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10代を動かした洋画ホラー『IT/イット』、ムーブメントの背景

スティーヴン・キングの小説を原作にするホラー映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』が予想外の興行となり、映画界を驚かせている。

2000年以降ホラー映画の最高興収になる可能性

 11月3日(金・祝)に封切られると公開3日間で興収2.8億円を超える大ヒットスタート。通常だと2週目からスクリーン数が減り、動員も下がるところだが、好調を受けてスクリーン数が増え、興収は2週目で初週対比122%。さらに3週目もその勢いは衰えることなく同105.5%(累計興収11.4億円)。

 洋画ホラーにはマニアが多いが、同層だけでなく、洋画で集客が難しいとされている高校生グループ、カップルを取り込むことに成功。最終興収は18億円あたりが見込まれ、2000年以降の邦画、洋画を含めたホラー映画の最高興収になる可能性がある。

洋画に造詣が深くない若年層が新しいエッセンスを感じた

 この背景を映画ジャーナリストの大高宏雄氏は「全米での今年最大級の大ヒット情報がネットやSNSで大量に拡散され、多くの若者たちの関心を引き出しました。今の日本の若い層は、ホラー映画はもとより洋画にそれほど造詣が深くない。全米大ヒット情報と作品内容から、これまで自分たちが見たことがないような新しいエッセンスを感じたのでしょう。本作はピエロが話の中心軸をなしており、これが恐怖感をあおるキャラクターの系譜につながっているのがおもしろい。ふだんは道化的で人を楽しませる存在のピエロが、おぞましく暴力的に登場する場面に、怖さと驚きがあったと思う。あの怖さは、トラウマになるかもしれない。一方、10代の男女による群像劇的な設定も好感度を高くし、日本の若者にも比較的親しみやすい話になっていることも見逃せない」と情報の伝わり方と作品の特徴を挙げる。
 また、映画の楽しみ方としても「若い男女のグループが多いのは、仲間うちで怖さと驚きを共有したい意識があるから。仲間とともにカラオケボックスなどで大騒ぎするようなもの。一緒になって場を盛り上げたい意識が強いのだろう」と解説する。高校生ら今の10代が求める“楽しみ”にハマる、新しい要素があるホラー映画だったようだ。

今回のケースをほかの映画に当てはめることはできない

 こうしたムーブメントは、ネットやSNSでの口コミがあり、昨年の『君の名は。』と同様に昨今の映画ヒットの大きな要因の1つになっている。しかしこれをねらって仕掛けようとしてもなかなかできるものではない。大高氏は「ネットにうごめく厖大な量の人々の関心事に火をつけることに腐心すると、逆にその匂いや戦略を察知されて、引かれていくことが多々ある。今回のケースも、状況を分析することは重要だが、すぐにそれを当てはめることはしないほうがいい」とする。

 ヒットは1つの法則だけで生まれるものではない。今回のケースは、あくまで『IT/イット』がもらした結果ととらえ、別の戦略を考えるきっかけにすることが次のヒットにつながるのだろう。

(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.Photograph : Shane Leonard

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提供元: コンフィデンス

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