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『シグナル』に見る、カンテレ“ドラマ作り”のこだわり

 「現在」と「過去」、無線機を通じてつながる2人の刑事が協力し合い、難事件の解決に挑む『シグナル 長期未解決事件捜査班』。連ドラ初となる坂口健太郎を主演に迎え、さまざまな人間模様が織りなすヒューマンサスペンスを展開している。プロデューサーの関西テレビ・萩原崇氏に、本作に込めたこだわりを聞いた。

原作は1話80分×全16回の長尺 日本版では“人間ドラマ”に重点を置いた

 本作の原作は、韓国で数々の賞を受賞したドラマ『シグナル』。リアルな人間描写と緻密な構成が感動と興奮をもたらした傑作ドラマだが、なぜこの作品を日本版として制作しようと考えたのか。

「坂口さんの初主演ドラマを制作したいという想いがあったなかで、韓国の原作を観たことがきっかけです。普段はあまり韓国ドラマを観るほうではないのですが、『シグナル』は第1話からハマって一気に観ました。私が制作に携わったドラマ『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』にもあるような、人間の本質や暗い部分もしっかりと描かれた世界観に共鳴を覚えました。荒唐無稽な設定もあるのですが、それを感じさせないリアリティと、大人でもしっかり楽しめるストーリー展開。この作品の主人公を坂口さんが演じてくれたら、新たな坂口健太郎像が生まれるのでは、と考えたのです」(萩原崇氏/以下同)

『シグナル 長期未解決事件捜査班』第7話(5月22日放送)より (C)カンテレ

『シグナル 長期未解決事件捜査班』第7話(5月22日放送)より (C)カンテレ

 だが、日本版制作には大きな苦労も伴った。原作は1話80分で全16話。ストーリー構成が複雑で人間模様が重厚な上、単純計算で日本の倍の尺があるのだ。

「プロデューサーや監督陣で話していくなかで『登場人物らの気持ちが積み重なっていく事象を中心に(物語を)ピックアップしよう』という方針を見つけました。尺的に泣く泣く削った事件も2つありますが、その削ったものの中からも大事なセリフなどを、描ける範囲の事件内に盛り込んだ。具体的には脚本の尾崎将也さんらとも話をし、無線機を通して語る言葉としてパズルのように組み込んでいったのです。これは原作を制作したキム・ウニ氏(脚本)や Studio Dragon & ASTORY(制作)の皆さんから自由度高く日本版の制作を任せていただけたのが大きい。結果、刑事モノというよりは人間ドラマに重点を置いた作品に仕上がったと思います」

主題歌を務めるBTS(防弾少年団)と“異色のコラボ”

 本作は「日本の今を世界に伝える」をテーマに、日本のテレビ番組を海外展開するWAKUWAKU JAPANとの提携で、インドネシア、ミャンマー、シンガポール、台湾、スリランカ、モンゴル、ベトナムとアジア各地でも放送されている。関西テレビのドラマは、予め世界に目を向けたエッジの利いた作品が多いようにも感じられる。
  • ドラマの主題歌「Don’t Leave Me」を収録した、BTS(防弾少年団)のアルバム『FACE YOURSELF』

    ドラマの主題歌「Don’t Leave Me」を収録した、BTS(防弾少年団)のアルバム『FACE YOURSELF』

「昨春放送の『CRISIS〜』は、毎年カンヌで開催される世界最大級の国際映像コンテンツ見本市『MIPTV』への出品が叶い、海外の方からも評価を受けました。そこから日本の作品も十分に通用するんだなという自信と、海外展開への意識が生まれました。今回、主題歌をBTS(防弾少年団)さんにお願いできたのも幸運でした。現在、関西ローカルやWeb上では、『僕たちは「シグナル」を応援しています』などとBTSさんが番組をPRする動画を流していますが、アーティストの方にドラマをアピールしていただくという宣伝は当社初の試み。これはBTSさん側から、ぜひやりましょうとの言葉をいただき実現したもので、そういう新しい取り組みを一緒にやらせていただけることがありがたかったです」

 テレビ不振の時代と言われ、近年のドラマはどちらかというと1話完結やライトな作品が目立つ。そんななか、同局では今作のように、視聴に体力を要するような骨太な作品に積極的に挑んでいる。

「坂口さんもおっしゃっていたのですが、“ながら見”や録画視聴が多い現代だからこそ、熱中してドラマを観てくれる人を求め、獲得していくことはとても大切なのではないかと。私自身、幼少期からテレビドラマを観て育ち、熱量たっぷりに描かれた主人公たちに勇気をもらってきました。そんな人物を描いていきたいし、今後もテレビドラマがそんな存在であるよう、熱を込めて制作していきたいと思っています」

文/衣輪晋一
◆萩原崇/はぎはら たかし(関西テレビ放送 東京コンテンツセンター制作部)
2005年に関西テレビ放送に入局。大阪本社 制作を経て2014年より、東京コンテンツセンター制作部へ。15年7月期の『HEAT』で初プロデュース。以降、『お義父さんと呼ばせて』(16年1月期)や『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』(16年7月期)、『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(17年4月期)など、人気作を手がけている。

提供元: コンフィデンス

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