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日本男子バレー“二刀流”の得点源。出耒田敬が突如頭角を現した理由。

身長200cmの出来田。本来はミドルブロッカーながら、最近はオポジットでの活躍が目覚ましい。

9月12日、「ワールドグランドチャンピオンズカップ2017」男子大会が開幕する。
7月に行われた世界選手権アジア最終予選は4戦全勝で出場権を獲得。続くアジア選手権は2大会連続、9回目の優勝で幕を閉じた全日本男子バレーボールチーム。柳田将洋、石川祐希の両エースはもちろんだが、好成績を残した原動力となったのがオポジットと呼ばれるポジションを務める、出耒田敬(できた・たかし)の活躍だ。
世界選手権アジア最終予選では、当初は控えだったものの、この大会で最大の山場といえるオーストラリア戦でスターティングメンバーとしてコートに立ち、出場権の獲得に貢献。アジア選手権では全試合に先発出場し、決勝のカザフスタン戦では石川に次ぐチーム2位の11得点を挙げた。
昨年のリオデジャネイロ・オリンピック世界最終予選を見ていた人であれば気づくだろうが、出耒田の本来のポジションはミドルブロッカーである。今年6月のワールドリーグまでは、ミドルブロッカーとして試合に出場していた。そんな出耒田にポジションの変更を勧めたのは今年度から全日本のコーチに就任したフィリップ・ブランだった。

当時はオプションの1つとして、ぐらいの気持ち。

「ワールドリーグが終わって、世界選手権が始まるまでの合宿のときにブランさんから言われました。ワールドリーグの終盤から、ワンポイントブロッカーで試合に出る機会が多かったんですが、コーチから『ワンポイントではなく2枚替えで、前衛の3つのローテーションで出場したほうがいい。サイドもやらないか?』と……。『はい、わかりました』と答えて、その日の午後からサイドから攻撃する練習をスタートしました」(出耒田)
当面はセッターが前衛に回ってきた際に、ブロック力のある出耒田と交代させ、守備を固めることが目的だった。しかし当時、合宿に参加していたオポジットが大竹壱青のみだったこともあり、そのままサイドで練習を重ねるようになる。
「そんなにガッツリと練習したわけではないんですけど、そのころは、あくまでオプションの1つとして、できればいいなぁという感じでした」

清水邦広の後継者選びは深刻な課題だった。

しかし、世界選手権アジア最終予選での途中出場からチャンスをつかみ、アジア選手権ではスターティングメンバーで起用されるようになる。
全日本には長年、清水邦広というオポジットのレギュラーがいた。しかし今年度は、故障により国際大会への出場を見合わせている。V・プレミアリーグのチームは外国人選手をオポジットに据えるケースが多く、日本人オポジットを起用するチームは清水の在籍するパナソニック・パンサーズを含めた3チームだけである(2016/2017リーグ時)。
全日本におけるオポジットの人材不足はかねてから叫ばれていたが、なかなか育成が進まず、清水の後継者選びは全日本が抱える深刻な課題だった。
そんなとき、突如として現れたのが出耒田である。

最高到達点345cmの出耒田をどこで使う?

出耒田は堺ブレイザーズでもミドルブロッカー登録だが、アンダーカテゴリーの試合ではオポジットとして数々の国際舞台を経験してきた。バレーボールを始めた中学時代から、所属チームではミドルブロッカー、選抜や代表の試合ではオポジットとポジションを変えて試合に出場している。2013年に行われたユニバーシアード大会にはオポジットで出場し、銅メダルを獲得した実績もある。
堺でも入団当初、どちらのポジションに固定するかが協議の対象となった。オポジットにはすでに外国人選手がいたため、出耒田の345cmという最高到達点と、得点力は当時、堺を率いていた酒井新悟監督(現久光製薬監督)を大いに迷わせたが、チーム編成を考慮してミドルブロッカーを選択した経緯があった。
ロンドン・オリンピックの金メダリスト、ロシア代表のドミトリー・ムセルスキーのように、オポジットとミドルブロッカーを兼任する選手は海外には存在する。ただし、日本の場合、育成段階でいくつかのポジションを経験することはあっても、トップリーグに進んでからも複数のポジションを兼任する選手は稀だ。

切り替えが難しいのはオポジットから……。

「以前は1試合の中で、セットごとにポジションを変えるとしたら、それは難しいと思っていたんです。少しは練習する時間が欲しいな、と……。でも今、実際にオポジットをやってみて思うのは、ミドルブロッカーからオポジットには変えられます。でも逆は、やっぱり練習時間が必要かもしれません。
攻撃は対応できますけど、ブロックですよね。サイドブロックからミドルブロックへのポジションチェンジだと、意識しなければいけない相手の攻撃枚数が増えるので、その対応までちょっと時間かかるかなと思いますね」
ムセルスキーのように、試合中のスムーズな転換はまだ難しいと苦笑する。ただし、オポジットとして出場した世界選手権アジア最終予選とアジア選手権で、「点取り屋」と呼ばれるポジションの魅力を久しぶりに味わった。
「ああ、この感覚、懐かしいなって思いました。ここまでに関しては、急造という形だったので、プレッシャーもあまり感じませんでした。大切なのは、これからですよね。本当の意味で、このポジションが背負うプレッシャーを感じるようになるんじゃないかと思っています」

お互いの信頼関係を築くことを即急に手をつける。

オポジットはラリー中や、守備が乱れ、万全の態勢で攻撃ができない場面など、味方が苦しい局面でトスが上がるポジションである。
清水にしても、北京オリンピックに出場した山本隆弘にしても、重圧のかかる場面でトスを託され、全日本の勝敗の鍵を握ってきた。
「課題は挙げたらキリがありません。攻撃面では、まだまだセッターのトスに対して、迷いながら入っているときがあります。お互いの信頼関係を築くことは、早急に手を付けなければいけない課題ですね。ハイセットの打ち方にしても、もっと改善できると思うし、まだまだやらなければいけないことは多いです」

「プレッシャー? ナンボのもんじゃい」って。

今大会以降も、オポジット、ミドルブロッカーの二刀流に挑戦することには意欲を見せている。
「ミドルブロッカーもオポジットもできることは武器にしていきたいですね。オポジットからミドルブロッカーへ短期間で変わるのは難しいと言いましたけど、なぜ難しいかと言うと、それは自分がまだミドルブロッカーとして完成していないからだと思うんですよ。ミドルブロッカーとしての基盤ができれば、どちらのポジションも同じように違和感なくできると思う。
所属チームに戻ればミドルブロッカーで試合に出ることになると思います。そこでしっかりとミドルブロッカーとしての基盤を作りたい。そうすればもっとプレーの幅も広がるんじゃないかと思います。そして来年以降、世界選手権などの大きな大会でオポジットを任されるようになったときには『プレッシャー? ナンボのもんじゃい』って強気で言えるくらい成長していたいですね」
グランドチャンピオンズカップ2017で対戦する5カ国は世界ランキングで日本より上位のチームばかり。強豪国を相手に、どんな戦いを見せるのか。新生全日本男子の新しいオポジットに注目してほしい。

提供元:Number Web

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