これが「ホンダらしさ」です
2017年夏にフルモデルチェンジした「ホンダN-BOX」は、外観は徹底したキープコンセプトとした一方で、エンジンやプラットフォームを刷新するなど、“見えないところ”で大きな進化を遂げている。その背景にはどんな思いが込められているのか? 開発責任者の白戸清成さんに話を伺った。
“偶数の悲劇”は繰り返さない
初代N-BOXがデビューしたのは2011年。当時、ホンダの軽自動車はどん底だったが、このモデルが起死回生の一手となった。スズキとダイハツが独占する形だった軽市場に殴り込みをかけ、瞬く間にトップの座を奪い取ったのだ。「N-BOX+」「N-ONE」「N-WGN」といった派生車種を次々と発表し、「N」シリーズは日本市場におけるホンダの根幹車種になった。モデル末期でも売れ続けたN-BOXを新しくするには、自信と勇気が必要である。
――シルエットは先代モデルとあまり変わりませんね。やはり、売れていたから変えるわけにはいかなかったんですか?
形に関しては、いろいろと試行錯誤したんですよ。ワンモーションデザインのモデルとか、N-ONEっぽい顔とかもつくったんですが、どうもしっくりこない。何しろ名前がBOXですから、チームみんなが、ちょっと違うよね、と感じたんです。N-BOXらしさをきっちり定めて、そこは変えちゃダメということになりました。ただ、中身は徹底的に変えています。
――キープコンセプトで失敗した経験がホンダにはありますよね……。
「シビック」のことですか(笑)。初代とか3代目とかの奇数モデルは売れるのに、コンセプトを守った偶数モデルでは苦戦しました。“偶数の悲劇”を繰り返すわけにはいきませんから、新しい価値を出さなきゃいけません。それで「助手席スーパースライドシート」を考えたり、先進装備を充実させたりしました。中途半端に変えたのでは、すぐに古くなってしまいます。変えられるタイミングでしっかり変えることが重要なんです。
――先進安全運転システム「ホンダセンシング」を全車に標準採用したのは思い切りのいい決断でしたね。
一部のグレードでレスオプションがあるんですが、ほとんどの方がホンダセンシングの付いたモデルを選ばれます。装着率は93%ですから、必要不可欠な装備だと認識されているのでしょう。...