Mr.Children、激変の時代に見せるモンスターバンドの“進化” 最新アルバムが初週30万枚超えのヒット

Mr.Children

 音楽の聴かれ方が様変わりするなか、近年、次々と新たなアプローチに挑んでいるMr.Children。前作アルバム『REFLECTION』(15年6月発売)から新作アルバム『重力と呼吸』(18年10月3日)を発売するまでの間にも、さまざまな挑戦があった。
「先頭を走り続ける」という意思表示とでも言うべき、アグレッシブな活動の数々
 3年4ヶ月ぶり、19枚目となるアルバム『重力と呼吸』は、10月3日にフィジカルで発売。初週31.0万枚を売り上げ、最新10/15付アルバムランキング1位に初登場した。前作『REFLECTION』の初週売上35.5万枚はわずかに下回ったが、激動の時代を迎えている音楽シーンにおいて30万枚超えの好発進を切った。
  • Mr.Children の3年4ヶ月ぶり、19枚目のアルバム『重力と呼吸』(18年10月3日発売)

    Mr.Children の3年4ヶ月ぶり、19枚目のアルバム『重力と呼吸』(18年10月3日発売)

 Mr.Childrenは数々のミリオンヒットを誇る、言わずと知れた平成を代表するモンスターバンドの1組。昨年の5月10日でデビュー25周年を迎えたが、定位置であぐらをかくことなく、時代とともに厳しさを増す音楽業界で、“トップを走り続ける”という意思表示とでも言うべきアグレッシブな活動を続けている。それはバンド及び音楽シーン全体を鼓舞しているようにも感じられる。

 前作『REFLECTION』は、発売に先駆けて収録曲を中心に構成した全国アリーナツアーを実施、また約110分におよぶ全23曲をUSBに収録した『REFLECTION{Naked}』、そのなかから厳選した14曲をCDに収めた『REFLECTION{Drip}』の2形態で発売するなど、バンドにとっても業界にとっても革新的な展開を見せたが、新作アルバム発売までの間にも、実にさまざまな挑戦を行ってきていることがわかる(表1参照)。

■表1 前作『REFLECTI ON』から新作アルバム『重力と呼吸』発売までの主な動き

「既存ファン」「かつてのファン」「新規ファン」三者三様のアプローチ

 ここで注目したいのは「既存のファン」に加え「かつてのファン」、そして「新規のファン」と、三者それぞれにアプローチを変えていたことだ。

 バンド史上初の試みをどんどん打ち出していくことは、世間に向けその“進化”をアピールすることができるが、一方で「既存のファン」のなかには急激な変化により違和感を覚える人も少なくなかったことだろう。そんななか、次々とライブを展開し、また小規模な会場でのホールツアーなども実施することで、改めて既存のファンとの絆を深めていった様子が窺える。

 「かつてのファン」へは、デビュー25年の節目を契機としたアプローチが大きかったのではないだろうか。バンド史上最多の70万人を動員した25周年記念のドーム&スタジアムツアーでは、“斬新さ”は二の次に、往年の名曲を惜しみなく披露するセットリストでファンを沸かせたほか、ともに25周年でタッグと組んだNTTドコモのストーリー仕立てのCMなども大いにネットを賑わせた。

 「新規ファン」に向けては、彼らがコンスタントに手がけてきた“主題歌=タイアップ”が非常に大きな役割を担っていると言える。特にF2、F3およびM2、M3層から支持を得る、NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』や木曜ドラマ『ハゲタカ』(テレビ朝日系)。若年層から人気に火が付いた映画『君の膵臓をたべたい』や『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命』など、幅広い年代に親しまれた作品に携わっている点もポイントだが、それは作詞・作曲を手がける桜井和寿を中心に、バンドが各ドラマや映画のストーリーの世界観をしっかりと体現できていてこそ成立するものだ。

 そして、全方位へのアプローチをしっかりと行ったうえで、今年5月10日のデビュー記念日に、過去の全シングルとアルバムのダウンロード配信および、サブスクリプションサービスへの配信を開始。若年層の利用が目立つ「LINE MUSIC」や「AWA」など、本誌掲載の各種サブスクリプションランキングでは、『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命』主題歌の「HANABI」が何週にもわたってTOP20入りしているが、このことからもファン層を開拓した跡が見てとれる。

 ここ最近、サブスクリプション全開放を行った類似アーティストには宇多田ヒカルがいるが、彼女の最新アルバム『初恋』(6月27日発売)は初週売上20.4万枚からじわじわと売り伸ばし、10/15付現在で累積売上35.3万枚を記録している。

 彼らの革新的な活動を考えると、Mr.Childrenも同様のケースを辿ることが存分に考えられる。初週の売上のみならず、2週目、3週目の売上動向にも注目したい。

(『コンフィデンス』10/15号掲載)

提供元: コンフィデンス

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