音楽業界も「働き方改革」へ 業界2団体が合同セミナー開催

 音楽プロダクションらが所属する日本音楽制作者連盟(FMPJ)と、音楽ライブなどのプロモーターによる団体、コンサートプロモーターズ協会(ACPC)が「働き方改革」へ向けて合同セミナーを開催した。

この改革をピンチではなくチャンスに

  • 井上泉氏/ジャパン リスク ソリューション 代表取締役社長

    井上泉氏/ジャパン リスク ソリューション 代表取締役社長

 同セミナーでは、エンタテインメント業界においても対応が求められる「働き方改革」を踏まえ、「労働時間規則」や、政府が推進する“柔軟な働き方”について説明されたほか、労使ともに今後はどのような制度及び意識改革が必要になっていくのかなどのポイントが解説された。音楽業界においても、「働き方改革」へ向けて着実に対応が進み始めている。

 この日の講師はリスク管理の専門家、ジャパン リスク ソリューション代表取締役社長 井上泉氏。また、今回のセミナーは、東芝EMI、ユニバーサルミュージックにてレーベル業務に長く携わった経験をもつキャリアコンサルタントの石井由里氏が企画・コーディネイトを務めたこともあり、音楽業界特有の事情についても、自身の経験や関係者へのヒアリングによって、より業界に即した内容となった。
  • 石井由里氏/ユリコンサルティング代表

    石井由里氏/ユリコンサルティング代表

 開会あいさつで登壇した野村達矢氏(FMPJ常務理事)は、「この業界は好きで仕事しているというのもあり、昨今の“働き方改革”については、音楽業界は別だと思いたいところだがそうはいかない。まずは問題を共有していきたい」とコメント。

 また、石井氏からは「人材が集まらない、なかなか育たない、アルバイトさえ集まりにくいとも聞いています。若い人たちがこの業界で働きたいと思ってもらえるような環境にする良い機会だと思います。この改革はピンチではなくチャンスだと私は思っています」と話し、「前向きで真摯な対応を一緒に考えていく機会にしたい」と、セミナー開催の意図を説明した。

効率性・競争性だけでなく、“社会性原理”“人間性原理”との共存へ

 ケーススタディでは具体的な事例を挙げながら、過重労働のリスクが説明されたほか、労働時間規則の基本的な枠組みなどを解説。特に、「みなし労働時間制」に含まれる、「裁量労働制」については、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種があるという点に加え、誤認識の多い、“専門業務”や“企画業務”の対象について詳しく説明された。

 最後に井上氏はセミナーを総括し、経営者に求められることとして、多様な働き方への対応、労働時間管理の重要性の再認識、女性や高齢者、外国人など多様な人材が活躍できる環境づくりを挙げ、「“効率性原理”、“競争性原理”だけではなく、“社会性原理”、“人間性原理”という「経営の四大原理」のバランスを常に考えてほしい」と呼びかけた。

 今回解説された内容に即して労働環境を即座に変革することは、当然ながら難しい。とはいえ、こうして経営陣が基本的な考え方や、国全体がどのような方向へ変わろうとしているのかを知ることはとても重要だろう。今後、少なくとも自分たちがどのような方向へと変わっていかなくてはいけないのか、その道筋を共有する、大いに有意義な場となったと言える。

提供元: コンフィデンス

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