夏休み映画TOP10、100億円超え2作で例年以上に高いアニメシェア 2000年代最高年間興収も視野
今年の夏興行の特徴はアニメシェアが例年以上に高いこと
前作『君の名は。』(16年)が250億円を突破していた新海監督の次作として大きな期待と注目を集めていた『天気の子』。現時点での最終興収は、記録的なメガヒットとなっていた前作までは届かないものの、150億円以上が見込まれる。そして、同じく前作が傑作と評価を受け、興収108億円を記録していた大人気シリーズの9年ぶり新作『トイ・ストーリー4』は、前作と遜色のない成績。この2作が夏休み映画シーンを大きくけん引した。
TOP10作品を見ると、4位までをアニメとフルCG作品が占めており、TOP10内では7作に上る。アニメのヒットはいまに始まったことではないが、昨年がTOP10内で4作、一昨年が4作だったことを考えると、今年のヒット作の多さが際立っていることがわかる。
アニメをはじめ、実績のある人気シリーズ作品がTOP10を占めるなか、異質な存在である同作は、ほかの作品が若年層からファミリー層を多く集客しているのに対して、年配層がメイン。こうした映画がこの時期に公開され、それをヒットさせたことは映画シーンにとって意味のあることだろう。日本人が戦争を考える時期に、邦画実写の1作として大健闘した。
本来の映画文化がもつべき多様性の喪失への懸念
「気になるのが、口当たりがよく、楽しく観られる作品が多いわりには、どれもが似たようなテイストの作品ばかりになってしまっていること。シネコンに行けば、ほとんどのスクリーンが若い世代やファミリー層からの支持が厚い作品で埋め尽くされ、本来の映画文化がもつべき多様性の面からすると、ずいぶんと物足りない」(大高氏)
もちろん、夏興行は1年でもっとも大きなかきいれ時であり、配給会社がファミリー層などをターゲットにした“一番の作品”を投入してくるのはビジネスとしての必然。夏公開に向けて製作された各社の強力なアニメ作品が出揃い、上映回数が限られるシネコンのスクリーンは飽和状態となるなか、そこに実写の意欲作をぶつけていくのはリスクが高いと判断するのは当然だろう。そのため、夏の終わり頃から実写作品が増えてくる。
たしかに、アニメに若い世代を動員する引力があるのは間違いないが、ヒットはそれだけではない。実写でも昨年の『カメラを止めるな!』や今年の『翔んで埼玉』など、思わぬ角度からのスマッシュヒットも生まれている。大高氏は「観客にはひとつの枠に絡めとられない感性があると強く信じたい。とくに若い世代は、ひとつのトレンドに凝り固まった見方をするわけではなく、いろいろな作品を受け入れる素地があると思っている。そこを刺激する作品を送り出すべき」と指摘する。