『ZIP!』に抜擢の風間俊介、各方面から“MC”としても絶賛されるワケ
王道路線に乗らず演技力を磨くことで独自の立ち位置を確立
NHK連続テレビ小説『純と愛』(2012年)ではヒロインの相手役を演じ、実力派俳優としての存在感がお茶の間にも浸透。この頃はまだ、“歌って踊れるキラキラしたアイドル”の代名詞的存在であるジャニーズ事務所と彼がリンクしなかった人も多かったはずだ。その『純と愛』の完成会見では、脚本家の遊川和彦氏に「イケメンがヒロインを支えるのは見飽きた。普通のお兄ちゃんが女性を支える作品にしたいから、風間くんなんだ」と言われたことを自虐交じりで明かしている。演技力を磨くことでジャニーズ事務所でも独自の立ち位置を築いた風間だが、“歌って踊れるキラキラしたアイドル”という王道路線に乗れなかったことを悩んだ時期もあったようだ。
MCを務めるNHK・Eテレの福祉番組『ハートネットTV』内企画『ブレイクスルー』の会見(2014年4月8日)では、さまざまな生きづらさを題材とした番組になぞらえて、自身の弱点を「ジャニーズ事務所はかっこいい人ばかり。そのなかで自分にできることは何だろうって考えたら、顔で張り合うことではなかった」と打ち明けている。さらに「ありがたいことに最近は俳優って言っていただけるようにもなった。顔で戦っても勝てないなら別の武器で戦おうって決断したことは、自分のウィークポイントでもあるし、弱点を愛せるようになったきっかけ」と苦悩を乗り越えた時期を振り返った。
ちなみに風間は山下智久、生田斗真、長谷川純とユニット活動をしていた時代があり、アーティストとしてのトレーニングも積んでいる。舞台『イントレランスの祭』(2016年)の会見では、風間が旗を持ってダンスをするシーンについて作・演出の鴻上尚史氏が「やっぱりあの事務所だったんだねっていうくらい、びっくり。てっきり下手で俳優業に来たと思ったら、踊れましたよ」と驚くと、風間は「僕は踊れないって言っているんじゃなくて、“踊らない”」と訂正して会場を沸かした。ときに真摯に場を和ませるコメント力の高さは会見のみならず、バラエティ番組でも大いに発揮されている。
バラエティで見せる飾らない人柄も風間の好感度に
また、5月15日放送の『マツコの知らない世界SP』(TBS系)では、自らの得意ジャンルとして「東京ディズニーランドの世界」を持ち込み企画として披露。11歳より年間パスポートを23年間更新し続けているという風間は、ディズニーランドの建造物からストリート、そしてゴミ箱とマニアックなチョイスで熱弁をふるい、マツコを「この番組によく来られるタイプの方とほとんど同じね」とうならせた。そして、同番組の総合演出の坂田栄治氏も「まさか台本書きや取材まで自ら買って出てくださるとは思ってもいませんでした。企画の着眼点は、十分すぎるほどのマニアックさでユニーク。正直驚きました。トークも何時間でも聞いていたいほど魅力的でした」とそのレベルの高さに脱帽している。
いい意味での優等生的な安心感のある風間が『ZIP!』に適任
弱点を克服した実力派で、人柄も親しみやすい。そんな優等生ぶりを「堅い」と評する向きもある。10月8日の『ZIP!』放送後には、同系列の『スッキリ』に生出演。「初回がいろいろなアクシデントとかもあって、生放送ってこういうことがたくさんあるんだなと」と振り返り、「観てくださる方にもいろんな朝があると思うので、すべての朝に寄り添っていきたい」と風間がコメントすると、『スッキリ』MCの極楽とんぼ・加藤浩次から「なんでそんなちゃんとしたコメントばっかり言うの。もっと適当でいいのよ」という指摘が飛んだ。風間もまた、「優等生という殻を破りたい気持ちもあります」と打ち明けている。しかし、同じ朝の情報番組でも、社会問題にも舌鋒鋭く切り込む『スッキリ』と、爽やかな朝の目覚めを視聴者とともに迎えるイメージの『ZIP!』とでは雰囲気も内容も異なる。そして『ZIP!』のパーソナリティには、いい意味での優等生的な安心感のある風間がふさわしいのではないだろうか。
リオパラ五輪と平昌パラ五輪では、NHKのハイライト番組『パラリンピックタイム』の現地リポーターを務め、選手へのインタビューや中継での付け焼き刃ではないコメントに絶賛の声が上がり、その実力派は折り紙付き。童顔なルックスだが、現在35歳。2013年には30歳の節目に、10年間交際していた一般女性と結婚。地に足のついた活動を続け、俳優としてのたしかなポジションを確立した風間。そして朝の顔として老若男女幅広い層が触れる存在となった今は、パーソナリティとしての今後のあり方によって、俳優としてもさらなる飛躍につながる正念場の時期でもある。
(文/児玉澄子)