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異色の朝ドラ『ひよっこ』、Pが明かす裏話「10年間ドラマの予定が4年間に」

 オリコンのエンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』が主催し、有識者と視聴者が共に支持する質の高いドラマを表彰する「コンフィデンスアワード・ドラマ賞」が17年4月期(第9回)の結果を発表。「作品賞」は、NHKの連続テレビ小説『ひよっこ』が受賞した。日本放送協会の制作統括・菓子浩氏に、岡田惠和氏が脚本を手がけた同ドラマの制作について振り返り語ってもらった。

朝ドラは、キャラクターを愛してもらうことが大事

――『ひよっこ』が「作品賞」を受賞しましたが、率直なお気持ちは?
菓子 素晴らしい賞をいただき、大変ありがたく思っております。ドラマは、キャストやスタッフ、全員で力を合わせてできるものですから、「作品賞」をいただけたことは、なにより嬉しいです。

――“朝ドラ”と通常のドラマとの違いはありますか?
菓子 月曜日から土曜日、半年間、ほぼ毎日放送されるという意味でも、朝ドラは特殊なドラマです。作り手としては、より幅広い世代の方に観てもらいたいと思っていますので、どこにターゲットを絞っていいのかという意味でも非常に難しい枠です。だからといって、「傾向と対策」的な作り方は通用しない気がしています。結局は、自分たちが面白いと思うものを頑張って作っていくしかない。『ひよっこ』では、それぞれのキャラクターが、視聴者に愛され、「明日もその顔を観たいな」と思っていただくことを目指しました。通常の連続ドラマでは、ドラマチックな展開を用意して、次のに回へと繋げますが、半年という長い期間放送される朝ドラでは、大きな事件が毎日起こると、お腹いっぱいになってしまう。事件よりもキャラクターを愛してもらうことが大事だと考えました。

――視聴率がなかなか上がらないと、言われた時期もありました。制作者としてはどのように感じていたのでしょうか?
菓子 いつの時期からか20%を切ると不調だと言われるようになりましたが、それだけ朝ドラに注目していただけることは、とても幸せなことです。今は、視聴率が日々ネットニュースになりますし、SNSでもさまざまな人たちが意見を発信する時代です。スタート当初は、数字が伸びなかったのですが、応援のお手紙をたくさんいただいていたので、内容には手応えを感じていましたし、物語が進むにつれ、ご自身の体験を交えた長文の感想などもどんどん増えていき、視聴者の方々に伝わっていることを実感しました。後半にかけて視聴率も上がっていき、最終的に多くの方々にご覧いただけて本当に良かったです。

――4年間という短い期間の出来事を、156話もオリジナルで描くことは、チャレンジだったのではないでしょうか。
菓子 近年の朝ドラは、実際の人物をモチーフにした一代記が続き、それが“当たる”とも言われていました。『ひよっこ』は、一代記でもなく、まったくのフィクション。最初は、物語が想像し難いため企画を通すのにも苦労しました。それでも、岡田惠和さんは、魅力的な世界を脚本で表現されるので、モチーフがあるよりもイチから作った方が、より物語が豊かになるだろうと。もともとは、ヒロインの人生の輝ける10年間のドラマにする予定でしたが、実際に岡田さんが脚本を書き進めていくと、登場人物に対して愛情があるゆえにエピソードがふくらんで、想定よりも物語が延びていきました。それぞれのキャラクターが魅力的なので、しっかりと人物像を描きたいということで、結果的に4年間の物語になりました。

――かなりネタ集めをされたと聞きました。
菓子 1960年代後半は、日本が戦後復興を成し遂げ、急成長した時代です。都市の姿も人々の暮らしも、どんどん変わっていきました。『ひよっこ』は、架空の人々の物語であるだけに、当時のニュースや流行をできるだけ取り入れるようにしました。多くの方々にお会いして貴重なお話を伺いましたが、そんなエピソードの数々が、ドラマの中にも使われています。その時代に本当に起こった出来事を物語とリンクさせることで、登場人物たちが実在しているかのように感じていただきたいと思っていました。

