紅白出場のTWICE、事務所社長が語る日本進出 ブレイクの背景とは

 2PMをはじめ、『第68回紅白歌合戦』への初出場が決定し、10月発売の日本初シングル「One More Time」が初週20万枚を超え、今年大ブレイクしたTWICEらが所属するJYPエンターテインメント・ジャパン。同社の代表取締役を務める宋知恩(ソン・ジウン)氏に、TWICEをブレイクに導いたプロモーション戦略やアーティストの育成について話を聞いた。

TWICEの日本進出に向けた綿密なターゲット分析

  • JYPエンターテインメント・ジャパン の代表取締役を務める宋知恩(ソン・ジウン)氏

    JYPエンターテインメント・ジャパン の代表取締役を務める宋知恩(ソン・ジウン)氏

――今年日本進出したばかりのTWICEが、スピードブレイクを果たした背景について教えていただけますか?
ソン・ジウン 彼女たちは韓国でデビューした頃から日本ユーザーの反応がとても良かったんです。YouTubeのアクセス解析からも韓国とほぼリアルタイムで観られていることがわかりました。そういった背景もあって、日本進出が決まる以前から、日本でどのように受け入れられるかといったターゲット分析はかなり真剣に行ってきました。

――TWICEが最初に日本で話題になったのは、楽曲「TT」での“TTポーズ”が流行したことでした。
ソン 日本のモデルさんや芸能人の方々も続々と“TTポーズ”をSNSにアップしてくださいました。だけどその頃はあくまでポーズが流行っただけで、「TTポーズ=TWICE」と認識していたのはK-POPファンにとどまっていました。なので、まずはそこを繋ぐ作業に力を注ぎました。デジタルリサーチから日本では特に10〜20代の女性の反応がいいこともわかったので、ターゲットのみなさんに喜ばれそうなことをいろいろ考えました。

――SHIBUYA109のイメージモデルや巨大広告も印象的でした。
ソン 日本のファンは彼女たち9人それぞれの可愛さやファッション性に注目してくださってるので、ファッションの象徴的スポットであるSHIBUYA109さんのご協力は本当にありがたかったですね。また、10〜20代に人気の動画アプリ・MixChannelで日本デビュー前の3月と6月に開催したTWICEのカバーダンスコンテストも、日本のファンに喜んでいただくための取り組みの1つでした。もともとダンスは彼女たちの武器になると考えていましたが、日本ではダンスが小中学校の必修科目になっていたり、学園祭でカバーダンスをするのが定着していたこともあり、“魅力的かつ真似しやすいダンス”という要素は日本でブレイクできた要因として大きかったと思っています。

――「TT」のMV が韓国版と日本版とでかなり雰囲気が異なるのは、どのような狙いからなのですか?
ソン 韓国版はメンバーが童話をテーマにした衣装でファンタジックな作りですが、日本版はナチュラルな可愛さや女性のカッコよさをアピールしたものになりました。またYouTubeで韓国版MVを観ている方も多いと思ったので、日本版はガラリと違ったほうが喜んでいただけるのでは、という考えもありました。

――歌詞も日本語にローカライズしていますが、一方でサウンド面は韓国版と違いがないようですね。
ソン 10年に2PMが日本進出した際には、サウンド面をかなり大胆にローカライズしました。2PM の場合はすでに韓国でトップになっていましたから、日本と韓国の活動を差別化する意味もあったんです。一方でTWICEは韓国でも大人気ですが、まだまだ新人枠。日本と韓国で同時に成長させていきたいと考えています。また時代の変化もありますね。10年当時はSNSも今ほど普及していませんでしたが、今は皆さんが韓国の活動もリアルタイムで見ていますから、まったく違うことをやると違和感を感じると思います。彼女たちの根本的な魅力やコンセプトは日本も韓国も同じであって、大事なのはファンの皆さんに満足していただける楽曲、コンサートを作っていくことなんです。

ビジネスをする上で重要なのは信頼関係

――10年に2PM の日本進出とともに、会社を設立。同時に代表取締役に就任。当初、韓国と日本の商習慣の違いなど戸惑ったことはありましたか?
ソン 戸惑ったというより私は、エンタテインメント業界がとても細分化されているところに驚きました。例えば1つのプロジェクトをスタートするにしても、さまざまなパートナーと何度も会議を重ねていきます。また写真や音源などのチェックも何段階にもわたって細かく行うので慣れるまでは大変でしたが、それだけ弊社のアーティストを大切に扱ってくださることに感動しました。JYPとして最初に日本進出した際にソニーミュージックさんという信頼できるパートナーを得られたことで、私自身も育てていただいたと思っています。

