【新年特集 BORDERLESS ASIA】リスクを上回る中国市場の魅力、KADOKAWA大型合作への挑戦
ほぼ全中国全土の劇場で上映。両国興行収入レベニューシェア
「本企画は、日本・中国・フランスの合作映画『始皇帝暗殺』(2000年)で製作総指揮を務めた角川歴彦会長と、チェン・カイコー監督の人間関係が起点になっています。そこで次作の約束が交わされ、ちょうど今から10年ほど前に、実現に向けて具体的に話し合いが始まりました。初期の段階では、映画ビジネスが本当に成り立つのかという疑問もありましたが、企画を熟成している間に、中国で映画を娯楽として楽しむ人の数が格段に増えました。製作過程ではいろいろな難しさはありましたが、市場として“勝負になる”という思いは徐々に強くなり、やがて確信に変わりました」(堀内氏)
「今回は製作委員会を組織し、日本と中国が共同で出資し合い、お互いに両国における興行への責任を持つ形で、全興行収入を資金配分でレベニューシェアします。役割としては、日本は夢枕獏さんの小説を原作として提供し、染谷将太さんを主演に。中国側はキャストのほか、監督、スタッフが撮影を行っています。ポスプロは中国で編集作業をし、CGや音響関係は日本で作業。なんども両国間で仕上げ作業を繰り返し、最終的な仕上げは中国という分担でした」(椿氏)
このような座組から、必須である市場規模の大きい中国でのヒットが確実なものとなるよう製作が進められた。本作の中国全土での公開は、日中合作としても日本映画としても過去に例のない規模になる。「現在、中国の総スクリーン数が約5万で、ほぼ全中国全土の劇場で『空海〜』が上映されることになります」(椿氏)
アジア市場をターゲットへ。実写日本コンテンツの強さ
「確かにリスクはありますが、それを上回る市場の魅力があります。そう感じられるようになったのは、ここ2〜3年の話ですが。17年製作の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は、高く評価されて良い条件で配給契約を結ぶことができ、18年早々に中国公開されます。それとは別で、中国国内でリメイクもされ、17年12月に公開されています。これは東野圭吾さんの原作が中国でも800万部を超える大ベストセラーになっていることが要因として挙げられます。外国で仕事をする以上、政情不安は多かれ少なかれつきまとう問題ですが、そのなかでも中国は、日本コンテンツが受け入れられる下地と市場規模の魅力があります」(堀内氏)
これまでは人気漫画や小説の実写化は、日本国内向けに製作されることがほとんどだったが、そこでのヒット規模が縮小傾向にあるいま、中国を含むアジア市場での日本IPのポテンシャルを見ると、そういった国との合作を1つの選択肢として、はじめから全世界をターゲットに製作することにより、より大きな収益を上げていくことが今後の戦略になるのではないだろうか。
(文:磯部正和)
空海−KU-KAI−美しき王妃の謎
監督:チェン・カイコー
出演:染谷将太、ホアン・シュアン/チャン・ロンロン、火野正平、松坂慶子/阿部寛 ほか
声の出演:高橋一生、吉田羊、東出昌大、イッセー尾形、寛一郎
17年12月22日 中国公開/18年2月24日 日本公開
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