音楽サービスに先端技術を導入する狙い 『Audiostock』ブロックチェーン導入を検討

 ロイヤリティフリー形式の音源ダウンロードサービス『Audiostock』を運営するクレオフーガは、ブロックチェーンやAIなど先端技術の音楽ビジネス活用を研究する「Music Tech Lab」を不定期で開催する。すでにビジネスとしての軌道に乗せていながら、あえて今、先端技術の導入を検討する狙いを代表取締役社長の西尾周一郎氏に聞いた。

先端技術研究会「Music Tech Lab」サービス発展の可能性を検証

『Audiostock』のサービスイメージ

『Audiostock』のサービスイメージ

 クレオフーガが基軸事業として展開する『Audiostock』は、登録した音楽クリエイター(プロ、セミプロ、アマチュアなど)による多様な音源を簡単に利用できるサービス。著作権・著作隣接権の使用許諾を一定金額で一括提供する形式で、WEB動画やゲームなど、商用利用を含む映像作品の制作者などに、必要とされる音素材を提供している。BGMや歌はもちろん、効果音、ボイスなど10万点を超える素材が揃い、参加クリエイター8000組以上、顧客側登録ものべ3万組に迫る(9月20日現在)。いずれも日々その数を増やしている。

「もともとは、自分の作品をなかなか収益化できずにいるような、多くの音楽クリエイターを支援したいという想いから始めたサービスです。一方で、音楽を必要とするのにそれほど予算がない映像コンテンツも世の中にはどんどん増えてきています。WEB動画、デジタルサイネージ、アプリ、SNS向け企業プロモーションなど、テレビCMほど時間も予算もないけれど、音楽はすぐに必要という人たちです。この両者を、マーケットプレイス方式で結びつけようという発想から生まれました。CD販売による素材集を手がける会社さんなどは他にもありますが、オンラインで試聴、決済でき、すぐに欲しい音源が使用できるサービスは日本ではまだ珍しいと思います」

 いわゆるUGC(ユーザー生成コンテンツ)を活用したマッチングサービスだが、ノイズの有無や既存楽曲との類似性など徹底した品質コントロールは同社のこだわりでもある。すでに『Audiostock』からの収入のみで生活するクリエイターも存在するという。事業として安定した成長軌道に乗っているとも思えるが、先端技術研究会「Music Tech Lab」は、また別種のサービス開発に向けての布石なのだろうか。

「現在の『Audiostock』をより強化し、発展させる可能性の検証が目的です。第1回では、ブロックチェーンについて社内外の関係者を集めて話し合いました。そもそも、ブロックチェーン技術は私たちのサービスと非常に相性がいいと考えています。オンラインで完結する数千円から数万円ほどの取引ですから、著作権管理と収益分配でスマートコントラクトが活用できれば、使用されるたびに自動的に音楽クリエイターに印税が入るような世界も実現できます。現在もYouTubeのコンテンツIDで販売済み楽曲の追跡はできますが、たとえば販売した音源が意図せず無断で転用されている場合など、かなりの労力を割いて特定しなくてはならない状況です。ですが、音源とリンクするスマートコントラクトを導入することによって、圧倒的に効率的な使用状況の把握と新たな料金徴収が可能になります」

海外市場への拡大の実現へ仮想通貨を活用するメリット

ロイヤリティフリー形式でBGMや効果音などのライセンスを販売するオンラインサービス『Audiostock』

ロイヤリティフリー形式でBGMや効果音などのライセンスを販売するオンラインサービス『Audiostock』

  • クレオフーガ代表取締役社長の西尾周一郎氏

    クレオフーガ代表取締役社長の西尾周一郎氏

 同時にそれは、ブロックチェーンとセットで語られることの多い、暗号通貨のシステムをサービスに導入することにもなる。

「当然、そこも含めて研究中です。ひとまずサービス内だけで使える、いわゆるユーティリティトークンから開始するのか、作った独自トークンをどの暗号通貨プラットフォームと接続するのか、最終的には独自ブロックチェーン開発まで視野に入れるべきかなど、検討課題も選択肢も多い。ただ、現在は国内のみ対応している『Audiostock』を海外展開することも考えており、少なくともその際には仮想通貨の経済圏を活用するメリットは大きいと考えています。日本円での決済手数料の問題や、額の多寡にかかわらない迅速な収益分配など、煩雑な処理すべき課題を一気に解決できますので。日本のクリエイターの作品を海外マーケットに、海外クリエイター作品を日本に、という市場の広がりを実現するためにも、仮想通貨は非常に有効なツールだと思います。では、実際にはどのような形で導入するのがスムーズなのか。急ぎ検討している段階です」

 クリエイターへの少額印税などの分配の透明性を担保しつつ、より広い世界市場に向けて、優れた音源の選択肢を提供する。登録クリエイター用の小さな録音スタジオを社内に備え、名もなき多くの音楽クリエイターへのサポートを自分たちの役割と規定するクレオフーガ。この先どのように先端技術を取り込み、サービスを展開していくのか、引き続き注視したい。
(文:及川望)
『Audiostock』
ロイヤリティフリー形式でBGMや効果音などのライセンスを販売するオンラインサービス。全国約8000組の音楽クリエイターが制作した10万点以上の商用利用可能なロイヤリティフリー音源(BGM、効果音、ボイス、歌)をダウンロード販売している。
https://audiostock.jp/(外部サイト)

提供元: コンフィデンス

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