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攻めるNHKの本気度が映る、斬新かつ原点回帰のゾンビドラマ『ゾンみつ』

『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(C)NHK

『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(C)NHK

 1月クールのNHKドラマが、なぜか攻めている。1つは、特撮ファンもうなる本気のクオリティを誇る、小芝風花主演の特撮好きOLの物語『トクサツガガガ』。そして、もう1つは、NHKとゾンビの異色コラボ『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(ゾンみつ)だ。

『カメラを止めるな!』人気便乗に見えて、70〜80年代空気を漂わせる

 このタイミングで「ゾンビモノ」と聞くと、「NHKも『カメラを止めるな!』人気に便乗したか」と思う人も多いだろう。実際、冒頭で、路上で酔いつぶれた女性にカメラを向けたYouTuberが、その様子が「危ない」ことに気づくと、狂喜しながらカメラを回し続ける様子は、『カメ止め』を意識しているかのようにも見える。しかし、いかにも今どきに見えて、この作品、むしろ1970〜1980年代の空気を漂わせている。

 物語の舞台は「なんの取り柄もないつまんない田舎」。平成元年生まれのみずほ(石橋奈津美)は、東京の大学に行ったものの、地元で先輩と再会し、結婚。ダンナ(大東俊介)の浮気で別居し、地元の同級生・柚木(土村芳)と美佐江(瀧内公美)と同居している。何もない、いつもの朝食風景のなか、テレビでは近所の山中の研究施設が炎上したというニュースが流れるが、3人は「ミサイルが飛んで来たら?」「通り魔が襲ってきたら?」などとたわいのない話で盛り上がるばかり。そして、通り魔が襲ってきたら、と言う問いに対し、みずほは言う。

「私は諦めるな。目の前に迫ってきたら、こうしちゃう(大の字で寝る)。その通り魔って、無我夢中なんだよね? 無我夢中は無理。私はどこまでいっても理性が働いちゃって、こうするしかできないと思うし、そんな私が無我夢中で戦っても勝てないと判断しちゃうと思うんだよね。下手に抵抗したら、余計痛い思いしそうだし、だったらひと思いに上手いことお願いしますって感じかな」

ゾンビモノの素朴な感想「どうせ死ぬなら楽に死にたい」が原点に

 実はこの視点、ゾンビモノをそれなりに観てきた人なら、一度は考えたことがあるものではないだろうか。なぜって、ゾンビから必死で逃げ惑う人は、ずっと恐怖にさらされた緊張状態にあるのに対し、「早々にゾンビ側にいった人」は、一瞬の恐怖を味わった後には「思考力をなくしてただ標的を追い詰めるだけ」の楽勝状態に見えるから。

 しかも、ゾンビ側がどんどん増殖していくことにより、むしろ「そっちが普通」にも見えてくる。だったら「いっそ痛い思いをせずに」「噛まれる前に気絶しておきたい」と思うのも不思議ではない。

 ちなみに、番組公式サイトによると、このドラマが作られたきっかけも、松川博敬チーフ・プロデューサーが自宅でゾンビ映画を観ているときに中学生の娘に言われた「なんでこんなに必死に逃げてるんだろう?」「ワタシはどうせ死ぬなら楽に死にたい」というつぶやきだったという。

提供元: コンフィデンス

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