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活況を呈した夏休み映画No.1は『コード・ブルー』 ポストジブリの行方は

(C)2018「劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」製作委員会

(C)2018「劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」製作委員会

 8月最終週を迎えて今年の夏休み映画の興行成績をまとめると、上位の大ヒット2作が激戦の末、『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(興収77.3億円/動員601.7万人)が『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(興収76.8億円/動員517.8万人)をわずかに上回り、今夏のNo.1となった。

中ヒットが相次ぎ、存在感を示した邦画

 続く3番手も大接戦となり『インクレディブル・ファミリー』(興収40.3億円/動員338.3万人))が、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(興収39.4億円/動員285万人)を僅差で抑えた。ちなみに、『ミッション:インポッシブル』も8月28日まででは興収40.2億円(動員291.5万人)を突破している。

 昨年の夏休み映画のTOP5と比較すると、昨夏の『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(65.8億円)『怪盗グルーのミニオン大脱走』(62.3億円)『銀魂』(36.4億円)『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』(31.8億円)『メアリと魔女の花』(30.2億円)に対して、今年は70億円台が2本、40億円前後が2本、30億円弱と、明らかにヒット規模が大きくなっている。その背景には、邦画の健闘があるようだ。

 今夏の主なヒット作を見ると、ハリウッド大作のビッグヒットが上位を占める近年の流れは変わらないが、『劇場版コード・ブルー』がそれらを上回ったこと、また20〜30億円ヒットの邦画アニメ、10〜20億円の邦画実写と、中ヒットで多くの邦画が存在感を示している。『カメラを止めるな!』のスマッシュヒットの話題も映画シーンを盛り上げたが、洋画でも『ジュラシック・ワールド』は大人のシリーズファンから子どもたちまで巻き込むムーブメントを作り出すなど、映画ファンだけでなく一般層をも劇場に足を向けさせ、活況を呈した夏休みになった。

子どもから大人まで楽しめる国民的夏休みアニメが不在

『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(C)Universal Pictures

『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(C)Universal Pictures

 一方で気になるのが、夏休みの邦画アニメのヒットスケールが、近年小さくなっていること。かつては、夏休みといえば、子どもから大人まで楽しめる、まさに国民的アニメと呼べる作品があった。2010年の『借りぐらしのアリエッティ』(92.6億円)や2013年の『風立ちぬ』(120.2億円)など、2010年代前半までは、それは主にスタジオジブリが担っていた。宮崎駿監督、故・高畑勲監督、米林宏昌監督など監督は代わりながら、ジブリ作品として毎年夏休みに親子で楽しめるファミリー向けアニメを公開していた。

 そんなスタジオジブリが制作部門を解体した後も、2015年の細田守監督の『バケモノの子』(58.5億円)、2016年の新海誠監督の『君の名は。』(250.3億円)などの大ヒットが生まれてはいるが、ポストジブリと呼べるような、毎夏大ヒットを送り出すスタジオはいまだ定着していない。言ってしまえば、かつての夏休みアニメ興行がジブリにかかっていたことに尽きるわけだが、いまはまさに次への過渡期となるだろう。

 映画ジャーナリストの大高宏雄氏は、「ジブリの巨大な市場性に匹敵するようなアニメスタジオが今後生まれるかどうかがカギだが、ポストジブリの詮索は、あまり意味がないかもしれない。同じことを踏襲するのではなく、細田守監督や新海誠監督らが、ジブリとは違う歩み方をして、どのように新たな展開をしてくれるか。そこに期待したい。その一方で、アニメも含めたハリウッド大作などの洋画が、大人だけではなくファミリー層など子どもまで取り込んで大きくなってきている。夏休みだけではなく、アニメ興行の流れが変わってきたんだと思いますね」とコメントする。

 映画シーンとして見れば今年、6年連続でシリーズ興行収入記録を更新した『名探偵コナン ゼロの執行人』(87億円)や、38作目にしてシリーズ最高興収を樹立した『映画ドラえもん のび太の宝島』(53.3億円)などのアニメ作品も、その物語はもはや子ども向けではなく、若い世代が楽しめる内容へとシフトし、ファミリー層から大人まで全世代をターゲットにして興行を拡大してきている。

 いま、洋画は大人だけでなく子どもからファミリー層を取り込み、アニメは子どもだけでなく若い世代から大人層へもターゲットを広げ、より大きなパイへアプローチしている。それが夏休みアニメでは空席になっているのだ。全世代向けの夏休みファミリーアニメを毎年公開する、ポストジブリの空白を埋めるような新たな展開をするスタジオはいつ現れるのか。映画シーンとしても映画ファンとしても待たれるところだ。

提供元: コンフィデンス

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