世界で活躍するBoA、国ごとにスタイルを変えないワケとは

 2月14日に約3年半ぶりとなるオリジナルアルバム『私このままでいいのかな』を発売したBoA。デビュー17年目を迎えた現在も国内外で活躍する一方で、BoAというアーティストの打ち出し方に違いはあるのだろうか。常に新しいことにチャレンジするその原動力とはいったいどんなところにあるのか、30代を迎えアーティストとして目指す道について話を聞いた。

日本語にはバラードがよく響く言語的特徴がある

――アルバム『私このままでいいのかな』が発売されました。リード曲はアルバムタイトルと同名のバラードで、この意味深なタイトルも気になるところですが、まずはアルバム全体のコンセプトを教えていただけますか。
BoA 私は現在31歳ですが、今回のアルバムのすべての曲に通じるのは同世代女性の「選択」を歌っている点です。人生は選択の連続ですが、30代というのはある程度の経験を重ねて、どこか安定感も得た世代です。だけど“このまま安定してしまっていいの?”と自分を振り返ることもあります。ちなみに、私の周りの女性スタッフも、みんなこの「私このままでいいのかな」というフレーズが刺さってるみたいです(笑)。

――たしかに若すぎる女性だとどこか後ろ向きにも聞こえかねないフレーズも、キャリアを重ねた女性なら意味合いが変わりそうですね。
BoA そうなんです。恋愛や仕事、生活に悩んで「私このままでいいのかな」と考えることもあると思います。だけどそれは人生をポジティブに捉えているからこその悩みで、これからもたくさんの選択を経て変化もしていく、そんな自分と同じ世代にお届けしたい曲が詰まったアルバムを説明する意味でも、いいタイトルになったと思いますね。

――前作アルバムから約3年半ぶりのリリースと時間が空きましたが、じっくり制作できたのでしょうか。
BoA 実は今回、初めての試みとしてリリース日を逆算せず、いい曲ができたらレコーディングするという制作をしたんです。これまでのように締切に合わせて作ることもできたんですが、30 代になって初めてのアルバムでもありますし、曲のセレクトもレコーディングも妥協せずにクオリティを高めたいという思いがありました。

――BoAさんがお考えになる、今の自分が歌うべき“いい曲”とはどんな曲なのですか?
BoA まず私にはBoA というブランドがあって、それはジャンルに縛られるものではないんです。どんなジャンルでもBoA が表現すればBoAになる、それが私がやるべきことだと考えています。そういう意味ではまず1つ、これまで挑戦していなかったジャンルですが、自分の大好きなニュージャックスウィングのテイストを盛り込んだ「Jazzclub」という曲が完成できたことが、個人的にうれしかったですね。ニュージャックスウィングは私が生まれた80年代後半のサウンドですが、そこにトラップ系など流行りのジャンルを融合しているのも今風で面白い出来になったと思います。

――昨年末に先行MVが公開された曲ですね。個人的にはこの曲がリード曲になるのではと思ったのですが。
BoA おそらく韓国盤だったらそうなっていたと思います。韓国ではアップテンポのダンスナンバーのほうが好きという方が多い。ただ日本ではバラードのほうがウケがいいんですよ。国民性からくる好みの違いなんでしょうけど、私としては、両国でフェイバリットが違うのはありがたいです(笑)。それと歌っていて思うのは、日本語のほうがバラードがきれいに響きますね。一方で韓国語にはハネ感やパンチがあるので、リズムには乗りやすいんですよ。そういった言語的な特徴の違いも関係しているのかもしれません。