有村架純は、見る人を笑顔にさせる力があり、受けの芝居も抜群に上手い

――続編を期待される声も多いようですが。
菓子 放送終了後、「続きが観たい」という声が番組にも寄せられています。それだけ、『ひよっこ』が愛されていたんだなと、嬉しく思います。ただ、ひとつのドラマを作るには、準備にも時間がかかりますし、皆さんのスケジュールを合わせるのも大変です。すぐには難しいのではないでしょうか。

――主演に有村架純さんを起用した理由は、どういった経緯からなのでしょうか。
菓子 実在のモデルがいないオリジナルの物語の中で、ヒロインもまったくの新人の方だと、拠り所がなくなってしまう。しかも、谷田部みね子は、自分から進んでアクションを起こす女性ではありません。誰もが安心して観られる俳優さんということで、有村さんにお願いしました。有村さんのお芝居には、見る人を笑顔にさせる力があります。受けの芝居も抜群に上手い。『ひよっこ』には主人公の台詞が殆どない回もありますが、それでもみね子の存在が感じられ、他の出演者のエピソードであっても、しっかりとみね子が話の中心にいる。みね子は、有村さんだからこそ演じられたと思っています。

――今回、助演女優賞を和久井映見さんが受賞しました。『ひよっこ』では、これまでとは違った役どころの和菓子 久井さんに驚きました。
菓子 和久井さんとは、『ちりとてちん』でご一緒して、とても素敵な女優さんだと思っていました。岡田さんの書いた台詞が、和久井さんが話す言葉になって、より心に響く。岡田さんは、和久井さんのことを考えて台詞を書き、和久井さんも何を求められているのかわかって演じていたと思います。永井愛子は難しいキャラクターで、振り幅の広い役ですが、和久井さんと岡田さんの信頼関係があったからこそ、より素敵な人物像になったと思います。

――脇役の峯田和伸さんらの演技にも、注目が集まりました。
菓子 岡田さんは以前、峯田さんが主演したドラマ『奇跡の人』(NHK BSプレミアム)の脚本を手がけています。『奇跡の人』もそうですが、あてがき(役を演じる俳優をあらかじめ決めてから脚本を書くこと)だと思います。ライブで話していることを台詞にしたのではと思うくらい、小祝宗男(みね子のおじ)と峯田さんは似ています。(笑)。もともと、峯田さんに出演してもらいたいという提案は岡田さんからいただきました。宗男は、普段はおちゃらけた人間ですが、急に本質を突いたことを言う、非常に難しい役どころです。「笑っているのは、バカだからじゃねえぞ」という宗男の台詞がありますが、壮絶な戦争体験をしたからこそ、あえて笑っている。『ひよっこ』の時代は、それぞれの心にまだまだ戦争の傷跡が残っているということを、岡田さんは書きたくて、それを峯田さんに託したのではないでしょうか。愛子さんもそうですが、峯田さんと岡田さんの信頼関係だと思っています。

――朝ドラは、新人の宝庫でもあります。
菓子 つの頃からか朝ドラは新人の登竜門とも言われるようになりました。『ひよっこ』は、有村さんが主演に決まっていたので、竹内涼真さんや磯村勇斗さん、佐久間由衣さんなど、脇を固める若手の俳優さんは、すべてオーディションで決めました。

――NHKでは、朝ドラ専任のチーフプロデューサー(CP)はいないと伺いましたが。
菓子 朝ドラ専任のチーフプロデューサーというのはいないです。放送の約2年前に担当のCPが決まります。そこから企画やスタッフ集め、キャスティングなどが進んでいきます。もちろん、企画がすぐに通らないこともあります。『ひよっこ』にでは、その通らなかった企画内容も少し入っています。

――『ひよっこ』が放送終了したばかりですが、次に朝ドラで描きたいことはありますか?
菓子 私自身は、いろんなことを出し尽くした感があるので、今は、別の朝ドラを制作するということは考えられないです。156話のドラマ制作となると、作っても作ってもゴールが遠く、ずっと追いかけられている感じでした(笑)。

提供元: コンフィデンス

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