足立佳奈にみるヒットの新方程式 アプリからアプリへ 歌詞が生んだ共感と共鳴
以前までのヒット曲では、ドラマ・映画などの主題歌や、CMタイアップ、ラジオでのヘビーローテーションのような、いわゆる“大きく仕掛ける”ことで、シャワー的に全国に情報を行き渡らせ、それを契機に曲がヒットしていくというものも多かった。
しかし、現在ではスマホ内の音楽系アプリ、なかでもLINE MUSICやSpotifyなどといった聴き放題型の音楽ストリーミングサービスや、Tik Tokなどのショートムービーアプリ、Instagramのストーリーズなどでヒットの芽が生まれ、その後、各サービスの枠を超えて、楽曲が一気に広がり、ロングヒットしている。このように、小さなヒットの芽がアプリの枠を超えて広がり始めたときに、ヒット曲として定着していくのである。
現在も、Tik Tok内では、同サービスで活躍する人気Tik Tokerたちがこぞって、「私今あなたに恋をしています」を使用した『今日好きダンス』を投稿。7月15日の楽曲配信開始後から1週間で約5.5万人がTik Tokに「今日好きダンス」動画を投稿するなど話題を集めている(現在投稿は11.6万件を超えている)。
足立佳奈「私今あなたに恋をしています」ミュージックビデオ
「今日好きダンス」を投稿する、人気Tik Toker上位10人
「今日好きダンス」を投稿するTik Tokerたち
そして、「私今あなたに恋をしています」が、“ソーシャルレゾナンス”を生んだ、もっとも大きな要因は、若者たちから共感を集めている足立佳奈の歌詞だ。現在YouTubeに投稿されている本楽曲ミュージックビデオは60万回再生に迫る勢いで、実際、楽曲の評価自体も話題の広がりとともに伝わっており、TwitterやYouTubeのコメント欄では「今の気持ちにピッタリで涙が溢れてきます」「気持ちがわかる!やばい泣ける」「私がモデルになった歌かと思った」「昨日振られた〜 この曲聞いて涙が止まらない」など、恋をしている人を中心に歌詞へ共感するコメントが数多く投稿されている。
AbemaTVもTik TokもInstagramも、高橋氏が指摘するように、それぞれが少しずつ異なるユーザーを持っており、サービス内でのブームやユーザーの嗜好性も当然、異なる。にもかかわらず、「私今あなたに恋をしています」は今まさに、ある種“現象”となって広がっている。それは一見、「今日好きダンス」が広がっているようにも見えるが、実は広がっているのは「今日好きダンス」ではなく、“歌詞への共感”が、サービスを超えた“共鳴”を生んでいるのだ。