今はボーダレスな時代だからこそ国ごとにスタイルを変えても意味がない

――BoAさんは韓国・日本、そしてアジア全域からアメリカまで幅広い国で活動されていますが、BoAというブランドの打ち出し方は国によって違うのでしょうか。
BoA そこはまったく変えていません。先日もInstagram でライブをやったのですが、配信した瞬間にその映像が全世界に広がるほど、今はボーダレスな時代です。だから国ごとにスタイルを変えても意味がなく、それよりもいいパフォーマンスをお届けすることだけに集中するべきなんです。今は世界的にK-POP が人気を得ていますが、特に映像においてはクオリティをとても追求していること、そしてフルサイズのMV を世界中どこでも視聴できること、つまりはボーダレスに対応していることだと思います。今もCD という文化を大切にしている日本の姿勢はリスペクトしていますが、MV が海外で視聴できないところなど、ちょっと内向きなのかなと感じてしまうところもあります。

――昨年のBoA さんの活動では韓国のオーディション番組『PRODUCE101 シーズン2』の国民プロデューサーを務められたことも話題になりました。
BoA あの番組は日本でもご覧になってた方が多いみたいですね。日本での取材でもよく聞かれることがあるんですが。

――番組から輩出されたグループ・Wanna One は、日本でも人気を博しつつあります。
BoA 彼らが結成されたときは達成感がありました。でも、しばらくプロデュース業はいいですね(苦笑)。大変でしたし、私もアーティストなので1人ひとりが脱落していくのを見るのは切なかったです。

――アーティストとしてのキャリアが次世代の審査・発掘に生かされたところもあったと思いますが。
BoA ほかの審査員とはちょっと違って、私はパフォーマー視点で見ていたと思います。候補者のトレーナーにも、それぞれの長所を伸ばしてもらうようお願いしました。番組のスケジュール的にも短所を矯正するような時間の余裕がなかったこともあって、いかに短期間で良いパフォーマンスを仕上げて候補者を国民の皆さんにプレゼンテーションするかを考えました。それこそデビューしたら時間の余裕なんてなくなりますから、その中でどこまでパフォーマンスを高められるかということは経験からアドバイスできたことだったと思います。

――Wanna Oneには、今もアドバイスなどされているのですか?
BoA それはないですね。彼らもひとり立ちしたわけですから、自分たちで試行錯誤しながら成長していかなければいけないですし、私は自分のパフォーマンスに集中します。ただメンバーの1人が、同じジムに通っているので、テレビなどで見かけたパフォーマンスで気を抜いてるなと感じたときには、「コラ!」と連絡しちゃいます(笑)。

――たとえ他人でも気の抜いたパフォーマンスが許せないのは、BoAさんのアーティストとしての哲学があるからでしょうか。
BoA アーティストというのは同じ曲を何百回と歌います。だから、今日のパフォーマンスを初めて見るお客さんがいるかもしれないということを、つい忘れるアーティストもいます。それが私には納得がいかない。私は自分のパフォーマンスに集中していればいいのですが、たまたまWanna Oneは縁あって関わったこともあり、小言が出ちゃうんですよね。

30代を迎えたトップアーティストが見る未来

――BoA さんの経験から学びたいという後輩も多いと思いますが、プロデュースには興味はないですか?
BoA たまにそういう声もかけていただきますが、私は違うことを同時にできないタイプなので、今はまったく考えていません。それよりも30代になったばかりの今は、すべてのパワーを歌と踊りに注ぎたいです。新しいジャンルに挑戦したときの「私こんな声も出るんだ」という発見や、流行の移り変わりによる新しいサウンドとの出会い、チャレンジだなと思う曲を乗り越えたときの達成感。それは本当にキリがなくて、この仕事を続けたいと強く思う原動力になっています。

――まだまだBoAさんは高みを目指していらっしゃるんですね。
BoA もちろんです。それはいつか必ず、フィジカル的にパフォーマンスできなくなる日が来るからです。年齢のように抗えないことは納得して受け止めるべきだと私は思っていますし、そのときに20代のようなパフォーマンスをしたいとも思いません。そうなったら自分の経験を活かしたプロデュース業をするのもいいかもしれないですね。でも今は、まだまだ歌って踊りたいです。

(文:児玉澄子/写真:西岡義弘)
BoA オフィシャルサイト(外部サイト)
BoA mu-moサイト(外部サイト)

提供元: コンフィデンス

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