群の効果を発揮していた。
  • (C)永峰拓也

    (C)永峰拓也

  • (C)永峰拓也

    (C)永峰拓也

■家族連れも大合唱した「ハルノヒ」

 アルバム『瞬間的シックスセンス』で異彩を放っていた「二人だけの国」、繊細な心理描写が絶妙な「わかってない」と、あいみょんの深遠な世界をのぞくような、インパクトある楽曲が続いた後に流れてきたのは、今春リリースされた、国民的アニメ『クレヨンしんちゃん』の主題歌にもなった「ハルノヒ」。この曲によって子供層にまでリーチしたことはわかっていたが、後ろの席で大合唱する家族連れがそれを証明してくれた。それにしても、この曲の並びにはいささか驚かされたが、こういう選曲ができるあたりが彼女の真骨頂と言えるのかもしれない。

(C)鈴木友莉

(C)鈴木友莉

 立て続けに楽曲が披露された後のMCでは、ギター片手に歌う姿の「カッコ良さ」とは異なる彼女の魅力があふれ出ていた。会場の規模を感じさせない、この親近感は彼女特有のものだろう。この日、何度かMCの時間がとられたが、まるで近くにいる友人に話しかけるかのような気安さで、観客との会話が自然に続いていく。会場が大きくなって、誰もが知る存在となって、嬉しいのと同時に一抹の寂しさを感じるファンがいることを察してか、「会場が広くなるほど会える人が増えて、みんなとの距離が近くなった」と独特の言い回しで表現したのには舌を巻いた。「ツアーができることでみんなの近くにいける」「それってめちゃくちゃ近くなったってことじゃないですか?」。こんな言葉の1つひとつが、彼女の抗いがたい魅力なのだと感じた
 白いピンスポットのなか「生きていたんだよな」の弾き語りが始まる。カラッとしているようでいて、湿り気のある艶やかなボーカルが会場を包み込んでいく。中盤のアコースティックセクションでは、表情豊かにいくつもの物語を歌い上げていった。平易な言葉もあいみょんが紡ぐと、とても新鮮に響くことに改めて気づかされた。

■誰もが知っている夏の定番曲へと成長したことを確信した「マリーゴールド」

  • あいみょん全国ツアー「AIMYON TOUR 2019 -SIXTH SENSE STORY-」(C)鈴木友莉

    (C)鈴木友莉

 後半に入り、ロックナンバー「夢追いベンガル」では、ハンドマイクを握って、ステージを右へ左へと駆けめぐる。少しでも客席に近づこうとする姿に、会場のボルテージはいっそう高まっていく。黄色に染まったステージ、イントロが鳴った瞬間に客席からは、ため息ともつかぬどよめきが起こった。あいみょんをスターダムに押し上げた「マリーゴールド」は、リリースから約1年半を経た今、ヒットソングから誰もが知っている夏の定番曲へと成長したことを確信した。今年、9500万再生超えした楽曲の凄みを、このとてつもない数字の重みを、身をもって知った瞬間だった。
 「自分の自信のある音楽をいっぱい届けたい」と語りかけ、一番新しい曲である「空の青さを知る人よ」を歌って、ライブはクライマックスになだれ込んでいく。「この曲ができたとき、背中に風が吹いた」と紹介した「君はロックを聴かない」では、「一緒に歌ってみませんか」と観客をあおって大合唱。このシーンを目に焼きつけようとするかのように、会場を見渡す表情が印象的だった。エンディングの「GOOD NIGHT BABY」まで、ライブで示された世界観は、とても豊潤だった。濃密な2時間のライブは、示唆に富み、とても刺激的。いつまでも後を引いてしまいそうな、そんなライブを観てしまった。
  • (C)鈴木友莉

    (C)鈴木友莉

  • (C)鈴木友莉

    (C)鈴木友莉

  • (C)鈴木友莉

    (C)鈴木友莉

 飛躍の2019年を経た彼女の向かう先がどこなのか、気になるところだが、1つだけはっきりしていることがある。それはMCで語ったように、自信のある音楽をたくさん届けてくれる、ということだ。おそらく、来年のあいみょんのストリーミングのラインナップ上位にはいくつもの新曲が並んでいるはずだ。
(文・カツラギヒロコ)
※売上金額は各週間ランキング[SINGLE TOP200/ALBUM TOP300/DVD TOP300/Blu-ray Disc TOP300/デジタルシングル(単曲)TOP200/デジタルアルバムTOP100/ストリーミングTOP100]でのランクイン期間内のみ。(デジタルシングル(単曲)/デジタルアルバム/ストリーミングの売上金額は期間内累積DL/再生数に基づく)の集計とする。
※売上金額は小売価格(税込)で算出。
※売上金額は100万、売上枚数は100単位を四捨五入。 
※ストリーミングの楽曲再生単価は1回あたり2.1円で算出。

<集計期間> 2018/12/24付〜2019/12/16付
※実質集計期間:2018年12月10日(月)〜2019年12月8日(日)

提供元: コンフィデンス

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