演歌・歌謡番組『ごごウタ』、“現代のヒット曲”創出への挑戦
新たなヒット曲が生まれないと、どんどん先細りしていく
「私も制作に関わっていた『NHK歌謡コンサート』は、20年以上にわたり演歌・歌謡曲を紹介してきましたが、必然的に視聴者の年齢層も高くなっていました。そこで、もう少し若い世代にも馴染みのある、ジャンルを拡げた“いい歌”を届けようと、16年から『うたコン』に改編しました。ただ、そうすると演歌・歌謡曲を取り上げる時間が減ってしまう。そんな折にちょうど『ごごナマ』という情報番組が始まることになり、そのなかで演歌・歌謡番組を放送できることになりました」(鎌野瑞穂氏/以下同)
歌とトークで丁寧に魅力を伝える
「私たち自身が新曲を大切にしたい気持ちが強く、当然ながら視聴者からも『◯◯さんの新曲をお願いします』というリクエストを多くいただきます。と同時に、現代のヒット曲を作らなくては!という使命感のようなものがあります。将来のために“平成の懐メロ”を作りたいんです。新しいヒット曲が生まれないと、どんどん先細りしていくという危機感を抱いています。それと同時に、歌手の皆さんに親近感を持っていただくため、丁寧に伝えていこうと考えています」
放送人のみならず、演歌・歌謡曲に関わるすべての関係者が願う「ヒット曲を作る」という大きなテーマこそが、この番組のコンセプト。そのために、どうやって見せていくか?どうしたらヒットは生まれるか?を番組内では試行錯誤している。
「演歌歌手の魅力を伝えるには、ただ歌ってもらうだけでなく、その人の素顔も伝えようとトークも大切にしています。そこで小堺一機さんです。小堺さんは人を見る目が温かい。相手が新人さんだろうが大御所さんだろうが、その人の面白さ、隠れた魅力を引き出してくださるので、こちらは出演者の経歴や趣味、最近ハマっていることなどのデータを履歴書のようにして書いてお渡しするだけなんです。楽しいトークで出演者同士の話も弾みます」
出演者の“アイデア”も積極的に採用
北島三郎も出演した3月の放送では急きょ国会中継が入り、収録した番組を夜中に放送したこともある。それでも鎌野氏は前向きに番組を盛り立て、現代の演歌・歌謡のヒット曲を、スターを育てようと、新たな試みに次々と挑戦している。
「若手を育てる意味で、デビュー直後の新人さんにも多く登場してもらっています。演歌というジャンルから少しハミ出しながら、男性ボーカル5人組のUNIONE や、ボーカル&ダンスグループのX4にも出演してもらい、視聴者のときめきタイムも盛り上げています。年配の方には、若い子が頑張っている姿を見ると応援したくなるモチベーションがありますからね。新人さんでは、中澤卓也さんが出演してくれた折に『中澤卓也です、◯◯を歌います!』と自ら曲紹介をしてくれたんですが、それがとても良くて。以降、その形が定着しています。
少人数で作っている番組なので、良いものはすぐに取り入れることができます。歌手の方からハマっていることや面白いエピソードを提供いただいたり、時にはアドリブで盛り上がって想定外の展開になったり、歌手の皆さんと一緒に作り上げている感覚です」
文/和田靜香
鎌野瑞穂(かまの みずほ)
1997年に日本放送協会に入社。福島放送局で7年間、編成・制作を務めた後、2004年から東京へ。ディレクターとして、『NHK のど自慢』、『NHK 歌謡コンサート』、『ポップジャム』、『SONGS』など、歌番組を中心に担当。毎年『NHK紅白歌合戦』にも携わっている。
1997年に日本放送協会に入社。福島放送局で7年間、編成・制作を務めた後、2004年から東京へ。ディレクターとして、『NHK のど自慢』、『NHK 歌謡コンサート』、『ポップジャム』、『SONGS』など、歌番組を中心に担当。毎年『NHK紅白歌合戦』にも携わっている。