岡田将生、ドラマ主演男優賞 視聴者が独特な色気を評価「椎名林檎から学んだ」
落語のスキルも世代ごとに演じわけないといけない、とても難しい役
岡田将生 『昭和元禄落語心中』は、できる限り時間を費やし、監督とセッションしなから作り上げた作品なので、このような賞をいただけて嬉しく思っています。自分自身も納得のいった作品だったので、頑張って撮影してよかったです。その気持ちと同時に、監督・スタッフ・キャスト皆でドラマを作り上げてきたので、もう一度皆さんに「お疲れ様でした」と言いたいです。
――岡田さんが演じた八代目有楽亭八雲(菊比古)は、とても難しい役でしたが、プレッシャーはありましたか?
岡田 今回のようなチャンスをいただけて、プレッシャーよりも「八雲という役をやりたい」という気持ちが勝っていました。「チャレンジ精神を持って、あまり観たことのないドラマにしたい」とプロデューサーにも言われましたが、10代から老年まで演じることはそうそうないことなので、プロデューサーがよく僕にこの役を任せて下さった。落語協会の方も協力して下さいましたし、時間をかけて準備ができました。今まで連続ドラマでは、前もってしっかりと準備ができない時もあったり、納得がいかないことがあっても、折り合いをつけるしかなかったのですが、そういったことがなく撮影ができて嬉しかったです。この作品でこの役を演じられてよかったという想いが、一番大きいです。
――どれくらい準備期間がありましたか?
岡田 約半年ぐらいです。稽古も役作りにつながっていたので、すごく良い時間でした。
――やはり落語のシーンが、一番難しかったのでしょうか?
岡田 落語を覚えることも大変なのことですが、落語家としての半生を演じていたので、落語のスキルも世代ごとに演じわけないといけない、とても難しい役でした。あと撮影スケジュールを考えて落語を完成させないといけなかったのですが、その点では助監督が理解してスケジュールを組んでくださったので、本当によかったです。そのことがなかったら、苦しい撮影になっていたと思います。
普段自分自身を追い込んで演じるタイプなので、周りの方に助けられた
岡田 実生活でも年配の方の立ち居振る舞いを研究しましたし、いろんなものを参考にしました。所作はとにかく美しくなるように心がけていました。それとライバル役の有楽亭助六(初太郎)を演じる山崎育三郎さんと、役の色が違うということも大きかったです。育三郎さんがワイルドに演じてられてたので、僕が美しく演じれば演じるほど、助六が引き立つし、八雲も引き立つ。
――お互いが引き立て合う関係性だったんですね。
岡田 はい。役について、育三郎さんとたくさん話をしました。光と影のように、すごく良い関係性で演じられました。
――今のお話のように、その2人の関係性が作品の核となっていますね。
岡田 そうですね。弟子役(有楽亭与太郎)の竜星涼くんともいろいろお話ししました。落語をやっている人でないとわからない会話もたくさんあったし、待ち時間も会話の内容が落語家のようになっていて(笑)。楽しんでできたのも良かったです。僕は、普段自分自身を追い込んで演じるタイプなので、周りの方に助けられました。良きライバルと弟子に恵まれたという想いがあります。
――岡田さんは、役を突き詰めていくタイプなのでしょうか?
岡田 もちろん演じている時は、その役のことだけを考えていますが、今まで撮影が終わって役を引きずることはなかったです。でも今回は、役を引きずるほど、自分のなかに八雲という人物が入っていたんだなと、撮影が終わってから気づきました。未だに落語家の癖というか、所作はずっと残っています。いろいろと学べて良かったですし、今後も同じようなお仕事があった場合、今回の経験が活かせるなと思いました。放送中の『いだてん』を観ていますが、八雲を演じる前とでは、落語の見方も変わりました。