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【ディズニー連載】データベース構築を現地取材 「受け継がれるDNA」と「支えるシステム」

巨匠監督&プロデューサーが語るディズニーの“強さ”とは?

リサーチの積み重ねとクリエイターの自由なパワー
『リトル・マーメイド』『アラジン』などの名作のほか、ここ最近のヒット作『モアナと伝説の海』まで、長年にわたり、数々のディズニー作品で監督、脚本を手がけてきたロン・クレメンツ監督とジョン・マスカー監督。アニメーターたちからディズニーの生き字引と呼ばれる2人が、実際に活用してきたARLについて語ってくれた。プロデューサーのオスナット・シューラー氏とともに、世界中から愛されるディズニー作品の強さの理由を明かす。

そのまま保存されている、遠い昔の熟練された手法

――新しい作品のアイデアを生み出すときにも、ディズニーの歴代の知恵が保存されているARLを使うことはあるのでしょうか?
ジョン過去を振り返って、ARLの資料にクリエイティブを啓発されたことはよくあるよ。とくに『リトル・マーメイド』では、40年代にマーメイドを研究したときの資料がずいぶん役に立った。でも、ふだんはストーリー的な部分より、過去のアートワークにインスピレーションを受けることの方が多いかな。遠い昔に描かれたイメージアートのリッチな色使いやその描き方、ドラフトを描く際の熟練された手法の深さ。いま見ても感動するものばかりなんだ。75周年を迎える『バンビ』が良い例だと思う。過ぎゆくときの流れと関係なく、いまもこれ以上ないほどの技術と美しさを保ち続けている。とにかくすごい歴史だよ。バンビの背景を描いた1人のタイラス・ウォンは今年106歳なんだけど、彼はエフェクトアニメーターなのに「こんなふうなストーリーはどうだろう?」と提案し、それが採用されて作品を作りあげる大きな力になった。ストーリーとは関係ないスタッフの熱心さが作品そのものを良くする例で、そういったこともいまのクリエイターはARLで学ぶことができるんだ。
ロン70年代はすべての資料がアニメーションビルの地下に保存されていて、モーグ(身元不明者の遺体置き場)と呼ばれていたんだ(笑)。あの頃は資料をオフィスまで持って行って、コーヒーこぼしたりしても「やっちまった」くらい。怒鳴られるなんてことはなかった(笑)。いまそのすべての資料をデジタル化している最中だけど、クリエイターにとってこれだけのアートワークに接することができるのは大変すばらしいこと。作品そのものの存在がすでにアイデアの源ではあるわけだけど、それを作ったときの詳細が過去にまで遡って見られるというのが、このうえないインスピレーションになり、学ぶための最高のツールになっているんだ。

ストーリー自体は既存でも新しいアプローチで別世界へ

――世界中で愛される作品を作り続けるディズニーの“強さ”の要因のひとつがARLなんですね。
オスナットそれと、制作者たち全員が自分の仕事を心から愛していること。クリエイターは自分たちが観たい作品とは何かを常に追及している。すばらしい作品を作ろうとするとき、それは作っている私たちが笑い、感動して泣き、メッセージをどう受取るかということなの。それが必ず観客にも伝わると信じているから。私たちは常に新しい世界を探しています。たとえば『アナと雪の女王』。ストーリー自体はそれまでにもあるものですが、それを新しいアプローチで、使われていなかった違う世界に持っていった。いままでに探求したことがない世界、あるいはそれまでとは違う探求の仕方を常に求めています。ふだん慣れきっている世界の裏側に存在する“シークレット・ワールド”ですね。
ジョン“当たり前の世界の裏側にある秘密の世界”です。
ロン1つ付け足しておきたいのは、ジョン・ラセター(※)はリサーチを非常に重要視していて、リサーチをやり過ぎることはないと信じている人なんです。リサーチを尽くして作品の基礎を作るという準備を奨励しています。
ジョンジョンは10年程前にディズニーに戻ってきて、それまでディズニーを牛耳っていたスーツを着たビジネスマンの方針ではなく、我々クリエイターが何を作りたいのかを第一にするようになった。ピクサーにはクリエイティブに関係のないビジネスマンなんて1人もいない。クリエイティブな仲間が集まって最高のアイデアを出しあって追及していく。それをディズニーにも持ってきて、クリエイターたちに自由なパワーを与えてくれた。それがいまのディズニーの強さだよ。
※ジョン・ラセター:もともとディズニーのクリエイターであり、ピクサー創設者。現ディズニーのチーフ・クリエイティブ・オフィサー

提供元: コンフィデンス

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