アイドルとAIの異色プロジェクト“MV先行楽曲制作”、音楽制作の新たな事例へ

 ポニーキャニオンが手がけたアイドルと人工知能の異色コラボプロジェクト“AIディレクションによるMV先行型楽曲制作”。その楽曲が完成し、ミュージックビデオ(MV)とともに解禁された。

AIが導き出したコンセプトから映像と曲を人が制作

 本プロジェクトは、広告代理店(マッキャン)のテレビCM制作用の人工知能(AI-CD β)が、アイドルグループ、マジカル・パンチラインのMVコンセプトを導き出し、それをもとに楽曲より先にMV制作。その映像にあわせてまったく異なる4曲を制作するというものだ。AIによるコンセプトは『【狩猟本能】を【学園】モチーフで、【擬物化】を使い【アンニュイ】なトーンで、【ドキッとする】映像で伝えろ』だった。

初めにタイトルも音楽もないMVが制作され、その映像をもとに異なる4曲「私が私を燃やす理由」「手のひらがえし」「終わらざりしミスリル」「リインカーネーション」

初めにタイトルも音楽もないMVが制作され、その映像をもとに異なる4曲「私が私を燃やす理由」「手のひらがえし」「終わらざりしミスリル」「リインカーネーション」

 今回AIが担ったのは、MVのクリエイティブディレクションのみで、その後の映像&楽曲制作は人の手による。先入観や嗜好に縛られない、コンテンツにとっての最適解を純粋に導き出すという人間性を超越したAIディレクションから、作家それぞれの解釈のもと生まれた曲は、エッジィかつバラエティに富みながら、ダークでクールなサウンドからの共通するメッセージも感じられる点が興味深い。

 ポニーキャニオンのA&Rディレクター・島村譲氏は「今回のプロジェクトで制作した作品のタイトルを「DEUS EX MACHINA」、つまり「機械仕掛けの神」と名付けました。もちろん、AIが必ず正しいわけではありません。ただ、先入観や嗜好などに縛られず、また不安定さや迷いなどとは無縁に、コンテンツにとっての最適解を純粋に導き出すという点において、AIが人間性を超越したものであることには違いありません」とAIとのコラボ制作について語る。

新しいクリエティブのアイデアやヒントをもたらす

楽曲を制作する前にMVの撮影が行われた

楽曲を制作する前にMVの撮影が行われた

ひとつのMVに合わせて異なる4曲をレコーディング

ひとつのMVに合わせて異なる4曲をレコーディング

 さらに「AIのクリエイティブディレクションにもとづき、普段とは違う指針や制約のなかで制作を行ったことで、それぞれのクリエイターの作家性が引き出され、制作者である我々自身が想像できなかった作品が完成しました。楽曲よりも先にMVを制作するというアイデアや、1つのMVに対して複数の楽曲を制作するというアイデアも、AIを導入したことがきっかけで生まれました」とプロジェクトを振り返った。

 そして、今回の経験を経た“その次”について「今後、作詞作曲やデザインなど、より具体的な領域を手がけるAIが現れることが楽しみです。また、今回のようなAIと人間のコラボのように、AIとAIのコラボでも新しいものが生まれるのではないかと思います。それはクリエイティブにおける新しいアイデアやヒントを人間にもたらしてくれるはずです」とコメントする。

 これまでのAI作詞、作曲とは異なる、新たなAIによる音楽制作の取り組み。実証実験の1つとも言えるこのチャレンジをきっかけにして、音楽業界ならではの、この先のAIとの関わり方に想像が掻き立てられる。

AIがMVディレクションした2ndシングル「DEUS EX MACHINA」をリリースするマジカル・パンチライン

AIがMVディレクションした2ndシングル「DEUS EX MACHINA」をリリースするマジカル・パンチライン

提供元: コンフィデンス

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