仮想通貨で資金集める「ICO」、法的解釈は

法令上の「仮想通貨」の定義

企業が仮想通貨(トークン)を発行してサービスなどの開発資金を調達する「ICO」(Initial Coin Offering:新規コイン発行)が注目を集めている。2017年春ごろに伸び始め、世界中のICO案件を合わせると9月時点で総額2674億円に上る(※)。しかし調達した資金で“真面目に”サービスを開発する企業がある一方、資金調達を完了した段階で連絡が取れなくなるような“詐欺的”なケースもみられる。

(※)Coindeskの2017年9月28日時点の調査による

低コスト・短期間で資金を集める新しい方法であるICOだが、中国と韓国は全面的に禁止、米国は一部のICOを禁止し注意喚起を呼び掛けている。日本国内ではどのような法律が適用されるのか。仮想通貨やブロックチェーンを専門にする斎藤創弁護士が10月5日、AnyPayが主催する「ICOカンファレンス」でICOに適用される法律や規制について語った。

日本の法律、どう対応?

ICOでは、資金を集めたい企業などが独自の仮想通貨(トークン)を発行し、投資家にビットコインやイーサリアムなどでトークンを購入してもらうことで、資金を調達する。トークンの用途はプロジェクトによって異なるが、基本的には開発するサービス内で価値を享受できる設計にすることが多い。審査を通る必要があるが、トークンの仮想通貨取引所への上場を行えば他の仮想通貨との交換も可能になり、サービスの動向などの要因でトークンの価格が市場で上下するようになる。

IPO(新規公開株)が一定基準以上の法人しか行えないのに対し、ICOは個人レベルからでも行える。仮想通貨での売買になるため、投資側から見れば世界中のICOプロジェクトに少額からでも投資できるのが魅力とされる。

こうした背景からICOの件数は増加しているが、ICOが完了したプロジェクトがサービスローンチに至った例はほとんどなく、ICOプロジェクトのうち半数以上がα版のサービスすら公開できていない――という指摘も出ている(※)。また、資金を集め終わった段階で連絡がつかなくなる詐欺的なケースもある。

(※)ビットコインニュース「10億集めたICOが何もプロダクトをローンチできない理由」より

このような混沌としたICOに、国内の法律はどう対応しているのか。

「日本の法律ではICO自体を対象にした法律はないが、ICOの商品形態によって適用される法律が異なる」と斎藤さんは話す。

ICOを行う企業は、個人や投資家から資金を集める代わりに「トークン」と呼ばれる独自の仮想通貨を発行する。このトークンがどんな性質を持つかで、トークンが法令上の仮想通貨に当たるのか、有価証券に当たるのか、などを判断しなければならない。

○法的に「仮想通貨」なのか

トークンは、仮想通貨に当たるのか。そもそも法律上の「仮想通貨」とは何だろうか。

2017年4月1日に施行された「仮想通貨法」は、「『不特定の者』に対し使用でき、『不特定の者』と交換できる移転可能な電子的財産価値」を「1号仮想通貨」とし、「『不特定の者』との間でビットコインなどと相互交換できる移転可能な電子的財産価値」を「2号仮想通貨」と定義している。

店舗での支払いに使用できるビットコインやライトコインは1号仮想通貨、店舗で使用できない多くのアルトコインは2号仮想通貨に当たる。トークンがこれらに該当する場合は、金融庁が登録する仮想通貨交換業者以外は業として販売を行えない。

そのため、仮想通貨法に触れずにトークンを発行するには「不特定ではなく、一部の人としか交換できない」商品形態にすればいいが、「一部がどの程度の規模なのかは議論がある」(斎藤さん)

「一部の人としか交換できず、移転できないトークンだから仮想通貨ではないとは言い張れるが、それで定義上問題はないのか、そのような状況では詐欺コインが野放しになりかねないのではないか、と金融庁も悩んでいるところなのでは」(斎藤さん)

○「電子マネー」や「商品券」に該当するか

トークンを何らかの物品の購入やサービス提供に充てることができる場合、「前払式支払手段規制」に該当する。例えば1円=1コインで交換する電子マネーや、1枚=ビール瓶1本のような商品券などだ。

斎藤さんは「ICOを検討するなら、前払式支払手段規制に当たらないようにしたい」と話す。「該当すると届け出をする必要があり、未使用残高の2分の1を供託しなければいけない。2分の1を供託するのは資金調達の上で痛手になる」

○「有価証券」に当たる可能性は

「仮想通貨は、金融商品取引法上の『有価証券』に当たるのではないか」という声もある。しかし、トークンを保持することで株のような配当や収益の分配がない場合、現在の金商法の規制に当たる可能性は低いという。

これは、金商法上の有価証券の定義は限定列挙(定義に列挙したものしか該当しない)で、配当がないのであれば限定列挙に含まれず、有価証券の定義から外れるからだ。

「一方、配当などが行われるトークンについては、ファンド(集団投資スキーム)に当たり金商法規制の可能性がある」(斎藤さん)

「ただ、ファンドの定義は『他人から金銭を集め、事業に投資し、投資家に対して配当などを行う』こととある。ICOでビットコインやイーサリアムで出資を受けるなら『金銭』ではない」と、仮想通貨で出資を受けるICOは法律の文言上、ファンドには当たらないことを指摘する。

「ただし、あくまで文言上のことであり、これを脱法的に利用する例があると今後規制対象になる可能性がある」(斎藤さん)

「法律を守っているから“いいICO”というわけではない」

上記の法律以外にも、ICOの中で虚偽の説明や重要事実の故意的な不告知をすれば、消費者契約法や民法に基づき、契約の取消しや損害賠償が生じる可能性もあるという。

このように、ICOの商品形態によって仮想通貨法や前払式支払手段規制、ファンド規制などをトークン発行側は検討しなければならない。現状のICO案件については「日本で販売される“マシ”なICOはこれらの法律を守っていると思っている」(斎藤さん)

「しかし守っているから“いいICO”というわけではないので、出資する人はよく注意してほしい。少なくとも『守っていないICOは悪いICO』といえる」

提供元:ITmedia NEWS

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