森川美穂、子育て経て再び歌手活動を本格化 セルフカバーベストで新境地

圧倒的なボーカルでファンを魅了し、「学園祭の女王」とも呼ばれた歌手の森川美穂が、セルフカバーアルバム『森川美穂ベストコレクション Be Free』を11月15日に発表した。1985年にアイドル歌手としてデビューし、90年代には森高千里や久宝留理子ら女性シンガーたちと共に、ソニー・マガジンズの音楽誌『GiRLPOP』がけん引したムーブメントの先頭に立った。2000年代には劇団四季のミュージカル『アイーダ』の主役を1年以上務めて主に舞台で活躍し、今再びソロシンガーとしてパワフルに活動している。

セルフカバー制作で再発見「私にはいい曲がいっぱいあったんだな」

 森川は現在、大阪在住。シンガーとして活動しながら、大阪芸術大学演奏学科の准教授も務める多忙な日々を送る。昨年、長男が高校入学したのを機に歌手活動をよりパワーアップさせ、昨年11月には新作アルバム『Life Is Beautiful』を発表。そして今回のセルフカバーアルバムのリリースに繋げた。

「私が歌手になろうと独り立ちしたのは16歳。昨年、息子もその年齢になり、『よし、私はまた歌に気合いを入れるぞ!』と歌手活動を本格化させ、ライブも再び定期的に始めました」

 幼い頃から歌うことが大好き。早くから歌手になることを決意し、第2回ヤマハボーカルオーディション『ザ・デビュー』で1万人の中からグランプリを受賞したのが15歳。16歳で上京し、17歳でシングル「教室」でデビューした。

「『教室』は、高校生が自分から“退学します”と宣言する歌で、今さらこの年でどう歌えばいいの?って思いまして、昨年11月のライブで『「教室」を歌うのはこれが最後です!もう歌えません!』って宣言しちゃったんです。そうしたらデビュー当時からのディレクターさんに『おいおい、デビュー曲を捨てちゃダメだよ』と言われました(笑)。それで『いっそ、ファンの方にこれまでの森川美穂の総決算をしてもらったらいいんじゃないか?』という話になって、“シングル曲ベスト10を教えてください”というアンケートをとったんです。そうしてとんとん拍子でベストアルバムを作ることになり、今回アルバムに収めたのはその上位曲。アンケートの1位になったのがタイトルにした『Be Free』だったんです」
  • 『森川美穂ベストコレクション Be Free』(11月15日)のジャケット写真

    『森川美穂ベストコレクション Be Free』(11月15日)のジャケット写真

「高校退学」の歌なんてもう歌えないわよ!という宣言から、思い切り歌ってアルバムにしてしまえ!という逆転の発想で生まれた今回のセルフカバーアルバム。発端となった「教室」はもちろん、タイトル曲「Be Free」、「おんなになあれ」、「ブルーウォーター」と、80〜90年代に輝いた森川のヒット曲が並び、「わぁ!いい曲ばっかりだ!」と改めて興奮する。

「私にはいい曲がいっぱいあったんだなぁと自分でも再発見でした。どの曲も聴き手のいろいろな思い出と共にあるので、大きく変えないでおこうと決めました。楽曲ってイントロが始まった瞬間に、そのテーマみたいなものが聴こえてくるじゃないですか? 細かいアレンジは変えつつも、それは壊さないようにしました。バンマスをやっていただいたベースの河野充生さんは、日頃のライブでも一緒にやっているから、ライブでのファンの反応も見てわかっている。聴き手が期待してるところを解釈して作ったんですね。また、これをそのままライブでも出来るように、とも意識して作りました。そして私自身は、今の自分の声でシンプルに歌おうと心がけています。懸案の『教室』も何も考えずにストンとシンプルに歌ったんですよ」

この歳で歌いたいと思うメロディーや言葉に出合えて幸せ

 80〜90年代、10代で聴いていたファンも今は40、50代。聴き手も歌い手も互いにいろんな経験を積んで、思い出が蓄積され、歌それ自体も成長している。古くて新しい歌たち。アルバムの最後には、それらと一緒に何ら違和感なく新曲の「ビニールの傘」も並んでいるのも面白い。

「これは女性の中の『愛』を歌った作品で、テーマは男と女の心のすれ違いです。作詞家の松井五郎さんの書き方がとても意味深で、見方によっては、倦怠期の男女かもしれないし、もしかしたら不倫かもしれない、そんな作品で、私はこれまでそういうのを歌ったことがないんです。だって、自分で言うのもなんですけど、(私の歌声って)爽やかじゃないですか(笑)。メジャーコードの中でパーンッと歌うイメージ。でも実際は、子どもの頃からしっとりと暗めの歌が好きで。黒沢年男さんの『時には娼婦のように』なんて小さい頃に意味もわからず歌っていて、母に怒られたりしていたんです。だから、こんなに救いようのない女性の心情を歌った曲を『さぁどうぞ!』と差し出され、なんで私がこういう世界観が好きだってわかったんだろう?とびっくりしました。書いて下さったのは作詞家の松井五郎さん。作曲して下さった山川恵津子さんにご紹介いただいたんですが、この年齢になって自分が歌いたいと思うメロディーや言葉に出合えて、本当に幸せです」

 切なさに胸がキュッと締め付けられるような「大人の歌」。でも、はて、大人の歌ってなんだろう? 森川の新曲を「大人の歌」と言っていいのだろうか。

「いいと思います。大人の歌って、日常の切り取りにあると思っています。そりゃ男女の倦怠期や、不倫の歌はそうそう日常じゃないだろうけど(笑)、『ビニールの傘』と言われたら一気に日常に近づく。そういうのあるかもしれない、こういう気持ちを味わってみたい、こういう想いわかるな、そんな日常から生まれてくる切り取り、それが大人の歌にはあると思うんです」

提供元: コンフィデンス

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