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地上波では描けないリアルなティーンの闇 ドラマ『13の理由』が制作された2つの理由

Netflixオリジナルシリーズ『13の理由』

Netflixオリジナルシリーズ『13の理由』

 全世界で1.2億ユーザーを誇る定額制映像配信サービスの最大手、Netflixが日本国内での攻勢を強めている。5月29日にはKDDIとともに会見を開き、Netflix視聴者向けの料金パック「auフラットプラン25 Netflixパック」を本年夏以降に提供開始することを発表。さらにケーブルテレビ大手のジュピターテレコム(J:COM)とも提携を発表。来年以降、CATVでもNetflixが見られるようになるなど、視聴者との“接点”を急拡大させている。

Netflixが日本国内での攻勢を強化 オリジナルドラマも次々配信

 Netflixの強みはビッグデータを活用し、制作されたオリジナルコンテンツともいわれている。実際、初のオリジナルドラマ、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』はそうしたデータをもとに制作を決定。全世界規模で話題をさらったほか、ドラマ賞なども多数受賞するヒット作となった。

 そして、昨年から今年にかけて同じく世界規模で大きな注目を集めているオリジナルドラマが、高校を舞台に、若者たちの心の闇を描いたドラマ『13の理由』だ。

 いじめや性的暴行、薬物乱用、自殺などをリアルに描いた内容は、Netflix側でも「このシリーズには、性的暴行の過激な描写、薬物乱用や自殺など、視聴者が不快に感じる恐れがある場面が含まれています。あなた自身やお知り合いの方が、お住まいの地域の支援窓口や自殺予防相談窓口をお探しの場合、13ReasonsWhy.infoで情報を入手することができます。」といった警告文を掲出するほどで、その話題性から、「2017年に最も多くツイートされたドラマ」としても多くのメディアで取り上げられた。さらに5月18日からシーズン2の配信もスタートし、引き続き関心を集めている。

大手配信会社が社会派ドラマへの投資に積極化

撮影現場のメイキングカット

撮影現場のメイキングカット

 これほどまでに重く過激なドラマが何故、世界規模でヒットしているのか。これについて作家・コンサルタントで、TBSテレビ番組審議会委員の佐藤智恵氏は次のように語る。

「『13の理由』は、アメリカの地方都市に引っ越してきた17歳の女の子、ハンナ・ベイカーが高校でのいじめに苦しみ、自殺に至るまでの過程を詳細に描いたドラマです。彼女は「私が自殺した13の理由」をカセットテープに録音してから自殺するのですが、シーズン1ではその音声をもとに、1エピソードにつき1つずつ、計13の理由を解き明かしていきます。

 アメリカのティーン向けドラマといえば、『ビバリーヒルズ高校白書』『glee/グリー』など、“明るくて前向きな青少年たちの群像劇”というのが定石でした。いじめやケンカのシーンもありますが、あくまでもおふざけ程度です。一方、『13の理由』は、どこまでもリアル。テレビでは放送できないような内容の連続です。

 Netflixはこのような衝撃的なドラマを制作した狙いは2つあると思います。1つは、これまでの青少年向けテレビドラマに飽き飽きしているティーンを取り込むこと。『ビバリーヒルズ』『glee』なんて嘘くさいと思っている層を狙って、あえて暗く、リアルにつくったのです。もう1つは、ツイート数をあげること。Netflixは作品別の視聴率も視聴時間も一切公開していないため、オリジナルドラマの人気度を測る指標はツイート数しかありません。ツイート数が上昇すれば、投資家からも「自社制作のドラマが成功している」と判断され、株価にもプラスに働くのです」
(佐藤智恵氏)

 加えて、佐藤氏は「日本では、視聴率がとれないという理由で社会派ドラマを制作するのが難しくなっていますが、『13の理由』の成功で、大手配信会社はこの分野に積極的に投資しようとしています。日本のドラマ制作者にとっては、好機になるかもしれません」とも期待を寄せる。地上波では扱いづらいテーマを取り上げることができるのはWOWOWなどの衛星放送を含め、有料放送・配信サービスの強みでもある。『13の理由』のヒットが日本国内のドラマにさらなる多様化へと繋がっていくことも大いに期待したい。

『13の理由』

公開年:2017年
ある女子高生が謎の自殺を遂げた後、1人の同級生の元に、彼女が生前に録音した7本のカセットテープが届く。そこには、彼女が死を選んだ理由が語られていた。
【公式サイト】(外部サイト)

提供元: コンフィデンス

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