――日本での7年間は、TWICEにどのように生かされましたか?
ソン ありがたいオファーはたくさんいただきましたが、何度も悩んだ結果、代表取締役社長 兼 CEO の小林和之さんがいらっしゃるワーナーミュージック・ジャパンさんに決めました。小林さんはもともとエピックレコードジャパンの代表取締役として2PMを手がけていただいた方。ビジネスをする上で最も重要なのは信頼関係であるというのが弊社のモットーで、弊社代表兼プロデューサー、J.Y.Parkからも「お互いが幸せになれるパートナーシップを結びなさい」と言われていたので、自信を持ってワーナーさんを推しました。

――2PMの日本進出時と比べると、日本のK-POPシーンも様変わりしました。その上で日本での展開は、どのようなことを重視されてきましたか?
ソン たしかに2PM が日本進出した11年はK-POPブームで、K-POPに関する地上波の番組や雑誌などを通じてお見せできる媒体が数多くありました。14年にGOT7が日本進出した際には、2PM の日本進出とは違い、K-POP関係プログラムが減って日本語がネイティブではない韓国アーティストが出演できるところが少なくなりました。TWICEの場合は日本人メンバーがいるので、やや事情が異なります。海外で頑張っている日本人の女の子として、さまざまな分野から応援してくださる方がたくさんいたりと。ただ、ブームなど状況がどれだけ変わっても、2PMの頃から現在も大事にしているのは、アーティストに「日本で活動できることがどれだけありがたいことか」をしっかりと理解させることです。コンサートをして帰ればいいんじゃない。外国人のあなたたちを好きになってくれた人たちをとにかく大切にしなさいと。おかげで日本の媒体のみなさんには「JYPのアーティストはちょっと違いますよね。JYPらしさがありますよね」と褒めていただけますし、一度お付き合いいただいた会社さんとは長い関係を結べています。

――「JYPらしさ」とは何ですか?
ソン 弊社で最も重視しているのは人間性です。Mnetで放送されています、JYPの次世代男性グループ選抜番組の『Stray Kids』と一昨年放送されたTWICE のメンバーを決める番組『SIXTEEN』でJ.Y. Park が話した内容ですが、アーティストとして大切なことは、真実・謙遜・誠実の3つ。真実、ウソをつかないということですね。バラエティ番組で面白くしようと話を盛る必要もありません、と。謙遜、自分が仕事ができているのは当たり前ではなく、周りのすべての人に感謝の心を持つこと。誠実、アーティストとしての努力を怠らないこと。この3 つを完璧に備えた人間はいない。だけど少しでも近づけるように努力することで、息の長い活動ができるというのが弊社代表の考え方です。こうした人間教育を練習生時代から行い、たとえ才能があっても人柄に問題がある人は採用しません。もちろん人柄も才能もあったけど、弊社が活かしきれずに他社からデビューしたアーティストもいるとは思いますが、少なくとも今いるアーティストは皆真面目に頑張る子ばかりです。

――御社の新人では、中国人で構成した男性グループ・Boy Storyもデビューしたばかりですね。
ソン こちらは弊社の中国支社とテンセントとの共同プロジェクトです。中国でのオーディションで選出し、韓国のJYPで訓練した上で、中国でデビューするという取り組みです。実現するかどうかは別として、同じ方法論を日本でもできたら、まったく新しい発想のアーティストを生み出せるかもしれない、という話も出ています。その場合もパートナーシップを結ぶことになるでしょう。

――実現すれば、ソンさんの日本での実績がさらに活かされそうです。
ソン まずは日本デビューをした2PM、GOT7、TWICEをもっと日本の皆さんに愛していただけるように努力したいです。来年は日本でしかできない、さらに大きな企画を考えているので、楽しみにしていただけるとうれしいです。

(文:児玉澄子/写真:草刈雅之)

提供元: コンフィデンス

あなたにおすすめの記事

メニューを閉じる

 を検索