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イチローも仰ぎ見るMLBの偉人。「王さんに通じるもの」とは何か。

イチローが、またひとつ偉大なプレーを歴史に刻んだ瞬間。カルーが引退した40歳を越えても、なお進化・成長し続ける男の背中である。

メジャー通算3054安打。
歴代24位となったこの記録は、イチローがパナマ出身のロッド・カルーを抜き、米国以外の出身選手ではメジャーのトップに立った数字として、注目を集めた。
だが、イチローは一蹴した。
「そこは重要なことではないですね」
そして、続けた。
「人から聞かされていなかったら、僕から探す、気にする、追い求めるものではない。でも、それがロッド・カルーであったと言うのは聞いていたので、それが特別と言うことですね」
カルー氏はイチローにとって特別――これまで、表立ってふたりの接点、両者の思いを知る者はいなかった。今回のカルー越えで、イチローは初めて自身の思いを口にした。
「誰の記録かと言うことが重要。ロッド・カルーは王さんに通じるものが僕の中にはある。そう言う意味で特別な記録、関わりですね」

イチローが尊敬する王貞治、そしてカルー。

日本で868本塁打を放った王貞治氏(ソフトバンク球団会長)はイチローが最も尊敬する野球人だ。その恩師を引き合いにだし、語り出したカルー氏への思い。
それは、イチロー自身が大切にしたい、野球人としての姿勢、生き方、立ち振る舞いであると感じる。
カルー氏は1967年に21歳の若さでツインズからデビューし、19年間の現役生活でオールスター出場は実に18回。新人王、MVP、首位打者にも7回輝き、今もその偉大なる経歴を称え、ア・リーグの首位打者は『ロッド・カルー賞』の名が付く。引退は40歳。エンゼルスを自由契約となった翌年の'86年のことだった。

酷似していた、カルーとイチローの打撃理論。

カルー氏とイチロー。現役選手としてふたりの接点はなかったが、右投げ左打ち、1メートル80センチで細身の体格、米国外出身者で打撃スタイルも似ていることから、'01年のイチローデビュー以降、ふたりは何度となく米国内で比較されてきた。
最も有名な話は、イチローが大切にする「バットのグリップエンドが左耳の前に残る」と説明する技術と、カルー氏の「腕を出来るだけ頭の後ろに残せ」の打撃技術論が時代を越えて酷似していることである。
そのふたりが対面し、言葉を交わし合ったのは、カルー氏の現役引退から20年以上が経ったイチローのマリナーズ在籍時だった。イチローはその時に受けた感銘を忘れることが出来ないと言う。
「実際にお会いした時に、なんかこう……溢れる空気が……すごい僕のことを気にかけてくれているのが伝わってきた」
異国に渡り、異文化の中で戦う苦労とストレスは、経験した者にしかわからない。
カルー氏はイチローが米国で奮闘する姿と自身の若い頃を重ね合わせた。

カルーからイチローへ渡された一通の手紙。

昨年の3000安打達成時には「この手紙をイチローに渡して欲しいんだ」と共通の知人に依頼し、思いを手紙にしたためた。もちろん、イチローには嬉しい手紙となった。
「(引退してから)時間が経つと、野球のことをすごく簡単に出来ると思う人が多いじゃないですか。でも、あれだけの成績を残した人が、あの雰囲気でいられる。選手として、凄い人はいっぱいいますけれど、時間が経ってからもこの人凄いなって思える人はなかなかいない。その意味でもロッド・カルーは僕の中で、アメリカで会った人の中では強烈な印象を抱いた人ですね」

共通する「プレーヤーへのリスペクトの精神」。

日米を問わず、引退から数年間は選手の立場を理解し、尊敬の念を忘れずに距離感を保つことができるOBは多い。
だが、いつの日か、自分の努力だけはしっかりと覚えているものの、選手として重ねてきた苦労、野球の難しさを忘れがちになる。
イチローが重ね合わせた王氏とカルー氏の共通点は、永遠に続く「プレーヤーへのリスペクトの精神」であろう。イチロー自身も野球人として肝に命じる基本姿勢である。
数々の金字塔を打ち立てたイチローが「特別」と称したロッド・カルー超えの3054安打は、忘れることの出来ない節目となった。

提供元:Number Web

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