• ホーム
  • 映画
  • 『君の名は。』初動売上63.8万枚、東宝・古澤佳寛Pが語る「売れると確信していた」“映画からパッケージ”への戦略

『君の名は。』初動売上63.8万枚、東宝・古澤佳寛Pが語る「売れると確信していた」“映画からパッケージ”への戦略

歴史的な大ヒットを遂げたアニメ映画『君の名は。』DVD&BDが初回120万枚出荷され、初週で63.8万枚を売り上げた。映画だけでなく、近年市場が冷え込んでいるパッケージにおいても破格の数字を叩き出した同作の仕掛け人、東宝の古澤佳寛プロデューサーに映画からパッケージへの販売戦略を聞いた。

想定外の映画ヒットによるパッケージへの影響とは

 昨年8月26日に全国301スクリーンで公開された『君の名は。』は、オープニング3日間で動員95万9834人、興収12億7795万8800円という驚異的な数字をあげ、社会現象を巻き起こすと、最終的には動員1900万人、興収249億円を突破。邦画興行収入歴代2位となる、日本映画史上に残る大ヒットを記録した。

「この結果によってパッケージ戦略は大きく変わってきました。通常では、映画公開中はパッケージ商品の情報は出さないルールがあるんです。本来なら公開から半年ほどでビデオ化しますので、『君の名は。』は当初の予定では2月末の発売になるはずでした。ところが、フタを開けたら40週近く劇場上映が続き、なかなか情報解禁ができない。発売日が決まらないため、展開スケジュールが組めないというジレンマがありました」
 しかし、こうした時期のズレによって、プラスに働いたことも多かったという。

「通常のサイクルよりも長い準備期間ができたので、何度も映画館に足を運んでくださった多くのファンに満足してもらえるようなコンテンツを作り込む時間がありました。そのひとつが9時間の特典映像です。通常は発売までの制作時間の関係で難しいのですが、キャストのほか主題歌を担当したRADWIMPS、新海誠監督にもかなり協力していただき、メイキングやコメンタリーなど充実したコンテンツが制作できました」

 歴史的な大ヒット映画のパッケージ化。前述の通り、販売時期や商品内容に変更があったほか、当然のことながら販売数への見立ても大きく変わってきた。「公開前は興収10〜15億円という大まかな目標があったのですが、結果的には250億円という数字になりました。当然パッケージ販売数への期待値とプレッシャーは上がりました」と古澤氏は述べる。

 一方で「いまは本当にパッケージが売れない時代」と心情を吐露する。「具体的な数字を出すと、例えば実写映画で10億円を超えるヒット作でも、セルだと1万枚を下回るのは当たり前。動員に対してセルは1%以下なんてことが多い。それでも、アニメは比較的、売れる方なのですが、やはり10万枚というのが大きなハードルです」と現状を説明する。

“売れる”と確信できた根拠とは?収益最大化のための施策も

 そんななかで『君の名は。』は、初回出荷で120万枚という近年の市場では驚異的な数字を打ち出した。古澤氏は「新海作品のコンテンツ力に尽きる」としながら、新海監督の前作の例を引き合いに出す。

「『言の葉の庭』は23館の小規模公開だったのですが、初動で興収1.3億円で、動員としては約10万人。でも、封切りと同時にパッケージを発売する戦略を打ち、パッケージが4万5000本ほど売れたんです。単純計算で2人に1人が購入したということ。もともと新海監督の作品は、ストーリーもさることながら背景美術の美しさや、光の使い方がすばらしく、音楽と映像の合わせ方のテクニックも秀逸。“手もとに置きたい作品”という心理が働くのだと思います」
 こうした新海ブランドの属性もあり、『君の名は。』は冷え込んだ市場でも“売れる”と確信できた。そして、そんなポテンシャルの高い作品の売上を最大化させるための施策も、当然のことながら怠らない。本作では、販売店ごとにオリジナルグッズが制作され、パッケージに付与される販売方法がとられている。「流通さんそれぞれの負担で特典グッズを作られています。リスクを背負うことで販売に力が入るだろうし、ユーザー側もどこで購入するかという選択肢が持てる。この規模の作品だからこそ成立する手法になります」。

 また、コレクターズエディションには、4Kの最高規格「Ultra HD(UHD)」盤が入っているが、こちらの受注も20万枚に近いという。「UHDのデッキ自体がまだ10万台ほどしか普及していないと聞いていたので驚きました。いつかハードを買ったときのために、または『君の名は。』にあわせてハードも購入するという人もいるかもしれません」。その“コンテンツの力”は、ソフトによってハードをも普及させるまでのものであることを物語っている。

『君の名は。』には、1万2000円の「UHD」コレクターズエディションから、3800円のスタンダートエディションまで4つの種別がある。「当初は、50〜60万枚ほどの予想もありましたが、おかげさまで4つを合計して初回で120万枚を出荷できました。目標は150万枚。さらに、この先の新海作品のテレビ放映や新作公開などによる動きもありますから、将来的にはロングテイルで200万枚を目指したい。それだけの力のある作品です」と大きな目標を掲げる。
(文:磯部正和)
(コンフィデンス8月7日号掲載)

『君の名は。』

DVD&BD発売中
◆公式サイト(外部サイト)
(C)2016「君の名は。」製作委員会

提供元: コンフィデンス

【最新号】コンフィデンス 2017年8月14日号 詳細はコチラ バックナンバー 一覧

最新号コンフィデンス2017年8月14日号

<COVER STORY>
古川愛一郎氏(ソニー・ミュージックコミュニケーションズ代表取締役)
IPとデジタルテクノロジーを組み合わせて新たなエンタメ事業を開発していく

<SPECIAL ISSUE>
「ORICON LIVE STUDY with ACPC」Vol.2
音楽業界と来場者の「相互満足」を目指す、来場者の不満解消と“観客文化”の育成

お問い合わせ

オリコンニュース公式SNS

Facebook、Twitterからもオリコンニュースの最新情報を受け取ることができます!