米津玄師、異例のロングセールスに見る音楽家の資質 メジャー6年目で第2章へ
改めて過去の売上動向を振り返りながら、彼の今後を占ってみたい。
前作「Lemon」から本作「Flamingo/TEENAGE RIOT」のリリースまでには約8ヶ月という時間があった。この期間、特別目立った露出や稼働があったわけではないが、音楽シーンには常に「米津玄師」が居続けていたという印象を受ける。それは、「Lemon」のロングヒットに端を発し、過去のシングル、アルバムが聴かれたことで、CDシングル、デジタルともに常にランキング上位を席巻していたからだろう。
下記グラフは、米津の過去のCDシングル、CDアルバム、デジタルシングル(単曲)の売上動向をまとめたもの(11/12付時点の数字)だが、これらの数字を見ると、どの作品も非常に息の長いセールスを記録していることがわかる。
米津玄師のCDシングルの売上推移 (以下すべて、18年11/12付時点)
米津玄師のCDアルバムの売上推移
米津玄師のデジタルシングル(単曲)の売上推移
ただ登場回数だけ見ても“ロングセールス”のイメージが掴めないと思うが、星野源のアルバム『YELLOW DANCER』(15年12月2日発売)が、TOP300内に109回(初週売上:13.2万枚、累積売上:34.0万枚)。映画『STAND BY ME ドラえもん』主題歌に起用された秦基博のシングル「ひまわりの約束」(14年8月6日発売)が、TOP200内に65回(初週売上:1.2万枚、累積売上:6.4万枚)というような、ソロの男性アーティストの作品を例に挙げてみると分かりやすいだろう。
こうした米津の売上動向からは、ある楽曲をきっかけに興味を持った新規リスナーが過去作をどんどん掘り下げていっている姿が想起され、またこの“好循環”は、一度聴いたリスナーの心を掴んで離さない彼の音楽家としての才能の証左でもある。
「「Flamingo」は、ファンク調のクールなトラックと俳句のような五七五調の歌詞、まるで演歌のようにコブシを効かせたボーカルなどを融合させた楽曲。ロック、エレクトロ、J−POP、インディーポップなどを自在に取り込んだハイブリッドな楽曲を作り出してきた米津さんの最新モードを示す1曲。一方の「TEENAGE RIOT」は、中学生の時に書いたというメロディーをもとにしたロックテイストのナンバー。シンプルかつアグレッシブなバンドサウンド、エッジの効いたボーカルなど、曲名通り、10代の頃の米津さんを想起させる原点回帰的な楽曲だと思います。
これまでの折衷的な楽曲制作をさらに先に進めた「Flamingo」、原点回帰を感じさせる「TEENAGE RIOT」は対極にありながら、実は強く結びついていると思います。アーティストとしての第2章をはじめるにあたって、“原点を確認する”、“新しい進化を提示する”はどちらも必要だったと。そういう意味で本作は、この後の彼にとっても、1つのターニングポイントになるのでは」
新作をリリースする度に、リスナーを拡充していく米津。本作のロングセールスもさることながら、本作リリースに伴う過去作の動向にも注目していきたい。