スピッツ、結成30周年を支える「多層化するファン」

 今年結成30周年を迎えたスピッツだが、その注目度の高さは相変わらず。30年という歴史を感じさせない勢いに溢れている。そんな彼らのファンを調べていくと、第3世代とも言える20代の若いファンは、自身の生活において「何かを達成すること」を大切に思っている人が多く、スピッツに対しても「チャレンジし続けている」姿勢に共感していることが分かってきた。

第1世代から第3世代の3層にわけられるファンの傾向

 16年2月に誕生した新しい音楽著作権管理会社NexToneは、今年4月に「NexTone Award 2017」を発表。スピッツの名曲「渚」にGold Medalを授与した。同社が管理する楽曲のなかで、「昨年最も著作権使用料の分配額が多かった」というのが授賞の理由。また朝の情報番組としておなじみの、フジテレビ系『めざましテレビ』は、2017年テーマソングに彼らの新曲「ヘビーメロウ」を選んだ。同番組の2016年テーマソングは、西野カナの「Have a nice day」と、日本有線大賞を受賞した「Dear Bride」だったことを考えると、スピッツに寄せる期待の高さが窺える。

 そんな日本を代表するバンドのスピッツだが、彼らのファンを調べていくと、意外な一面も垣間見える。ファンと思われる人がネット上に、「スピッツのファンってどんな人が多いのですか?」といった質問を上げているのだ。なぜそのような質問を投げかけるのか。理由を調べていくと、時代を追うごとに変化するスピッツファンの実態が見えてくる。

 コンフィデンスでは、昨年5月、スピッツのファンに対してアンケート調査を実施。内容は、これまで彼らがリリースした14枚(調査時点)のオリジナルアルバムのなかから、[1]10作目以前も11作目以降も購入している人[2]10作目『三日月ロック』以前のアルバムまで購入している人(それ以降の購入はなし)、[3]11枚目『スーベニア』以降のアルバムを購入している人(それ以前の購入はなし)にわけ、[1]を第1世代、[2]を第2世代、[3]を第3世代としてその特徴を調べた。まず明らかに違うのが、それぞれコアとなる年代だ。“第3世代”は男女ともに20代が多く、構成比では“第3世代”全体の34.1%を占めている。一方“第2世代”が最も多いのは40代で、男女合わせて36.5%。“第1世代”が最も多いのが30代で、男女合わせて37.3%という結果。ひと口にスピッツファンと言っても、年代から大きな違いがあるのだ。

 では、それぞれがスピッツに対してどのようなイメージを持っているのかを見るために、「あなたが思うスピッツのイメージに当てはまるワード」を回答してもらった。「さわやかな」「かざらない」「自然な」「すがすがしい」などは、どの層も同じような割合で多く、ここまではファン同士のイメージの共有はできていると言える。その一方で、例えば“第1世代”の29.4%、およそ3人に1人が「センスがよい」と回答しているのに比べ、“第2世代”や“第3世代”で同様の回答をしているのは、“第1世代”のおよそ半数しかいない。特に“第3世代”は特徴的なワードを見出しづらいのだが、唯一目立っているのが、「チャレンジングな」というワード。“第3世代”の8.5%がこのワードを選択しており、これは“第2世代”や“第1世代”にはない傾向だ。ベテランアーティストでありながら、その立場に安住することなく、常に挑戦を忘れない姿勢に、若い世代が共感している様子が窺える。

タイプ別年齢比

タイプ別年齢比

第3世代は「何かを達成する」生き方にあこがれを抱く

 さらにこの3世代を研究していくと、もう1つ特徴的な傾向があることがわかった。それはファン自身が、自分の生活のなかで「大切にしていることは何か」に対する回答。“第3世代”は、この問いに対する選択肢のなかから「人とわかり合うこと」、「何かを達成すること」を選んだ人が、日本人の平均的な割合に比べて5pt以上も多かった。同じ質問に対して、“過去ファン”は「夫婦で過ごす時間」が平均に比べ5pt以上多く、次に「オシャレをすること」(3.4pt)が続く。“第1世代”も「夫婦で過ごす時間」が9.5pt、2番目に多かったのが「知識・教養を高めること」で4.6pt多いという結果だった。

 このように見ていくと、「スピッツのファンがなぜ、他のファンの傾向を知りたがるのか」について、その理由が分かってくる。同じバンドが好きな者同士だが、20代中心の“第3世代”は、30代中心の“第1世代”や40代中心の“第2世代”とは明らかに違うのだ。特に“第3世代”は「人とわかり合うこと」を重視する傾向が強いだけに、なんとなく肌合いの違うファンの存在が気になるのではないかと想像できる。またスピッツに対して抱いているイメージも、“第3世代”が理想とする生き方、「何かを達成すること」に果敢にチャレンジする彼らに、「センスのいいバンド」以上の価値を見出しているように思う。

 ひと口に30周年といっても、そこには確実にファンの多層化が起こる。スピッツというバンドに対する考え方はそれぞれだが、ファンが何よりも望んでいるのは、いつまでも理想を追求する姿であり、スピッツはそれを実践しているバンドであることが、ファンの心を捉えて離さないのだろう。

世代別「大切にしていること」

世代別「大切にしていること」

世代別「大切にしていること」

【調査概要】
調査時期:2016年5月9日(月)〜5月16日(月)
調査対象:自社アンケート・パネル【オリコン・モニターリサーチ(外部サイト)】会員10代、20代、30代、40代、50代の男女2716名
調査地域:全国
調査方法:インターネット調査

提供元: コンフィデンス

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